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第一章★

008:開戦間際の覚悟と準備。

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――数分後
■立心館(廊下)


時間は刻々と経っていく。
開戦までもう時間がない。

日が落ち、夜の帳が落ち、窓の外が夜の静けさを出すようになる。
夜とは不思議なもので失った緊張感や恐怖、不安がまた俺の脳内を侵略して行った。

23時になると共に全校放送が大音量で流れた。
各、隊がそれぞれの場所に集合するための誘導アナウンスだ。

俺達三人は放送に従い、それぞれの待機場所に向かっている。

俺は昇降口を通り過ぎ、校庭に向かっていた。

校庭に着くと既に生徒は沢山いた。
校庭は暗くて見えにくいが月明かりでギリギリ見える。
きっと学年もクラスも当然バラバラなのだろう。

壇上を見ると暗い校庭の前方に人影が見えた。
少しの間はその人物は動かないが時間が迫るとマイクを手に持つ。

『どうも。草壁です』

草壁さんの第一印象は爽やかな優等生といったイメージだ。細身でスラッとしている。髪型は短髪でツーブロックだ。目が人柄の良さを表現するかのように真っ直ぐな良い目をしている。

草壁はマイクを持ち喋り始める。

『ここに集まっていただきありがとうございます。ここは攻撃組A班になります。あと少しでクチナワが私達に命令した戦争とやらの開始時間です』

静かな校庭に緊張が出てきた気がした。

『皆さん、まず、始めに伝えたいことがあります』

辺りがざわつく。
動揺に似た雰囲気を感じる。

『生徒会には色々な情報が集まっています。実際に死人が出てるんです。そして』

――ザワ…ザワ

『戦争もきっと本当です』

恭二に草壁さん、会長。何人もが戦争を確信している。
俺も今じゃ疑惑だったのがどこか確信に変わりつつある。
身体が小刻みに震える。

草壁さんはまだ話を続けていた。

『皆さん。戦争がなかったなら杞憂で終わります。ですので今だけは私についてきてください』

『……最後に、対戦校は大凶高校ですが、あなた達も相手の学校代表のみを狙ってください。学校代表を倒すことがそのまま勝利になります』

暗い校庭に静けさがこだまする。時間は既に刻々と迫っている。

いよいよ……か。



――同時刻
■中庭(芹澤恭二)


芹澤 恭二は一人、中庭にいた。
ここが集合場所であるからだ。

近くには池や花壇などがある。現実世界にいた時はここは生徒達ののんびりする場所として使われていた。ベンチで昼寝だったり読書だったり。

中庭に集まっている生徒は少ない。20人ちょっとぐらいだ。来る道中殆どの人が校庭に向かっているのを見ていた芹澤は何となく悟っていた。

周りいるのは知らない生徒ばかりだ。恐らく学年が皆バラバラだ。
いや、一人クラスメイトの女の子がいるといえばいる。

――ゴトン

不意にマイクが入る。いつの間にか壇上に一人の男が仁王立ちしている。

『あー、俺は攻撃組B班の隊長に任命された上杉だ。よろしくな』

上杉は長身で細身。短髪でワックスで髪は逆立ってる。彫りが深く整った顔。
男の俺でもかっこいいと思った。そして荒々しい目つき。強そうだ。

『俺らB班だが、目的は敵本部への奇襲のために構成されている』

誰かが上杉に手をあげ、質問をした。

『何だ? そこの一年生』

「奇襲ってどうやってやるんですか?」

上杉はふと笑むと、自分の右手を見せた。指が青白く発光し、銀色の指輪が中指に現れた。

『俺の指に着けている指輪の能力を使う。以上だ 』

正直、それだけじゃ全く分からない。だが一年生は頷き黙る。
威圧感が半端なく聞ける雰囲気じゃない。まあ後で分かるだろうし。

『ついでに言うならここはレベルが高く確か平均でもレベル70以上だったはずだ。つまりだ。敵のリーダーまで近づける可能性のある奴しかいねぇ。今回の大戦のメイン戦力がここに集まっている』

皆が生唾を飲み込む音が聞こえた。
それから後、上杉は大凶高校の場所と道のり、地理などを説明する。

皆は素直に頷いている。

開戦まで間近。

中庭には何とも言えない沈黙が流れていた。


――同時刻
■体育館(三島沙也加)

ここは体育館。防衛組と数少ない回復組がいる。
また支給品でハズレを引いた生徒達が集まっていた。

――ガヤガヤ

生徒達には落ち着きがなく、ソワソワとしている雰囲気があった。

三島は防衛組だったため集合場所は体育館。

体育館のステージの部分には戦況を見るためか大きなモニターが設置されている。
生徒会の一人の支給品だとか。

回復班の人数は5人前後。
全員女子生徒。

希少(まれ)な能力のようだ。

――ゴトン

壇上に登り、マイクを手に取る生徒会長。霜月 零だ。
生徒会長は本当に綺麗な容姿をしている。

長く綺麗な黒髪、透き通るように白い肌。
綺麗なだけでなくどこか、雰囲気が安心をもたらしてくれる。

三島も例外なく憧れていた。

『ここに集まっているのは守備組と回復組の生徒です。では、ここの役割について説明します』

会長は一呼吸置き、ゆっくりと丁寧に喋り出す。

『回復組は体育館に待機し、帰還してくる負傷者の手当てをします。あと、ここは戦況を見守る場所でもあります。防衛組はそれぞれに配置があるけど主に校門と裏門よ』

三島はいつもぼんやりと聞く。

何故かこの時日本史の授業を思い出していた。
戦国時代みたいな、第二次世界大戦みたいな、戦いが現実に迫っているのだ。

これから理由も分からずに、戦わされるのかもしれないのだ。
ただ戦うしかない。戦っていればいつか理由が分かるかも知れないが、そもそも三島は戦いたくなかった。

それに戦争ということは当然、殺し合うということだ。三島は想像すらできてなかった。

会長は説明が終わると壇上から降りる。

三島は校門に向かう同じ防衛組の人達に混ざりながら移動する。
右手から伝わる拳銃の冷たい感触をただ感じていた。

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