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第一章★
017:地下施設と学校間代表「ホトケ」①
しおりを挟む――戦闘終了後
■大凶高校_廊下
(大和 真)
俺達三人は廊下を歩いていた。
一人はナル。
もう一人は同じクラスである藤吉だ。
俺のクラスの学級委員をやっている。野球部を彷彿させる坊主頭だが彼はサッカー部である。サッカー部なのに坊主でボクシンググローブを着けている。
そんな三人は体育館を後にしてからだいぶ大凶高校の暗い廊下を歩きまわっていた。
あちらこちらに武器が落ちていて沢山の生徒が死んでいっているのが分かる。死んだら武器だけを残し、消えていく。
この廊下にはきっと何分か前までは死にかけた生徒達がいたんだろう。少し前まで普通の生活をしていたのに何故こんなことになってしまったんだろう。
「ねぇ、真君。なんか顔色が悪くない?」
「確かに。大丈夫かよ?」
二人が心配してくる。俺はただただ気分が悪い。藤吉が俺に肩を貸してくれる。本格的にやばい。
しかし…
俺達は校内をさっきから歩き回っているが一向に学校代表はおろか敵にも出くわさない。あんなに敵味方合わせて人がいたのにどういうことだろう…。
この戦いもかなり終盤なのだろうか。
相当な犠牲者が出ているのか?
「ちょっと休もうか。立心館の応援を待とう」
ふと、ナルが提案する。
近くの適当な部屋に入る。
電気のスイッチを探し、明かりをつける。
「応接間?なのか?」
応接間みたいな場所だ。
ソファーやテーブル、絨毯などからしてそう思われる。
隣の部屋と繋がっているようで、だとするとここはやはり応接間なのだろう。
きっと隣の部屋は校長室で、ここは来客の為に使っている部屋のようだ。
仏像が何体か飾ってあるがこれは校長の趣味なのだろうか。知らないが、大凶高校って仏教系の学校なのか?
二人は俺をソファーに座らせ、部屋を歩き回る。
よく部屋を見回すと少し不思議な点がある。部屋の窓ガラスは全て黒い布で覆われてている。まるで外部から見られないようにしているみたいだ。
まあ、普通に鍵が開いてたから気のせいだろうけど
「おっ、隣の部屋の鍵も空いてるじゃん」
藤吉がためらいなく隣の部屋の扉を開ける。
「校長室覗いちゃお……――」
藤吉が固まる。
「どうしたの?」
ナルが藤吉の近くにより、同じく絶句している。校長先生でもいたのだろうか。
俺も立ち上がり、二人の後ろから覗きこみ唖然とする。隣の部屋はなく、目の前には地下へと続くコンクリートの階段があった。
奥の方は真っ暗で何も見えない。
――ヒュオオオオオ
中からは冷たい風が吹いてきていて俺の前髪を靡かせた。
「行ってみよっか」
もはやただの好奇心であった。
うす暗い階段を俺達三人は恐る恐る降りる。
MSPにあるライト機能が役に立っていた。辺りを明るく照らして確認する。
「ここ、どこに続いてんだろーな?」
「分からないけどかなり深いな」
俺は藤吉のぼやきに答える。てか、ただの学校のはずなのになんでこんなのがあるんだろうか。
いつの間にか天井は岩が剥き出しになっていて水が垂れて音が地下に響き渡る。
いよいよ洞穴みたいになってきている。
「不気味だね」
「そもそも、俺らは学校間大戦中なのになんで学校探検みたくなってんだ?失ったアークの秘宝でも探すみたいだぜ」
藤吉がぶつぶつ呟いていた。
確かにそうだが、なんかこの地下には何かがある気がする。
階段は終わり、先には扉があった。
ペンキが剥がれていてかなり錆び付いている。風化が酷い。
「僕が開けるよ。二人は念のため、武器を構えてて」
ナルは扉の取っ手を掴む。
俺は草薙刀を強く握り、藤吉はボクシンググローブを装着した。
「行くよ!」
「「――! 」
扉の向こう側は大きな空間が広がっていた。
「まじかよ。こんなのが普通の学校にあるってあり得るのか?」
藤吉がぼやく。
俺達は恐る恐る中に入り、辺りを見回した。上は人口的に作られた天井が遠くまで広がっている。
「すっごい広いな」
「前方になんかない? 」
前方には何やら大きな建物が建っている。
なんとなくだが、俺の直観。ここは敵校の本部のような場所ではないだろうか。地下施設はかなりの広さで体育館数倍の広さはありそうだ。天井も高くとてもここが地下とは思えない。
ちなみに地面は土でかなり凸凹している。少しぬかるんでいて歩きずらい。
前方には建設中だがマンション?のような建物が一つ建っている。灰色のメッシュシートで覆われていて正確には分からないが6階建てくらいかな?
