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ゴールド・ラッシュ
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フロンティアと呼ばれているこの町にメタル・ゴールドという鉱石が見つかったのは開拓を始めて数年が過ぎ、開拓が上手くいかず暗礁にのりあげた頃だった。
宇宙船に限らずあらゆる宇宙開発に必要なエンジンに適応できる夢のような資源。
それがメタル・ゴールドである。人々はこの忘れられた星に一攫千金の夢を求めてやってきては成功する者。失敗する者と淘汰されていった。
やがて成功をおさめた一握りの人たちによる独占支配が始まった。入植者を制限して独占者の利益を守る事にしたのだ。
こうして貧富の差ができ数十年が過ぎた。
「まったく。面倒ばかりをおこしよって!」
メタル・ゴールド鉱山のひとつ、ビルダー鉱山の持ち主であるビルダー・ビリーは機嫌が悪かった。
「すまねェ。アニキ。部下がヘタ打っちまって・・・」
ビリーのことをアニキと呼ぶ男。ビリーよりひと回り大きい体を小さくさせていた
メタル・ゴールドで富を得た者はより多くの富を求めようと開拓途中のこの星の治安の悪さをいいことに無法者を集めては自分たちの利益を繁栄させていった。
「ジェシー。その保安官、目障りだな」
弟のジェシーを使って自警団という名目のならず者の集団。つまりジェシー団を作り歯向かう勢力を排除してきたのだ。
「じゃあ。アニキ殺るのかい?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃない。不幸な事故に遭って行方不明になるだけだ」
「じゃあ。アニキまずはモーリーさんに報告にいってくるぜ」
この時代。通信システムは発展していない訳ではなく、この星が開拓途中である事と一部の施設だけしか外部との通信を許可されないことが通信システムの発展を拒んでいた。
「わかった。おみやげを忘れていくなよ」
皮袋をもって出ていくジェシー。
フロンティアの町を見渡すことのできる小高い丘。スコップで土を盛っているアープがいた。黙って作業を見ているアンリもいる。
最後に木の十字架を突き刺し額の汗をぬぐう。
「まぁ。こんなものだろう」
少々満足げなアープ。対照的に機嫌が悪いアンリ。
「どうしてこんなやつらのお墓なんて作ってあげるの?」
アープに倒された男の墓を掘っていたのか。アンリは怪訝そうな顔で聞いてみた。
「店に置いておくわけにはいかないだろう?」
「だからといってお墓まで・・・」
「まあ。こいつらもどこかで道を間違えただけかもしれないしな」
十字架にガンベルトをかける。
「そうじゃなかったら私に殺されることもなかったろうさ」
「でもアープお姉さまを殺そうとしたんだよ」
「そのお姉さまという言い方やめてもらいたいものだが」
たぶん今まで生きてきたアープの人生でおよそ言われたことのない呼ばれ方だろうし呼ばせもしなかっただろう。
「じゃあ、お姉さまじゃあなかったら、皆殺しのアープとか風穴のアープとか狂気のTwinkleスペシャルとか・・・・」
たぶん無法者たちの間で云われてるであろうアープに対する通り名を次々に口にするアンリ。
「わかった。私が悪かったもういいよ」
なぜかアンリに(アープお姉さま)そう呼ばれても悪い気がしないのはなぜだろうか。
「神さまの前では死んだ人は善人も悪人も平等らしいからな。せめて魂ぐらいは安らかにな」
十字架にむかい手をあわせるアープ。
アープに背を向け手首についた火傷のあとを見ながら怒りだろうか?普段のアンリからは想像もつかない形相をしている。
(私は絶対に許さない)
墓地の入り口に大型のバイクに似たアイアンホースと呼ばれている乗り物が停められている。バイクと違うのは前にノズルが1つ後には2つ、ついていることだろう。このノズルからエネルギーを噴射してアイアンホースを自在に操るのだ。
もちろんメタル・ゴールドを使っている。
アイアンホースの後ろには遺体を運ぶための荷台が取り付けられているというシュールな光景になっている。
ひとりの男がアイアンホースの傍に立っていて見ていた。戻ってきたアープたちに気づく。
「いいアイアンホースだね~。保安官のかい?」
バッチに気づいたのか。Twinkleスペシャルに気づいたのか男が話しかけてきた。
「あんたは?」
何気ない言葉を話すアープしかし男の動きを警戒している。
「カインさん」
アンリが男の名前をそう呼んだ。
「この町で修理屋をやっている。保安官の活躍は聞いたよ」
「カインさんはこの町でたぶん一番の修理屋さんだと思うわ」
「アンリちゃん。たぶんは余計だな間違いなく一番だぜ」
