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オルガド一家

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「お父様でいらっしゃる辺境伯様はフィリップ・ジェラール・ド・オルガド様。妻一筋で愛妻家として非常に有名で、領主としても評判の非常に良い、娘バカでございます」
「え?」
 バカというサロメの言葉に驚いて聞き返すように言葉が出たが、サロメは見事にスルー。
 何も言っていないかのように、座っている栗の皮のように少し赤みの入ったブラウンの髪の毛と、タンザナイトのような深い青色の瞳をした女性を指さす。
「こちらの大変美しく聡明でいらっしゃる方がお母様で、マルグリット・ルイーズ・ド・オルガド様です。その昔、マルグリット様が微笑めば、薔薇すらも恥じらい、周辺5メートル以内の男性は皆、即落ちだったという伝説をお持ちの方です。当然ですが、お嬢様はこのお二人をお父様、お母様とお呼びでした」
「まぁ、そうでしょうね。っていうか、お母様の説明だけやけに持ち上げてませんか?」
「まさか、私は事実しか申しません」
 サロメはきっとマルグリットさんが好きなんだろうなぁと勝手に思いながら、ふとサロメの言葉に気がついた。
「こちらもメートル法なんですね、それに薔薇もある」
「メートル法という法律はありませんよ?」
「あぁ、えっと、数の数え方というか長さはメートルって言うんだなと思いまして」
「そうですね、そのように数えます。重さはキログラムです」
 あちらのものとあまり変わらないというのは助かるが、異世界ってそんなにあちらに準じるものなのだろうか? と少々疑問に思いながら、目の前の絵姿を見ていると、腰掛けた両親の真ん中に座る少女つまり、エマニュエルさんについて気になった。
「そういえば、家族とは似ても似つかない色合いなのは、この子がアルビノだからですか?」
「『あるびの』ですか? 『あるびの』とやらはよくわかりませんが、先祖返りと魔力の問題ではないかとは言われています。お嬢様が幼い頃は奥様の不貞を噂し面白がるクソ野郎共がいました」
 ……クソ野郎。
 サロメは時々すっごい口が悪くなるな。まぁムカついてるってわかりやすくていいか。
「不貞かぁ、まぁ、こんなに似てなかったらそう思っちゃう人もいてもおかしくないかな」
「ハッ! バカバカしい。奥様に相手にされなかった連中の僻みとしか思えませんね」
 サロメ、本当にマルグリットさんが大好きなんだなぁ。
「それに、あのバカ夫婦っぷりを知ってらっしゃる方は一切疑ったりされませんでした」
 あ、またバカって言った。
「まぁ、そういうクソ野郎共は旦那様が綺麗さっぱり粛清され、今ではそのようなことを言う者は存在しておりません」
「……あぁ、はい」
 なんというか、凄いとしかいいようのない家族(サロメも含む)なんだなと納得し、顔合わせが少々不安だと思いながらも、気になる単語が出てきたのでサロメに聞く。
「あの、さっき、先祖返りと魔力って言いましたけど、それって魔法が使えるってことですか?」
「はい、魔法はご存知ですか?」
「ご存知ではありますが、当然使ったことは無いですよ、そういうものがない世界だったんで」
「無い。全くですか?」
「えぇ、全く」
「さようですか。ふむ、それは早急に確かめねばなりませんね」
「何をです?」
「魔力やその他の能力が一体どちらに引っ張られているのかということです。肉体に準じているのか、精神に準じているのか。それによって色々代わってきますでしょう? お嬢様に関する記憶や習慣的な癖もないという今の時点では肉体は精神に準じているように思われますが、何が肉体に準じ、何が精神に準じているか、ちゃんと区別をして出来ること出来ないことを見極めなければなりません」
「なるほど、言われてみればそうですね。お願いします」
「それでは、あとはこの世界についてですね」
 サロメは巻かれた紙をテーブルに広げた。そこには、向こうでは見たことのない、すっごい大雑把な地図らしきものがあった。
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