恋愛ゲームの世界に転生して、親友♂を全力で落としてみました

三年生・三学期

さよなら、アタシの恋

　1月17日　あまね宅　雨

　「まひろ…なのか…？俺、一体どうしたんだ？何だか、とても長い夢を見ていた気がする。だけど、もうすっかり気分がいいぞ！」
　みなさんこんにちは、進藤まひろよ。徹夜の甲斐あって、たった三日間でやり遂げてしまったわ。まぁ、相手が現実のコ○ナでなくコリナウイルスだしね…。風邪の特効薬を開発するよりは、いささか楽な仕事であったと言えるかしら。
　あまねは、すっかり元気そうになった。これと言った副作用もないようで、本当に何よりだわ…。二人して部屋を出た所、都合よく居間のテレビからニュースが流れていた。自分から見ようとしても、なかなか見れないくせに…。あるいは、これもイベントの一環かしら。
　「…天才高校生・進藤まひろ君によって、コリナウイルスの特効薬が開発されました。これにより、全世界から感染の脅威はなくなりました。街中では、喜び歩く人たちの顔が…」
　「…まひろ？これって、まひろだよな？全然勉強しないくせに、やたらと理系の成績が良いとは思ってたけど…。俺が治ったのも、まひろのおかげ？本当に、サンキューな！…って、こんな軽く言う事じゃないかな」
　「…お礼は、言わないで。全然、大した事はしていない。それよりも、医療系の各社からお声がかかって…。その中のとある製薬会社に、就職する事になった。だから、ひょんな事で卒業後の進路決まっちゃって…。あまねとは、一緒に受験する事が出来ない」
　「そうなんだ？おめでとうさん。就職祝い、送んなきゃな…。俺の事なら、気にすんな。へへっ。適当な大学に受験しまくって、どっか受かるだろ。だけど、前から思ってたけどまひろは凄いなぁ…。何だか急に、まひろが手の届かない所に行っちまったみたいだ」
　「そうだよ」
　「…まひろ？」
　「俺とあまねは、元々住む世界が違うんだ。なのに今まで、無理して友達付き合いをしていた。これからは、もう俺に関わらないで。今日は、それだけを伝えに来た…」
　「まひろ？本気じゃ…ないよな？冗談キツいぜ。俺たち、いつだって友達だっただろ？もしそれぞれの進路が違っても、ずっとずっと友達でいようって…。まひろ？まひろ！」
　それだけ言うのが、精一杯だった。アタシはすがるあまねの手を振り払って、彼の家を後にした。
　さよなら、さよなら。アタシ、これ以上あなたと一緒にいる訳には行かない…。今度は、現実からどんな災難を持ち込むか分からないし。それを抜きにしても、アタシの身体は日に日に回復に向かっている。自分でも、分かる…。
　アタシは、いつまでもこの世界にしがみついていられない。だからあまねは、本当に結ばれるべき人と一緒になってほしいの。

　さよなら、アタシの恋…。