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誕生日の予約-裏-
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あたりもだいぶ暗くなってきた。
そろそろ葵を家に帰さなくてはいけない。
だが俺はまだ肝心な事を
言えずにいた。
葵が鞄を取り出し、
片付けをし始めるのと同時に
俺も話を切り出す。
「葵、今日手帳持ってる?」
葵は鞄から手帳を探し取り出すと、
俺は手帳を広げるページをめくる。
そして目的のページで手を止めると
日付を指差す。
「この日、空けといて」
「この日って、、、」
俺の指差した日付は葵の誕生日。
今年こそ、俺が祝いたい。
「この日は葵を独り占めしたいです」
独り占めって、いざ言葉に出すと
とても恥ずかしくて、
俺はきっと今、ダサい顔してる。
「はい!」
葵は持っていたペンで
日付に印をつけ、"伊織とデート"と書き加える。
俺は無事に誕生日、一緒に居れる予約をした。
これで一安心。
「なにか欲しい物とかある?」
「欲しい物ですか、、、」
葵はいきなり問われて悩んだ顔をする。
「金額とか全然気にしなくていいから、本当に欲しい物教えて」
少しだけ考え、
思い出したような顔をする。
「デジカメ、、、」
「デジカメ?」
葵からは想像と
違った答えが返ってきた。
「はい、最近写真撮るのにハマっているので、携帯のカメラでもいいんですけど、デジカメ欲しいなって、、、それに」
「それに?」
「私、、、病院でカウンセリングうけてるんです」
それは俺が葵にずっと聞きたかった話だった。
「カウンセリング?」
「はい、記憶を取り戻す為に、、、だけど過去の写真とか全然持ってなくて」
葵は笑いながらも
寂しそうな表情をする。
「葵、、、」
「だから、また記憶喪失になっても写真あったら思い出すかなって」
葵がそんな事を考えていたなんて。
俺は葵の手を握る。
「うん、デジカメね、了解!、、、だけど、大丈夫だよ」
「?」
「もう忘れさせないから」
「はい」
本当にもう忘れさせないから、
だから神様。
葵の記憶を、俺のついた嘘の記憶を、
思い出させないで欲しい。
「葵、、、大好きだよ」
「私も大好きです」
俺は握る葵の
掌にキスをした。
そろそろ葵を家に帰さなくてはいけない。
だが俺はまだ肝心な事を
言えずにいた。
葵が鞄を取り出し、
片付けをし始めるのと同時に
俺も話を切り出す。
「葵、今日手帳持ってる?」
葵は鞄から手帳を探し取り出すと、
俺は手帳を広げるページをめくる。
そして目的のページで手を止めると
日付を指差す。
「この日、空けといて」
「この日って、、、」
俺の指差した日付は葵の誕生日。
今年こそ、俺が祝いたい。
「この日は葵を独り占めしたいです」
独り占めって、いざ言葉に出すと
とても恥ずかしくて、
俺はきっと今、ダサい顔してる。
「はい!」
葵は持っていたペンで
日付に印をつけ、"伊織とデート"と書き加える。
俺は無事に誕生日、一緒に居れる予約をした。
これで一安心。
「なにか欲しい物とかある?」
「欲しい物ですか、、、」
葵はいきなり問われて悩んだ顔をする。
「金額とか全然気にしなくていいから、本当に欲しい物教えて」
少しだけ考え、
思い出したような顔をする。
「デジカメ、、、」
「デジカメ?」
葵からは想像と
違った答えが返ってきた。
「はい、最近写真撮るのにハマっているので、携帯のカメラでもいいんですけど、デジカメ欲しいなって、、、それに」
「それに?」
「私、、、病院でカウンセリングうけてるんです」
それは俺が葵にずっと聞きたかった話だった。
「カウンセリング?」
「はい、記憶を取り戻す為に、、、だけど過去の写真とか全然持ってなくて」
葵は笑いながらも
寂しそうな表情をする。
「葵、、、」
「だから、また記憶喪失になっても写真あったら思い出すかなって」
葵がそんな事を考えていたなんて。
俺は葵の手を握る。
「うん、デジカメね、了解!、、、だけど、大丈夫だよ」
「?」
「もう忘れさせないから」
「はい」
本当にもう忘れさせないから、
だから神様。
葵の記憶を、俺のついた嘘の記憶を、
思い出させないで欲しい。
「葵、、、大好きだよ」
「私も大好きです」
俺は握る葵の
掌にキスをした。
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