俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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回復術士を仲間にしよう

10話

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 暖かな日差しの刺す午前の中庭で、クリスタは読書をしていた。
「今日はこのあたりにしましょうか」
本を閉じ、自室へ戻ろうとすると、
「ごきげんよう。クリスタさん」
「あら、ごきげんよう、デリアさん」
デリアに挨拶をされたクリスタは挨拶を返すためデリアの方を向く。そのとき今まで暖かかった空気が冷たく刺さるように感じた。
「どうかなさいました? クリスタさん」
昨日までのデリアではないように感じた。
「あなたこそ、どうされたのですか? 昨日と様子が違うように見えますが」
「よく気づきましたわね。その通り。私は昨日までとは違うんですの」
デリアはゆっくりとクリスタに近づく。
「私はあなたが憎かったです。あなたは才能があるから。年上の私より学年が上だから。それなのに全く鼻にかけないのも気に食わなかった。力があったなら殺してしまおうと考えるほどに。あなたがどうしようもなく憎い。だから」
デリアは黒いオーラを出現させると、体に黒い紋章のような線が体を覆った。
「あなたを殺すため、悪魔と契約しましたの」
クリスタは出来る限りの全力で逃げだした。
 
 詩音たちはクリスタのもとを訪ねるため学校へ向かっていた。
「良い返事をもらえるといいですね」
「だが昨日の今日で返事をもらえるのか?」
「行って見ねぇと分かんないだろ。それに何回も行って熱意を見せるんだ」
詩音は今日もやるき満々だ。
「それもそうですね。…………誰か走ってきますね」
走ってくる人は詩音の存在に気付くと一目散に向かってきた。
「あれ、クリスタじゃん」
「ハァ……ハァ……詩音さんといいましたね」
「そうだけど」
「あの……あの……」
クリスタは息も上がっており、冷静さを失っていた。
「お、おい。どうしたよ」
「助けてください!!」
クリスタはすがるように詩音に助けを求めた。
「そんな顔するキャラじゃなさそうなのに……何があったんだ」
「もう追いかけっこはお終い?」
デリアが追いついてきた。
「誰だ、お前」
「クリスタさんのご友人ですか? 誰でも構いませんが私の邪魔をするのなら殺しますよ?」
「なんかやべぇのが来たぞ!? クレア! クリスタを守ってやれ! ルナは何があってもいいように魔法の準備を! こいつは俺がやる」
「解かった!!」
「解かりました!!」
クレアはクリスタをかばうように立ち、剣を抜く。ルナは杖を取り出して構えた。
「よく話が分からないけど、とりあえず落ち着こうや」
詩音はまず言葉で説得してみた。
「それはあなたたちもでしょう? 剣を抜いたり魔法の準備などして、話し合いをする気があるのかしら?」
「それはごもっともだが、お前が殺すとか物騒なこと言うからだぞ」
「別に構いませんわ。私は話し合いをする気はありませんし」
「ですよね、そんな気はしてた」
デリアは黒い電を呼び出し、詩音のすぐそばに落とした。
「次はあてますわよ。さあ、早くクリスタを差し出しなさい!!」
突然ルナが前に出た。
「それ、黒魔法ですよね」
「あら、知っているの?」
「地獄、あるいは魔界から来たとされる黒魔法、それのブラック・サンダーですよね。文書で存在は知っていますが、なぜあなたが使えるのですか?」
「あなたに関係があるの?」
「早く答えなさい!」
「私は悪魔と契約してそのクリスタを殺す力を手に入れたの」
「なるほど。あなたは回復術士としても魔法使いとしても失格です」
「なんですって?」
「魔法を使うのに悪魔と契約すること、そして黒魔術を使うことはタブーです。それも魔法で殺人を犯すことよりも重いこととされています。あなたみたいな人が魔法使いや回復術士の名前を汚していくんです。詩音さん、この人は私がやります。魔法使いとして見過ごすわけにはいきません!」
ルナは今まで見せなかった怒りの表情をしていた。
「解かったここは任せる。行くぞ、クレア」
「わ、分かった。ルナ、死ぬなよ」
「任せてください!」
詩音たちは安全な場所へ避難していった。
「見過ごせないですか。あなたが私に敵うとは思えませんが」
「あまり私をなめないでほしいですね。きっと後悔しますよ?」
デリアとルナはにらみ合い、一触即発の状態だった。

 詩音とクレアは、クリスタに今までの経緯を聞いた。
「なるほど、そんなことが」
「だがデリアとかいうやつ、器の小さい人だな」
「とりあえずデリアからは離れられたが、どうするかな」
「安全な場所へ隠したらルナの所へ戻るほかないだろう」
すると今まで誰もいなかった場所に突然男が現れた。
「ハスターさん。また人の悪感情を利用して遊んでるんですね」
「び、びっくりしたぁ! なんだよお前!」
詩音はいきなり現れて驚いたのでちょっとキレ気味だ。
「私ですか。私もハスターさんと同じでこの街を滅ぼしに来ました」
「さらっとやばいこと言うなよ。誰なんだお前は」
「私は魔王軍幹部、フェイロンです。ここの回復術士学校、私たちからすれば目障りでねぇ。つぶしてしまえば回復術士も現れないわけですから、こうして街ごと滅ぼしに来たわけです」
フェイロンは、長い白髪をいじりながら言う。
「もちろんあなた方人間も一緒です」
「仲間を探しに来ただけなのになんでこんな唐突なトラブルばっかり起こるのだ……」
クレアは頭を抱えた。
「そんなの、止めないわけにはいかねぇ。それにお前魔王軍幹部だったな。だったら尚更戦わないと。だからフェイロン、俺が相手だ」
「ほう、面白いですね。あなたが私の相手を?」
「そうだ。クレア、クリスタを連れてここから離れろ。それとクリスタ」
詩音はクリスタの方に向きなおし、続ける。
「お前は俺たち三人が助けてやる。だから安心して全部終わるまで待ってればいい。まだ返事もらってないからな、終わったら返事くれよ!」
「はい、はい! 詩音さん、お気をつけて」
「行くぞ、クリスタ」
二人はその場を走り去っていった。
「さて」
詩音は再びフェイロンに向き直る。
「始めますか」
「いつでもかかってきなさい」
フェイロンは構えをとった。武器はもっていない。片方の足を延ばし、もう片方を曲げ、重心を低く取る。そして両手の人差し指と中指をくっつけ、親指で支えた状態にし、軽く曲げる。まるでカマキリを想像させるような構えだ。
螳螂拳とうろうけんか」
「蟷螂拳? いえ、これはマンティス・フィストと呼ばれる技です。私は魔王軍幹部一のマンティス・フィストの使い手にして風魔法の使い手。これであなたを切り刻んであげますよ」
マンティス・フィストは見た目は蟷螂拳だが、風魔法を使用する際に行われる素早く魔法を出すための儀式である。儀式事態に拳法のような動きを入れ、攻撃化することで、詠唱中の隙をなくせるだけでなく、風魔法を組み合わせたコンビネーション攻撃まで可能。しかし、習得まで行くのは難しく、魔王軍側の技術であるため人で使えるものはいない。
「魔法を使いながら蟷螂拳で攻撃してくるのか。面白い戦い方するじゃないか」
「ほめ言葉として受け取っておきます。では、行きますよ」
フェイロンの周りが圧で歪んで見えた。
「こっちも全力で行くぜ。すぐに終わるなよ?」
両者、同時に踏み込み、攻撃態勢になった。



 
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