酒場であった男たちとは違い自信満々の態度に嫌味を感じさせない雰囲気の男だった。
「保安官のアイアンホースに、なにかあったらいつでも来てくれすぐに直してやるからさ」
男の爽やかさにアープの口もとがゆるむ。
「頼む」
アイアンホースに乗るアープその後ろにアンリが乗っている。
「カイン。またね~」
荷台を引きながら走り去るアープ。
「荷台がシュールすぎる」
町の中でもひと際目立つ大きさの建物。フロンティアの町長。モーリー・キローの邸宅だ。
客間の豪華なソファーに向いあってモーリーとジェシーが座っている。
豪華なテーブルにはその豪華さに相応しい置物と金貨がこぼれ落ちている皮袋があった。
もしかしたらこの部屋に相応しくないのはモーリーとジェシーなのかもしれない。それだけ人としての品性に欠ける二人であった。
「と。いう事で町長さんにはいつも通りに何もなかった。そうしてもらいたいのよ」
「わかっている。そのアープとかという保安官なかなかの厄介者らしいな」
この場合の厄介者とは無法者からの見方でつまりアープは法の味方なのである。
「ワシらと組んでこの町を支配すればいくらでもこのような贅沢な暮らしができるというのに・・・まさか銀河政府のやつらが・・・」
故郷の星を離れて様ざまな星を開拓した人類は銀河政府という組織をつくりそこで行政。立法。司法の三権を確立して開拓した星の法と人を守っていた。
「メタル・ゴールドの利権を取り上げる口実を探らせるつもりか」
「まずはひと仕事。片付けてくるわ」
立ち上がり部屋を出ていくジェシー。
酒場。
マスターは騒動などなかったかのようにいつもどうりグラスを磨いている。
カウンターに立っているアープ。アンリが空になったグラスのかわりに新しくジュースの入ったグラスを持ってくる。
「はい!アープお姉さま!アンリちゃん特製100%グレープフルーツジュースだよ!」
「ありがとう」
おいしそうに飲むアープ。満足そうに微笑むアンリ。
「アープお姉さまはどうしてあんなに強いの?」
アンリでなくても聞きたい質問である。なぜ?女のアープ銀河に5丁しかないTwinkleスペシャルを持っているのか?なぜ?どれだけの修羅場を経験すればあれだけの早撃ちができるのか?
「私は死にたくないから殺される前に相手を殺しているだけ。死ぬのが怖くて相手を殺す。強さとは関係がないのさ私が1番外道なのかもしれないな」
グラスの残りを飲み干し。本気のような冗談交じりの表情をしているアープ。
静かにグラスをさげるマスター。
鉱山主のビルダー。町長のモーリー。ジェシー団。メタル・ゴールドに執りつかれた人間たちの欲望がアープを狙う。どうなる!保安官!
宇宙船に限らずあらゆる宇宙開発に必要なエンジンに適応できる夢のような資源。
それがメタル・ゴールドである。人々はこの忘れられた星に一攫千金の夢を求めてやってきては成功する者。失敗する者と淘汰されていった。
やがて成功をおさめた一握りの人たちによる独占支配が始まった。入植者を制限して独占者の利益を守る事にしたのだ。
こうして貧富の差ができ数十年が過ぎた。
「まったく。面倒ばかりをおこしよって!」
メタル・ゴールド鉱山のひとつ、ビルダー鉱山の持ち主であるビルダー・ビリーは機嫌が悪かった。
「すまねェ。アニキ。部下がヘタ打っちまって・・・」
ビリーのことをアニキと呼ぶ男。ビリーよりひと回り大きい体を小さくさせていた
メタル・ゴールドで富を得た者はより多くの富を求めようと開拓途中のこの星の治安の悪さをいいことに無法者を集めては自分たちの利益を繁栄させていった。
「ジェシー。その保安官、目障りだな」
弟のジェシーを使って自警団という名目のならず者の集団。つまりジェシー団を作り歯向かう勢力を排除してきたのだ。
「じゃあ。アニキ殺るのかい?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃない。不幸な事故に遭って行方不明になるだけだ」
「じゃあ。アニキまずはモーリーさんに報告にいってくるぜ」
この時代。通信システムは発展していない訳ではなく、この星が開拓途中である事と一部の施設だけしか外部との通信を許可されないことが通信システムの発展を拒んでいた。
「わかった。おみやげを忘れていくなよ」
皮袋をもって出ていくジェシー。
フロンティアの町を見渡すことのできる小高い丘。スコップで土を盛っているアープがいた。黙って作業を見ているアンリもいる。
最後に木の十字架を突き刺し額の汗をぬぐう。
「まぁ。こんなものだろう」
少々満足げなアープ。対照的に機嫌が悪いアンリ。
「どうしてこんなやつらのお墓なんて作ってあげるの?」
アープに倒された男の墓を掘っていたのか。アンリは怪訝そうな顔で聞いてみた。
「店に置いておくわけにはいかないだろう?」
「だからといってお墓まで・・・」
