上 下
27 / 177
【第1部】 第四章 

友だちになってよ (6)

しおりを挟む
 大きなこうもりのようなパラソルがついたテーブルセットが並ぶテラスは、たくさんのお客でにぎわっている。
「あたし、ジャコウネコのコーヒーにするけど、あんたは?」
「トリカブトのパイに、ダチュラのタルト。それにニガヨモギのムース。これおいしいのかな?」
 メニュー表を開きながら、むむむ、と首をかしげているラナを、スピネルが静止する。
「バカ、それはゾンビたちが好きな猛毒を使ったスイーツよ。あんたが食べたら一瞬で死ぬわ」
「そ、そうなの? じゃあ、こっちのメリッサとセージのカクテルは?」
「そっちはハーブを煮つめた魔女の栄養ドリンク。鬼苦いわよ」
 そんな……スイーツ食べるの楽しみにしてたのに。キケンなものばかりだなんて。
 スピネルがパラパラとメニュー表をめくった。
「心配しないで。あんたが食べられるものもあるから。ぶどうのタルトに、いちじくのパウンドケーキ、ザクロのシャーベットにはちみつとミルクのプリン。いろいろあるでしょ」
 絶望にうちひしがれていたラナの目にパッと光が宿った。
「ホントだ! どれにしよう?」
 みんなおいしそうだけど、この店でいちばんのおススメってあるのかな?
 すみからすみまでメニュー表をながめていると、
「見て見て。『デビルズ&エンゼルスモンスターパフェ』だって。これ、どんなのかな?」
 悪魔と天使とバケモノのパフェなんて、いったいどんな味?
「それなら、私たちが説明しちゃいまーす♪」
 ポニーテールのウエイトレスが満面の笑みを浮かべてあらわれた。
「まず、デビルズとはチョコたっぷりのスイーツのこと!」
「そして、エンゼルスはマシュマロや、卵白で作ったふわふわのケーキをさすんだよ♪」
 ポニーテールのウエイトレスの後ろからツインテールのウエイトレスが顔を出した。
「それらをみーんなひとつのグラスにぎーっちり詰めこんだこのパフェは、まさにカロリーのモンスターなんス!」
 二人に続いてもうひとり、サイドテールの女の子がえっへん! とドヤ顔。
 三人はそれぞれ丸・三角・四角のメガネをかけており、頭には妙に大きなフリルのヘッドドレス。手足はモフモフとした毛におおわれていて、髪型こそ異なるが、その顔はみな同じに見える。
「あなたたち、ひょっとしてケル・ベロ・スー?」
 どうしてこんなところにいるの?
 三人のウエイトレスはビクッと飛び上がったが、
「ち、ちがいますちがいます! 私たちただのウエイトレスです。ウエ・イト・レス!」
「あ……あたしたち、どこにでもいる顔してるから。ねぇ?」
「パフェ、できあがりまで時間がかかるんで、気長に待っててほしいっス。そんじゃ!」
 ニヤニヤニヤーっとあいそ笑いを浮かべ、猛ダッシュでカフェの奥に引っこんだ。
しおりを挟む

処理中です...