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跡継ぎ選別
40話
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アーサーとクレアが向き合い、アーサーの方は剣を抜き、クレアは鯉口を切り居合いの構えを取る。そして誰が合図をするでもなく、そのまま試合が開始された。
アーサーは剣を地面に立て、詠唱を開始する。
「出し惜しみはしないというわけか」
「不死の加護、不壊の加護を我に与えたまえ。さすれば我は王の輝きを以て答えん。顕現せよ、エクスカリバー!!」
アーサーの剣が姿を変えた。刀身は金色の光を放っている。眩しいが、どこか暖かで優しい光だ。
アーサーはエクスカリバーを正面に構え、攻撃態勢をとった。
対するクレアは、先手必勝の信念を込めて、今から出す一撃に集中していた。
「いくぞ!」
「来い!!」
「島原流剣術、雷神の型、閃雷斬」
呼吸、気、体の動きのすべてを調律させる。驚異的な集中力から、全くの無意識だがクレア自身の魔力が技に反応し、詩音の現象に近しいことが起きていた。クレアに電気が纏い、雷鳴轟き、あたり一帯に放電していた。
もともとの技の速さに加わり、足の筋肉を電気で活性化させたことによる筋力上昇、そして纏った電気により発生した電磁力が技の測度を更に加速させた。
そしてアーサーに放たれた一撃の測度は、雷の発光に並んだ。
アーサーから6メートルは離れていたクレアは、いつの間にかアーサーの背後に立っていた。
少し遅れて、アーサーの腹部から血しぶきが飛んだ。
「浅かった!?」
「中々やるではないか」
アーサーを見ると、腹部の出血はひどくなく、皮を少し深めに切ってしまった時くらいのものだった。
そしてその傷もみるみる消えていった。
「だが我には不死の加護が宿っている。我の魔力が尽きぬ限り、どんな傷もたちまち回復する」
「それも驚きだが、兄上は先ほどの一撃を躱したのか?」
「躱しきれなかったがな。あれだけ速い技は初めてだ。この我ですら完璧に躱すのは難しかった」
「なるほど。流石はアーサーということか。だが島原流はまだまだ奥がある。兄上の魔力が尽きるまで何度でも切り伏せてやるまでだ!」
しかし、今度はアーサーの方から攻撃を仕掛けた。洗練されきった剣術にエクスカリバーの加護が加わり、ありえないほどの攻撃力を有していた。
クレア自身、アーサーの使うバンガード直伝の剣術は習っていたので知っており、アーサーの動きも読みやすいはずだった。しかし、圧倒的な速さ、桁違いな威力に防戦を強いられる。何とか躱し、受けるという状況だ。
「島原流剣術、奔流の型、渓流の舞」
クレアは流れるような足さばきでアーサーの攻撃を躱し、斬りつける。切り傷は浅く、すぐに治癒されるが、魔力を少しでも削るために何度も斬りつけた。
「まるで水を切っているようだ。全く当たらぬ。であれば……」
アーサーは剣の魔力放出を上げた。それにより剣の一振り一振りに爆風が生じる様になり、破壊力の圧倒的向上が見て取れた。
「一撃一撃の威力を上げれば寸でで躱すことも難しくなろう。爆発魔法の爆風で水たまりを吹き飛ばすように、この剣の威力でお前の水の様な動きも吹き飛ばしてくれる!」
クレアは渓流の舞で剣を避ける。しかし爆風で吹き飛ばされてしまう。そして空中で更なる一撃が襲う。クレアは刀で受け、そのままはるか後方へ吹き飛ばされた。
剣を構え立つアーサーの正面は、クレアが壁に突っ込んだことで起きた大量の土煙で覆われていた。
「ふん!!!」
