11 / 85
第一章★
008:開戦間際の覚悟と準備。
しおりを挟む――数分後
■立心館(廊下)
時間は刻々と経っていく。
開戦までもう時間がない。
日が落ち、夜の帳が落ち、窓の外が夜の静けさを出すようになる。
夜とは不思議なもので失った緊張感や恐怖、不安がまた俺の脳内を侵略して行った。
23時になると共に全校放送が大音量で流れた。
各、隊がそれぞれの場所に集合するための誘導アナウンスだ。
俺達三人は放送に従い、それぞれの待機場所に向かっている。
俺は昇降口を通り過ぎ、校庭に向かっていた。
校庭に着くと既に生徒は沢山いた。
校庭は暗くて見えにくいが月明かりでギリギリ見える。
きっと学年もクラスも当然バラバラなのだろう。
壇上を見ると暗い校庭の前方に人影が見えた。
少しの間はその人物は動かないが時間が迫るとマイクを手に持つ。
『どうも。草壁です』
草壁さんの第一印象は爽やかな優等生といったイメージだ。細身でスラッとしている。髪型は短髪でツーブロックだ。目が人柄の良さを表現するかのように真っ直ぐな良い目をしている。
草壁はマイクを持ち喋り始める。
『ここに集まっていただきありがとうございます。ここは攻撃組A班になります。あと少しでクチナワが私達に命令した戦争とやらの開始時間です』
静かな校庭に緊張が出てきた気がした。
『皆さん、まず、始めに伝えたいことがあります』
辺りがざわつく。
動揺に似た雰囲気を感じる。
『生徒会には色々な情報が集まっています。実際に死人が出てるんです。そして』
――ザワ…ザワ
『戦争もきっと本当です』
恭二に草壁さん、会長。何人もが戦争を確信している。
俺も今じゃ疑惑だったのがどこか確信に変わりつつある。
身体が小刻みに震える。
草壁さんはまだ話を続けていた。
『皆さん。戦争がなかったなら杞憂で終わります。ですので今だけは私についてきてください』
『……最後に、対戦校は大凶高校ですが、あなた達も相手の学校代表のみを狙ってください。学校代表を倒すことがそのまま勝利になります』
暗い校庭に静けさがこだまする。時間は既に刻々と迫っている。
いよいよ……か。
――同時刻
■中庭(芹澤恭二)
芹澤 恭二は一人、中庭にいた。
ここが集合場所であるからだ。
近くには池や花壇などがある。現実世界にいた時はここは生徒達ののんびりする場所として使われていた。ベンチで昼寝だったり読書だったり。
中庭に集まっている生徒は少ない。20人ちょっとぐらいだ。来る道中殆どの人が校庭に向かっているのを見ていた芹澤は何となく悟っていた。
周りいるのは知らない生徒ばかりだ。恐らく学年が皆バラバラだ。
いや、一人クラスメイトの女の子がいるといえばいる。
――ゴトン
不意にマイクが入る。いつの間にか壇上に一人の男が仁王立ちしている。
『あー、俺は攻撃組B班の隊長に任命された上杉だ。よろしくな』
上杉は長身で細身。短髪でワックスで髪は逆立ってる。彫りが深く整った顔。
男の俺でもかっこいいと思った。そして荒々しい目つき。強そうだ。
『俺らB班だが、目的は敵本部への奇襲のために構成されている』
誰かが上杉に手をあげ、質問をした。
『何だ? そこの一年生』
「奇襲ってどうやってやるんですか?」
上杉はふと笑むと、自分の右手を見せた。指が青白く発光し、銀色の指輪が中指に現れた。
『俺の指に着けている指輪の能力を使う。以上だ 』
正直、それだけじゃ全く分からない。だが一年生は頷き黙る。
威圧感が半端なく聞ける雰囲気じゃない。まあ後で分かるだろうし。
『ついでに言うならここはレベルが高く確か平均でもレベル70以上だったはずだ。つまりだ。敵のリーダーまで近づける可能性のある奴しかいねぇ。今回の大戦のメイン戦力がここに集まっている』
皆が生唾を飲み込む音が聞こえた。
それから後、上杉は大凶高校の場所と道のり、地理などを説明する。
皆は素直に頷いている。
開戦まで間近。
中庭には何とも言えない沈黙が流れていた。
――同時刻
■体育館(三島沙也加)
ここは体育館。防衛組と数少ない回復組がいる。
また支給品でハズレを引いた生徒達が集まっていた。
――ガヤガヤ
生徒達には落ち着きがなく、ソワソワとしている雰囲気があった。
三島は防衛組だったため集合場所は体育館。
体育館のステージの部分には戦況を見るためか大きなモニターが設置されている。
生徒会の一人の支給品だとか。
回復班の人数は5人前後。
全員女子生徒。
希少(まれ)な能力のようだ。
――ゴトン
壇上に登り、マイクを手に取る生徒会長。霜月 零だ。
生徒会長は本当に綺麗な容姿をしている。
長く綺麗な黒髪、透き通るように白い肌。
綺麗なだけでなくどこか、雰囲気が安心をもたらしてくれる。
三島も例外なく憧れていた。