「まあ。こいつらもどこかで道を間違えただけかもしれないしな」
十字架にガンベルトをかける。
「そうじゃなかったら私に殺されることもなかったろうさ」
「でもアープお姉さまを殺そうとしたんだよ」
「そのお姉さまという言い方やめてもらいたいものだが」
たぶん今まで生きてきたアープの人生でおよそ言われたことのない呼ばれ方だろうし呼ばせもしなかっただろう。
「じゃあ、お姉さまじゃあなかったら、皆殺しのアープとか風穴のアープとか狂気のTwinkleスペシャルとか・・・・」
たぶん無法者たちの間で云われてるであろうアープに対する通り名を次々に口にするアンリ。
「わかった。私が悪かったもういいよ」
なぜかアンリに(アープお姉さま)そう呼ばれても悪い気がしないのはなぜだろうか。
「神さまの前では死んだ人は善人も悪人も平等らしいからな。せめて魂ぐらいは安らかにな」
十字架にむかい手をあわせるアープ。
アープに背を向け手首についた火傷のあとを見ながら怒りだろうか?普段のアンリからは想像もつかない形相をしている。
(私は絶対に許さない)
墓地の入り口に大型のバイクに似たアイアンホースと呼ばれている乗り物が停められている。バイクと違うのは前にノズルが1つ後には2つ、ついていることだろう。このノズルからエネルギーを噴射してアイアンホースを自在に操るのだ。
もちろんメタル・ゴールドを使っている。
アイアンホースの後ろには遺体を運ぶための荷台が取り付けられているというシュールな光景になっている。
ひとりの男がアイアンホースの傍に立っていて見ていた。戻ってきたアープたちに気づく。
「いいアイアンホースだね~。保安官のかい?」
バッチに気づいたのか。Twinkleスペシャルに気づいたのか男が話しかけてきた。
「あんたは?」
何気ない言葉を話すアープしかし男の動きを警戒している。
「カインさん」
アンリが男の名前をそう呼んだ。
「この町で修理屋をやっている。保安官の活躍は聞いたよ」
「カインさんはこの町でたぶん一番の修理屋さんだと思うわ」
「アンリちゃん。たぶんは余計だな間違いなく一番だぜ」
酒場であった男たちとは違い自信満々の態度に嫌味を感じさせない雰囲気の男だった。
「保安官のアイアンホースに、なにかあったらいつでも来てくれすぐに直してやるからさ」
男の爽やかさにアープの口もとがゆるむ。
「頼む」
アイアンホースに乗るアープその後ろにアンリが乗っている。
「カイン。またね~」
荷台を引きながら走り去るアープ。
「荷台がシュールすぎる」
町の中でもひと際目立つ大きさの建物。フロンティアの町長。モーリー・キローの邸宅だ。
客間の豪華なソファーに向いあってモーリーとジェシーが座っている。
豪華なテーブルにはその豪華さに相応しい置物と金貨がこぼれ落ちている皮袋があった。
もしかしたらこの部屋に相応しくないのはモーリーとジェシーなのかもしれない。それだけ人としての品性に欠ける二人であった。
「と。いう事で町長さんにはいつも通りに何もなかった。そうしてもらいたいのよ」
「わかっている。そのアープとかという保安官なかなかの厄介者らしいな」
この場合の厄介者とは無法者からの見方でつまりアープは法の味方なのである。
「ワシらと組んでこの町を支配すればいくらでもこのような贅沢な暮らしができるというのに・・・まさか銀河政府のやつらが・・・」
故郷の星を離れて様ざまな星を開拓した人類は銀河政府という組織をつくりそこで行政。立法。司法の三権を確立して開拓した星の法と人を守っていた。
「メタル・ゴールドの利権を取り上げる口実を探らせるつもりか」
「まずはひと仕事。片付けてくるわ」
立ち上がり部屋を出ていくジェシー。
酒場。
マスターは騒動などなかったかのようにいつもどうりグラスを磨いている。
カウンターに立っているアープ。アンリが空になったグラスのかわりに新しくジュースの入ったグラスを持ってくる。
「はい!アープお姉さま!アンリちゃん特製100%グレープフルーツジュースだよ!」
「ありがとう」
おいしそうに飲むアープ。満足そうに微笑むアンリ。
「アープお姉さまはどうしてあんなに強いの?」
アンリでなくても聞きたい質問である。なぜ?女のアープ銀河に5丁しかないTwinkleスペシャルを持っているのか?なぜ?どれだけの修羅場を経験すればあれだけの早撃ちができるのか?
「私は死にたくないから殺される前に相手を殺しているだけ。死ぬのが怖くて相手を殺す。強さとは関係がないのさ私が1番外道なのかもしれないな」
グラスの残りを飲み干し。本気のような冗談交じりの表情をしているアープ。
静かにグラスをさげるマスター。
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