アーサーは剣で煙を薙ぎ払う。視界が晴れ、クレアが突っ込んだと思われるがれきの山を発見する。しかし、そこにクレアはいなかった。
「な!? どこだ!!?」
「島原流裏の型、霧斬舞」
いつ周ったのか、クレアはアーサーの背後にいた。クレアは横に斬りつけ、確実にアーサーに深手を負わせた。
アーサーは急いで傷の修復を行う。対しクレアはすり足や刀を駆使して土煙を起こし、煙に紛れた。
アーサーの傷が治ったころには、完全に会場は煙に覆われ、クレアはそこに紛れ全く居場所が分からない状態だった。
突然アーサーは背中から熱さをを感じた。アーサーはこれを直感で理解した。斬られたのだと。クレアがまた後ろに周ってきて斬りつけられたということを。
アーサーはすぐに背後を振り返り、構える。普通、いつどこから敵が来るか分からない状況では冷静さを保つことは困難を極めるが、アーサーはいたっていつも通りの調子だった。恐怖を感じていないわけではない。アーサーの勇気と選別へ向けた覚悟がそうさせたのだ。
アーサーは眼を瞑る。視覚に頼らず、クレアの動く音、風の向き、クレアの気配を感じ取り、位置を探る。そして、
「今ッ!!!」
クレアが煙から出てきて袈裟斬りする瞬間を見切り、剣で受け止めた。
「もう見切ったのか!?」
「あたりまえだ。こんな子供騙しの様な技、二撃食らったことが恥ずかしいくらいだ」
クレアは距離を取る。アーサーはもう一度薙ぎ払い、煙を吹き飛ばした。
「もう少し粘れると思っていたが、まさか二回しか通用しなかったとは。だが、何度か深手を食らっているし、先ほどの魔力をより開放した攻撃。中々魔力も削れてきたのではないか?」
「なるほど。あの技はそういう理由か。だが残念。我の魔力は不死の加護を使用するくらいでは蚊ほども減らんのだ。そうだな我の魔力を加護だけで削り斬りたいのであれば、1000回は首をはねなくてはならんな」
「なんと…………」
アーサーは剣を掲げる。その刀身は更に輝きを増していった。
「そんなに我の魔力を消費させたいのなら、お望み通り開放してやろう。我がエクスカリバーの偉大さを思い知るといい!!!」
アーサーは剣を地面に立て、詠唱を開始する。
「出し惜しみはしないというわけか」
「不死の加護、不壊の加護を我に与えたまえ。さすれば我は王の輝きを以て答えん。顕現せよ、エクスカリバー!!」
アーサーの剣が姿を変えた。刀身は金色の光を放っている。眩しいが、どこか暖かで優しい光だ。
アーサーはエクスカリバーを正面に構え、攻撃態勢をとった。
対するクレアは、先手必勝の信念を込めて、今から出す一撃に集中していた。
「いくぞ!」
「来い!!」
「島原流剣術、雷神の型、閃雷斬」
呼吸、気、体の動きのすべてを調律させる。驚異的な集中力から、全くの無意識だがクレア自身の魔力が技に反応し、詩音の現象に近しいことが起きていた。クレアに電気が纏い、雷鳴轟き、あたり一帯に放電していた。
もともとの技の速さに加わり、足の筋肉を電気で活性化させたことによる筋力上昇、そして纏った電気により発生した電磁力が技の測度を更に加速させた。
そしてアーサーに放たれた一撃の測度は、雷の発光に並んだ。
アーサーから6メートルは離れていたクレアは、いつの間にかアーサーの背後に立っていた。
少し遅れて、アーサーの腹部から血しぶきが飛んだ。
「浅かった!?」
「中々やるではないか」
アーサーを見ると、腹部の出血はひどくなく、皮を少し深めに切ってしまった時くらいのものだった。
そしてその傷もみるみる消えていった。
「だが我には不死の加護が宿っている。我の魔力が尽きぬ限り、どんな傷もたちまち回復する」
「それも驚きだが、兄上は先ほどの一撃を躱したのか?」
