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第一章★
007:大戦準備と組分け作業③
しおりを挟む――商店街から数時間後
■教室
教室はガヤガヤと騒がしい。
商店街から帰ってきてからは自分達の教室に戻り、椅子に座って休んでいた。
クラスメイト達も生活必需品なんかをコンビニやスーパーからいただいてきたようだ。生徒によってはソファーをどこからか持ってきていたり、テレビを持ち込んだりしている。自由かよ。
ありがたいことに誰かが教室に石油ストーブを持ってきてくれたので室内は温かい。
時刻はまだ12時過ぎ。
時間が経つのが遅く感じる。
「なんか、完全に無法地帯だな」
「だって先生いないし…仕方ないんじゃない?」
「なんか、文化祭みたいな少し自由みたいな感じしてドキドキするねー!」
「ははは、そうだね。他のクラスも覗いてきたけどテレビゲームやってた」
「おいおい。これから殺し合いがあるかもしれないのにか?生徒会長の話聞いてなかったのかよ」
「なんか、皆わりと楽観的だよね」
学校の生徒の殆どはこの教師のいない無法地帯を楽しんでいる感じだ。気持ちは分かる。大人がいないのだ。自由なのだ。
ここNightm@reは本当に高校生以外存在していないみたい。ゲーム24時間できるし、毎日が日曜日だ。
無免許で運転だってできるし万引きだってやりたい放題だ。
目の前の沙也加も似たようなことを考えてるのかケーキ食べ放題だの洋服もらい放題だと言っている。恭二は無免許運転とかお酒とか呟いてる。
でも。
同時に自由とは怖いことだと思う。
皆武器を持っているんだ。人を殺すこともできてしまう。そして大人がいないから守っても当然もらえない。
皆は何故こんなにも楽観的なのだろう…。
実際に人が昨晩、生徒が消えているのに。
時間はゆっくり流れていく。
………
……
…
15時になったタイミングで放送のスイッチが入る。
――ザ…ザザ…
数分前には生徒会の巨乳の人が詳細が書かれたプリントを各教室に置いていた。俺達はそれを手に持っていた。
――ザ…ザザ…ザザ…
やがてスピーカーからは生徒会長の凛とした声が響き渡る。
『生徒会長の霜月 零です。では、15時になったので今晩のことについて共有させていただきます。それぞれの持ち場を記載したプリントを数分前に各教室に配布しています。集合時間になりましたら各自指定場所にお集まりください』
さらに会長は細かな作戦を伝えていく。
『私達は既に隣町にある大凶高校と戦います。作戦は先ずは4つの部隊に分かれさせてもらうことです。攻撃、防衛、回復で、もう一つは今は話せません。
会長は一呼吸を置く。
『防衛の人は校舎を守るために主に校門、裏門そして屋上に配置します。攻撃の人は実際に敵地に乗り込んでもらいます。回復の人は体育館で主に活動になります』
集合場所に行ってからまた細かな動きについては案内があるらしい。
校内中の放送は切れる。
俺はプリントを確認してみると攻撃組にいた。恭二も同じ攻撃組だけど、攻撃組はどうも二種類あるようだ。沙也加は防衛組にいた。
「私も真も恭二も違う所みたいだね 」
「そう…みたいだな…」
恭二は沙也加の言葉に相づちを打ち、
沙也加は少し不安そうだった。
「大丈夫だよ。防衛ならそうそう戦闘することはないだろうし」
「でも恭二と真は戦うんでしょ…?」
沙也加は心配そうに俺と恭二を見つめてくる。きっと大丈夫なんてこと俺は言えなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メンバー表
――――――――――――――――――
『攻撃組』
A班隊長:草壁 真司(252名)
B班隊長:上杉 昇(22名)
集合場所:校庭、中庭
『防衛組』
隊 長:霜月 零(55名)
集合場所:体育館
『回復、補佐組』
隊 長:相坂 愛花(4名)
集合場所:体育館
※備考
8時に各隊長は生徒会室で会議。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メンバー表には、隊長が記されていて、聞き覚えのある名前が多い。生徒会の人だろうか。生徒会長の霜月さんと副会長の草壁さんは知っている。
こうやって組分けがされたことなどから徐々に実感が湧いてくる。
俺は一人何故か、人を殺すことについて考えていた。殺す……死ってなんだろう。
幼いころに誰もが一度は自分の死について考えるらしい。俺も経験があった。ただ、俺は怖かった。自分が死ぬとどうなるかが。魂はどうなるのだろうかとか、自分という概念はどうなるのだろうかと考えた。答えなんてでなかった。
今度は人を殺すことについて考えていた。
これから、本当に戦争が起こるとしたら俺たちは人間を殺すことになる。こんな武器なんか渡されて、話し合いで済むようには思えない。ナイフで刺したり、銃で撃ったり、刀で斬りつけたり。漫画でしかないようなことが起こるのかもしれない。
今は平穏だがこれが今夜の12時になると戦争が始まる。
俺の脳裏には昨夜の廊下の死体の映像が過る。肉片が飛び散り、血潮が廊下を汚し、無残に死んでいた死体。これは夢だと思いたい。ただの悪夢なんだと。
そもそも、戦争があるとしてだが、蛇人間は一番肝心なことを俺達に言っていない。
なんで……なんで闘わなければならないのかだ。俺たちが闘うことによってクチナワが何か得るものがあるのだろうか。
分からない。
「真、顔色悪いよ? 」
沙也加が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
ちょっとドキッとする。どこかほっとする優しい匂いがする。
「いや、ちょっと考え事をしてただけだよ」
「深く考えない方がいいぞ。まだこれからどうなっていくのかも分からないんだしな」
恭二は俺が何を考えているのか気づいているようだ。深く考えてしまっているのは俺だけなのだろうか。
クラスの皆もまるで気にせず賑やかだ。
皆は完全に冗談か何かと思ってるのか?
実際に未だ、昨晩から誰一人高校生以外を見ていないというのに。
「……恭二、沙也加。一つ言いたいことがあるんだけどいい?」
「何だいきなり? 」
「あはは。どうしたのいきなりー?」
「なんていうかさ、その……何があっても俺達はずっと一緒にいようねって言いたくてさ」
「はは、なんだそりゃ。当たり前だろうが」
「ねー。本当だよ。私達が離れちゃうなんて想像できないよー!」
俺達は何故こんなことを言ったのだろう…
何かこの時から感じ取っていたことがあったからなのかもしれない。
何か胸騒ぎのようなものを…。
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