「これって…」
「たぶん大凶高校の本部だ」
「建設途中なのか?」
そういえば、マニュアルにも資金を得ることで学校をカスタマイズすることが、できると書かれていた。
資金のことはわからないが、大凶高校には初期費用がいくらかあってそれで作り始めているとかそんな所だろうか。
「ひとまずあの建設途中の建物に行ってみる?敵の親玉がいるかも知れないし 」
ナルが提案し、俺らは建物に向かって歩き始める。しばらく歩くと徐々に建物の周りもはっきりと見えてくる。
「……誰かいる 」
ナルが建物の入り口と思われる場所付近を指さして呟く。俺と藤吉も気づく。
――ザッ
足音がする。
そしてゆっくり近づいてくる。
「こんにちは。立心館高校の生徒達」
2人いた。1人は長髪でもう1人はおかっぱ頭をしている。
「よくぞここに辿り着いたな。私はがこの学校の代表だ。」
「俺は大凶高校、最後の幹部だ」
俺達三人のMSPが振動する。
通知が流れる。
━━━━━━━━━━━━━━━
アラーム※
――――――――――
対戦高校の代表が接近しています★
詳細は(こちら)
━━━━━━━━━━━━━━━
俺は詳細ボタンをタップする。
すると相手の詳細が分かった。
━━━━━━━━━━━━━━━
詳細※
――――――――――
・ホトケ(学校代表) Lv142
・ニシノ(幹部) Lv111
━━━━━━━━━━━━━━━
ついに敵校の学校代表にたどり着いた。目の前のホトケという人物からはこれまでとは明らかに違う異質の雰囲気を感じる。
本当につい前まで同じ高校生だったはずなのに…。このナイトメアの世界が少しづつ俺達を含むすべての高校生を変えてきているのかもしれない。
「あなた方は偶然にも大凶高校の本部に訪れてくれた」
ホトケが貼り付いたような笑顔を向けてくる。
「少し予想外ではあったけど、お前らをここで殺し、予定通り次にお前の学校の代表を殺しに向かうとするか」
もしかしてもう俺達以外は立心館高校も大凶高校の生徒もほぼ倒されてしまったのか?戦況が分からない。
「戦況が気になっているのかな?」
ホトケが俺の表情を見ながら聞いてくる。
「教えてやろう。今の戦局はこのようになっている」
ホトケのMSPから通知が流れる。
━━━━━━━━━━━━━━━
戦況報告※
――――――――――
大凶高校《生存者101名》
/立心館高校《生存者155名》
うち大凶高校幹部《生存者3名》
/立心館高校幹部《生存者4名》
━━━━━━━━━━━━━━━
「私の方の主力はニシノを残し、それ以外の高ランク生徒は全滅。一般学生も4割くらいに減ってしまった。立心館高校は乗り込んできた主力は全員重症。残すはそちらの学校代表のみ」
「そうだ。良いことを思いついた!」
ホトケが嬉しそうに俺達に提案をしてくる。
「お前らの命の保証しよう。大凶高校の生徒になってもらう。その代わりそちらの学校代表を倒すのを協力してもらいたい」
ホトケはにっこり笑う。
「このまま戦えばお前ら低Lvは間違いなく私に殺される。この先のことを考えるならこの提案は悪くないと思うぞ」
俺達に沈黙が走る。
というか、何故こいつは俺達に提案しているのだろう。
俺は生徒会のメンバーでもなんでもない。戦力にもならないだろう。
おちょくっているんだ。
「よく考えてみろ。お前達が仮に勝とうと負けようと、どのみち勝った学校に吸収される。リーダーが私に変わるだけだ。そうなるとここでの死ぬのは無駄死ににはならないかな?」
要するにだ。生徒会長を差し出せば俺達の命は保証されるみたいだ。
悪い提案じゃない。
だが、
「会長を売るつもりはないよ。それに俺達にそれをいったところでそう上手くことが運ぶようには思えない」
俺は断言する。
「……なら残念。予定どおり殺す」
今まで黙っていて動かなかったニシノが腕を上げる。ニシノが指をクイッと曲げた。
「「「――!? 」」」
俺達三人の体は後方に吹き飛ばされる。
「ぐっ」
地面に落ちる際、ぎりぎり受け身を取ることができた。ただ少し擦りむいたが大けがはなさそう。
ナルも藤吉も問題なさそうだ。
「まずはオレが相手をしようじゃないか」
そう言い、ニシノは明らかな戦意を剥き出しにする。
俺達三人は武器を構えた。
勝てるのだろうか。
Lvが倍以上違う。
3対1とはいえ、ほぼ勝てる見込みがないと思ってしまう。
だが、なんとしても生き残りたい。
俺の腕は震えていた。
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