俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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6章ーMr.Freedom

52話

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 翌日。看守が詩音の居る牢屋来てついてくるよう言った。

「これから競技かな? お咎めかな」
「どっちでもない。バルクさんから競技の見学に行かせるよう頼まれたんだ」
「へー。何が始まるんだろう」
「俺だって知らん。いいから黙って歩け」

 詩音たちは闘技場へ向かった。



 観客席は大賑わいだった。だが、いつもより歓声の声が大きい。

「本当に何があるんだ?」
「さあな」

 闘技場に注目していると、司会による剣闘士の紹介が始まった。

「今日は急遽決まったチャレンジャー競技によく来てくれた! 今日は賭けとかは無しだが絶対後悔しない内容だ! それでは紹介しよう。もはや誰もが認める自由の象徴! 自由の擬人化! ミスターフリーダム! そう彼こそがコロッセオ最強の男、バールーク―ッ!!! この怪物に挑むのは収容されてから約3年間一度の敗北も知らないこの男! ジャクソン!!!」

「バルクさんがここに呼んだのはこういう理由か」

 バルクは観客席を見渡す。そして詩音を見つけるとアイコンタクトした。

「見てろってことか」

 2人の男は位置に着き、各々ストレッチを行いながら開始の合図を待った。

「早速始めるぞ! それでは試合開始ッ!」

 合図が出る。ジャクソンは背中の剣を抜き、上方へ、もう片方の手を前方に構える。

 対するバルクは一切構えない。全身リラックスして普通に立っている。

 こうして対比してみると、バルクの圧倒的な巨大さが分かる。ジャクソンも身長190㎝体重90キロと決して小さいわけじゃなく、寧ろ一般的に見れば巨漢といえよう。だがそれもバルクの前では子供同然の感覚を受ける。2mを軽く超える慎重に、、異常に発達した胸筋腹筋、女性のウエストくらいありそうな腕、丸太の様な脚を持った男だ。二人はまるで少年と戦車の様な差があるように見えた。

「うはああッ!!!」

 ジャクソンはバルクの横腹へ剣を振る。そのとき、バルクが少し力んだように見えた。

 剣はバルクに接触し、甲高い音を立てて折れた。剣先ははるか後方で地面に突き刺さる。

 だがジャクソンは驚かない。こうなることは初めからわかっていたといった感じだ。すぐさま剣を捨て、素手での構えを取る。

 次の瞬間ジャクソンのハイキックがバルクの顔面に突き刺さった。尚も攻撃は続く。左ジャブ。右フック。左のロー。右の中段蹴り。一方的にラッシュが繰り返される。

 だがバルクは一切反撃しない。それどころか全くその場から動いていない。チャレンジャーの全力を全身で受け止めてやろうという気持ちなのだろうか。しかしそれよりもこれだけのラッシュを食らって後ずさりすらしないことが一番の注目すべき点だ。

 数十秒して、ジャクソンのラッシュが終わった。距離を取ったジャクソンは息も絶え絶えだ。だがここまで一方的な展開だったのに、負傷していしているのはジャクソンの方だった。拳が完全につぶれていたのだ。対してバルクは鼻血程度のダメージだった。

 ふらつくジャクソンの元へバルクは歩み寄る。約50センチほどまで近づくと右拳を上げた。

 拳に力を入れ始める。体中から血管が浮き出て忙しく血液を循環させている。胸筋から腕にかけてみるみるパンプアップしていき、二回りほど大きくなったように見えた。

 準備が整った。バルクは今まで貯めた力を一気に放出し、ジャクソンへ向かい拳をふりおろした。

 地面が土だったことが幸いした。ジャクソンはつぶれるのではなく地面に埋め込まれた。もし石や鉄製だったならもっと悲惨な光景になっていただろう。

 だがそれでも十分強烈な一撃であり、ジャクソンはすでに死んでいた。

「そ、そこまで―ッ!! 勝者、バルク!!」

 拍手と歓声が巻き起こる。バルクは中央で勝利をアピールし、コールを求め手を振っていた。

「なるほどな。要は俺はこんなに強いんだぞ。だからジャクソンみたくなりたくなかったらおとなしくしてろって事だろ。でもこれは逆効果だったなぁ、バルクさん」

 バルクは合図で観客の声を止めさせる。そして詩音の方を向き、大きな声で告げる。

「見たかね右京! これが私だ。君には私の力を見てほしかったから呼んだのだ。………………一週間後だ。一週間後君と競技をする。私は君としたくなった! 答えてくれるだろぅ?」
「もしかして昨日のこと根に持っちゃった? そりゃごめんなぁ?」
「下手な挑発はもういい。君は私と戦いたくて挑発してるんだろ? もとから君とやらされる予定だったんだが、本気で私も本君とすぐにでもしたくなっちゃったんだ」
「分かった。楽しみにしてるぜ」

 いきなりの宣言、そしてコロッセオ史上一番好カードの競技の開催という発言に会場は今年一番の盛り上がりを見せた。

 両者はそれ以上何も言わず、自分の居場所へ去っていった。



 脱獄騒動があり、クレアとクリスタが行っていた裁判の控訴はとても難航していた。証拠は出そろっているのだが脱獄のせいで発言力が弱まり、不利な状況に陥っていたからだ。

 そんな苦労をよそに、ルナは一週間後開催される詩音対バルクの対戦についてアンティと話していた。

「凄い盛り上がりですけど、なんでですか?」
「ルナはバルクさんを知らないのか。あの方は15年以上コロッセオで負けなしの最強戦士だ。剣闘士でありながら貴族以上の暮らしをして自由を謳歌していることからミスターフリーダムって呼ばれてる」
「そんなに強いんですか?」
「あたりまえだろ。なんてったってデカい。圧倒的な筋肉量だ。バルクさんにかかればたいていは子供扱いだな」
「詩音さんよりも強いですか?」
「そうだろうなぁ。止めるのか?」
「どうせ私なんかじゃどうしようもありません。ただ詩音さんを信じるだけです」

 ルナはただ詩音が無事に帰って来ることを祈るしかなかった。
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