「躱しきれなかったがな。あれだけ速い技は初めてだ。この我ですら完璧に躱すのは難しかった」
「なるほど。流石はアーサーということか。だが島原流はまだまだ奥がある。兄上の魔力が尽きるまで何度でも切り伏せてやるまでだ!」
しかし、今度はアーサーの方から攻撃を仕掛けた。洗練されきった剣術にエクスカリバーの加護が加わり、ありえないほどの攻撃力を有していた。
クレア自身、アーサーの使うバンガード直伝の剣術は習っていたので知っており、アーサーの動きも読みやすいはずだった。しかし、圧倒的な速さ、桁違いな威力に防戦を強いられる。何とか躱し、受けるという状況だ。
「島原流剣術、奔流の型、渓流の舞」
クレアは流れるような足さばきでアーサーの攻撃を躱し、斬りつける。切り傷は浅く、すぐに治癒されるが、魔力を少しでも削るために何度も斬りつけた。
「まるで水を切っているようだ。全く当たらぬ。であれば……」
アーサーは剣の魔力放出を上げた。それにより剣の一振り一振りに爆風が生じる様になり、破壊力の圧倒的向上が見て取れた。
「一撃一撃の威力を上げれば寸でで躱すことも難しくなろう。爆発魔法の爆風で水たまりを吹き飛ばすように、この剣の威力でお前の水の様な動きも吹き飛ばしてくれる!」
クレアは渓流の舞で剣を避ける。しかし爆風で吹き飛ばされてしまう。そして空中で更なる一撃が襲う。クレアは刀で受け、そのままはるか後方へ吹き飛ばされた。
剣を構え立つアーサーの正面は、クレアが壁に突っ込んだことで起きた大量の土煙で覆われていた。
「ふん!!!」
アーサーは剣で煙を薙ぎ払う。視界が晴れ、クレアが突っ込んだと思われるがれきの山を発見する。しかし、そこにクレアはいなかった。
「な!? どこだ!!?」
「島原流裏の型、霧斬舞」
いつ周ったのか、クレアはアーサーの背後にいた。クレアは横に斬りつけ、確実にアーサーに深手を負わせた。
アーサーは急いで傷の修復を行う。対しクレアはすり足や刀を駆使して土煙を起こし、煙に紛れた。
アーサーの傷が治ったころには、完全に会場は煙に覆われ、クレアはそこに紛れ全く居場所が分からない状態だった。
突然アーサーは背中から熱さをを感じた。アーサーはこれを直感で理解した。斬られたのだと。クレアがまた後ろに周ってきて斬りつけられたということを。
アーサーはすぐに背後を振り返り、構える。普通、いつどこから敵が来るか分からない状況では冷静さを保つことは困難を極めるが、アーサーはいたっていつも通りの調子だった。恐怖を感じていないわけではない。アーサーの勇気と選別へ向けた覚悟がそうさせたのだ。
アーサーは眼を瞑る。視覚に頼らず、クレアの動く音、風の向き、クレアの気配を感じ取り、位置を探る。そして、
「今ッ!!!」
クレアが煙から出てきて袈裟斬りする瞬間を見切り、剣で受け止めた。
「もう見切ったのか!?」
「あたりまえだ。こんな子供騙しの様な技、二撃食らったことが恥ずかしいくらいだ」
クレアは距離を取る。アーサーはもう一度薙ぎ払い、煙を吹き飛ばした。
「もう少し粘れると思っていたが、まさか二回しか通用しなかったとは。だが、何度か深手を食らっているし、先ほどの魔力をより開放した攻撃。中々魔力も削れてきたのではないか?」
「なるほど。あの技はそういう理由か。だが残念。我の魔力は不死の加護を使用するくらいでは蚊ほども減らんのだ。そうだな我の魔力を加護だけで削り斬りたいのであれば、1000回は首をはねなくてはならんな」
「なんと…………」
アーサーは剣を掲げる。その刀身は更に輝きを増していった。
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