レベルMAX勇者召喚師と魔王の交わる世界

綾乃蒼人

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2章

8話 魔弾銃

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ルビ達が、南東側の城壁へ出ると、もう日が落ちてきており、夕刻となっていた。

「まずいわね。ダークエルフが得意とする夜になってしまうわ。それでどこまで来ているの?」
アーネは、焦る様に沈む夕日を睨みつけながら、近くにいた隊長らしき人物に問いかける。

「これはアーネ様。斥候らしき者が数名確認できますが、ダークエルフ軍本体は、まだ東の谷を通過中との事です。」

「東の谷か……あと50分もすれば来るわね。」
「はい、おそらく……」

「あれが斥候のダークエルフ……本当に耳が尖っているのですね。」
桜花は、茂みに隠れながら高速移動している影を見ながらつぶやく。

「どこ?桜花ちゃんよく見えるな。」
ルビは、怖いもの見たさで恐る恐る城壁からのぞき込むが、動きが速すぎて全く見えなかった。

(ダークエルフの肌の色は、褐色や薄い紫だと伝承されているから確認したかったのだけど……見えん!魔王は、特殊な目でも持っているのか?それとも何かのスキルか?)

そこへフレイヤ女王が現れた。
「民の避難は?」

「西門から避難させております。ですが50分で完了するかどうか……」
「北門と南門も使用して30分以内に避難させよ!」

「ですが、斥候のダークエルフは動きが速く、城内に侵入される確率が高くなるかと……」
「心配するな。相手は、闇のダークエルフ。各門に神聖結界を張らせた。侵入は不可能だ。」
「ははっ!ご命令のままに!」

(さすがはフレイヤ女王様だ。これなら城への避難が間に合いそうだな。大魔王軍襲来時も最前線で戦った稀有な女王らしいからな。)
ルビは、感心するように元婚約者を見つめた。

「なあ?ダークエルフってそんなに凶暴なのか?和解はできないものか?」
ルビは、今さらのようにアーネに問う。

「あんた馬鹿ね!そもそも人間は、光の種族よ。闇を崇拝するダークエルフと和解なんてありえないわよ。闇の種族は、いつも好戦的でやる気満々よ!そんなことまで記憶がないのぉ?」

アーネは、無知で可哀想な坊やを諭すように頭を撫でようとしてくる。
「悪かった!やめろって!」

その時、桜花が何かを思いついたように質問してくる。
「ダークエルフ……もしかしてこれって私の守護が無くなったせい……ふごっ!?」

アーネが急いで桜花の口を塞ぐ。
「まだ分かってなかったのぉ?」
そう囁きながらアーネは、何かを察したかのように後ろを振り向く。
すると、そこにはフレイヤ女王が立っていた。

「まあそうであろうとは思っていた。」
「フレイヤ女王様!」
ルビとアーネの声が揃う。

「気にするな。どの道こうなっていた。我がラーンザイル王国が魔王の守護で守られているなどあってはならんのだ!」
フレイヤ女王は、これから来るであろうダークエルフ軍の方向を見やって言い放った。

(なんて勇ましい女王様だ!だけど、相手は3万以上の闇の軍団だ。どうするつもりだろうか?半年前の大魔王軍襲来でこの国の兵士数は激減していると聞くけど……)

そんなルビの不安を察したのかフレイヤ女王が話しかけてくる。
「心配か?確かに現在のこちらの兵士は、1万ほどだ。だが、アーネ説明して。」

「はい。私がいつも使用している『ブレイズアロー』を魔弾に詰め込んで撃つことができる魔弾銃を開発したのよ~私ってやっぱり天才でしょ?」
「ま、魔弾銃?それって誰でも『ブレイズアロー』が撃てるようになると?」

「そうそう!筋力が大していらないからあんたでも撃てるかもね。」
ルビは、初めて聞くその不思議な名前の武器に希望を抱いた。

「俺でも戦える。アーネって本当に天才だったんだ!」

「何か引っかかる言い方ね~まあいいわ!私も手伝ったけど宮廷魔術師達も手伝ってくれてね。『ブレイズアロー弾』は、3万発はあるわよ。」

「あの破壊力が3万発も?」
ルビは、その破壊力を想像しただけで恐ろしくなった。

「でも問題は魔弾銃の数ね。まだ600丁しか作れていないの。ブレイズアローは、火属性爆発魔法で爆発範囲は広めだからそれほど連射は必要ないし、大丈夫と思うけどね。」
アーネが、フレイヤ女王に目配せをする。

「ということで、魔弾銃ばかりに頼るわけではないけど、これが我が軍の切り札よ。だけど油断はならない!ルビ、『レベルMAX勇者召喚』もよろしく。共にこの国を守ろう。」

久々の戦で高揚するフレイヤ女王の言葉が、段々と気さくになって来たことにルビは気づいた。

(なるほど。これが本当の……真のフレイヤ女王様なわけだ。)
ルビは、今のフレイヤ女王なら好きになれそうだと思うのだった。

「フレイヤ女王様~タマともよろしくの~」
「う、うむ……よろしく頼むぞ。」
タマに呼びかけられたフレイヤ女王は、またいつものフレイヤ女王に戻ってしまった。

「……タマ~」
ルビは、タマをグリグリと小突くのだった。
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