『ここに集まっているのは守備組と回復組の生徒です。では、ここの役割について説明します』
会長は一呼吸置き、ゆっくりと丁寧に喋り出す。
『回復組は体育館に待機し、帰還してくる負傷者の手当てをします。あと、ここは戦況を見守る場所でもあります。防衛組はそれぞれに配置があるけど主に校門と裏門よ』
三島はいつもぼんやりと聞く。
何故かこの時日本史の授業を思い出していた。
戦国時代みたいな、第二次世界大戦みたいな、戦いが現実に迫っているのだ。
これから理由も分からずに、戦わされるのかもしれないのだ。
ただ戦うしかない。戦っていればいつか理由が分かるかも知れないが、そもそも三島は戦いたくなかった。
それに戦争ということは当然、殺し合うということだ。三島は想像すらできてなかった。
会長は説明が終わると壇上から降りる。
三島は校門に向かう同じ防衛組の人達に混ざりながら移動する。
右手から伝わる拳銃の冷たい感触をただ感じていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ゴブリン娘と天運のミミカ
高瀬ユキカズ
ファンタジー
小説を読んで、本気で異世界へ行けると信じている主人公の須藤マヒロ。
出会った女神様が小説とちょっと違うけど、女神様からスキルを授かる。でも、そのスキルはどう考えても役立たず。ところがそのスキルがゴブリン娘を救う。そして、この世界はゴブリンが最強の種族であると知る。
一度は街から追い払われたマヒロだったがゴブリン娘のフィーネと共に街に潜り込み、ギルドへ。
街に異変を感じたマヒロは、その異変の背後にいる、同じ転生人であるミミカという少女の存在を知ることになる。
ゴブリン最強も、異世界の異変も、ミミカが関わっているらしい。
呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に
焼魚圭
ファンタジー
唐津 那雪、高校生、恋愛経験は特に無し。
メガネをかけたいかにもな非モテ少女。
そんな彼女はあるところで壊れた家を見つけ、魔力を感じた事で危機を感じて急いで家に帰って行った。
家に閉じこもるもそんな那雪を襲撃する人物、そしてその男を倒しに来た男、前原 一真と共に始める戦いの日々が幕を開ける!
※本作品はノベルアップ+にて掲載している紅魚 圭の作品の中の「魔導」のタグの付いた作品の設定や人物の名前などをある程度共有していますが、作品群としては全くの別物であります。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人
イチ力ハチ力
ファンタジー
女神が姿を消し、瘴気による侵食が進む『詰んでいる世界』に、五人の高校生が召喚された。
そして五人の中で唯一勝手に付いてきた富東 矢那(フトウ ヤナ)は、他の四人と異なり“勇者”では無かった。
『魔王』を倒すべく喚ばれ、魔力量も桁外れ、伝説級のスキルを既に取得している他の四人の『召喚されし勇者』達に対し、矢那の召還時の魔力量は凡人並。スキルも“言語/文字理解”を除いてはただ一つ、『不撓不屈』のみ。
『召喚を要求した者』は、数奇な運命と自身の持つ宿命に導かれながら、世界の命運を賭けた戦いに、身を投じていくことになる。
絶望の色に染まる『巫女』と、絶望が大嫌いな『凡人』が出会う時、神に挑みし『不屈』の物語が幕を開ける。
脳筋や変態扱いされても、姫がポンコツになっても、ヒロイン達が野獣と化したとしても! この男は決して倒れる事は無い! 顔で嗤って心で泣いて、世界を救う真の英雄譚が始まる!
熱い魂の王道ファンタジーここに誕生!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界ニートを生贄に。
ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』
五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。
その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。
その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。
残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。
そして七十年後の今。
結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。
そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる