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九月・名月の湯
好きになるより、嫌いになる事の方がもっと難しい
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テスト勉強がなかったので、潤くんの部屋に来るのはちょっと久しぶり。相変わらず、殺風景な部屋だが…。
自分で買ったらしい漫画本が、何冊か増えている。そして、水族館で買ってあげたクラゲのアクアリウムが…。これを見て、少しでも気持ちの憂さを紛らわしてくれていたなら嬉しいなぁ。
「一条刹那さん21歳。去年まで、家庭教師に来てくれていた人だよ」
何だか、名前の時点ですでに格好いいな。そして、スマホの画像で彼の姿を見せてもらったが…。実物もくっそイケメンだな、オイ!
頭良さそうでシュッとして、それでいて何というか…シュッとしている。そして実際、現役T大生なんだってさ。うわぁ、オレが勝てる要素ねぇ!潤くんのお婆さんの容態を心配してた辺り、本当に悪い人ではないらしいしね。だけど当の潤くんからは、あまり評判は芳しくないようで…?
「むかし力になってくれた弁護士先生に、ちょっと似ているなって印象だったよ。実際に、理知的な人だったし。だけど言った通り、色々と人の気持ちが分かってない所はあったかな。あぁ、そうか。どんだけ学力高くても、相対性理論とか理解できても。人の心なんてのは、なかなか理解できないものなんだなぁって」
「そう?なんだ?よく、分かんないけど。その人の肩持つ訳じゃないけど、それって当然の事じゃない?オレだって、人の心なんて正確には分からないし」
「だから、それとはレベルが違くて…。まぁ、いいや。あまり詳しく言いたくないけど、ちょっと人間性として『どうよ?』って思える部分が。こう、一人の人間として尊敬できないと言うか…。尊敬できない人間を、愛する事もできないと言うか」
何だか潤くん、いつになく歯切れ悪いな。いつもだったら、「男なら、ハッキリと喋れや!」とでも言ってるだろうに。
「?さらに、よく分かんないな。だけど、それなら逆に悩まなくていいじゃん。そんな人なら、さっさと見切りつけてさぁ…」
「それが出来たら、気が楽なんだろうけど…。いっそ嫌えてしまえたなら、もっと楽なんだろうけど。そんな簡単に、気持ちを切り替える事なんて出来ない。人を好きになるより、嫌いになる事の方がもっと難しい…」
「潤くん…」
「結局その先生には、付き合ってる人…ただの想い人なのかな?どっちにしても、いるのが分かって。オレのこの気持ちが恋愛なのか分かんないまま、立ち消えになっちゃった。家庭教師も、辞めてもらう事になって。元々、授業内容がレベル高すぎてついて行けなかったしさぁ」
うわぁ。この潤くんですらついて行けないとか、マジにどんだけ頭いい人なの…。
「宙ぶらりんの気持ちのまま、未だに何でか交流は続けている。LIMEとか、実際に会ったりとか。そんだけの話。本当、つまらない話…」
自分で買ったらしい漫画本が、何冊か増えている。そして、水族館で買ってあげたクラゲのアクアリウムが…。これを見て、少しでも気持ちの憂さを紛らわしてくれていたなら嬉しいなぁ。
「一条刹那さん21歳。去年まで、家庭教師に来てくれていた人だよ」
何だか、名前の時点ですでに格好いいな。そして、スマホの画像で彼の姿を見せてもらったが…。実物もくっそイケメンだな、オイ!
頭良さそうでシュッとして、それでいて何というか…シュッとしている。そして実際、現役T大生なんだってさ。うわぁ、オレが勝てる要素ねぇ!潤くんのお婆さんの容態を心配してた辺り、本当に悪い人ではないらしいしね。だけど当の潤くんからは、あまり評判は芳しくないようで…?
「むかし力になってくれた弁護士先生に、ちょっと似ているなって印象だったよ。実際に、理知的な人だったし。だけど言った通り、色々と人の気持ちが分かってない所はあったかな。あぁ、そうか。どんだけ学力高くても、相対性理論とか理解できても。人の心なんてのは、なかなか理解できないものなんだなぁって」
「そう?なんだ?よく、分かんないけど。その人の肩持つ訳じゃないけど、それって当然の事じゃない?オレだって、人の心なんて正確には分からないし」
「だから、それとはレベルが違くて…。まぁ、いいや。あまり詳しく言いたくないけど、ちょっと人間性として『どうよ?』って思える部分が。こう、一人の人間として尊敬できないと言うか…。尊敬できない人間を、愛する事もできないと言うか」
何だか潤くん、いつになく歯切れ悪いな。いつもだったら、「男なら、ハッキリと喋れや!」とでも言ってるだろうに。
「?さらに、よく分かんないな。だけど、それなら逆に悩まなくていいじゃん。そんな人なら、さっさと見切りつけてさぁ…」
「それが出来たら、気が楽なんだろうけど…。いっそ嫌えてしまえたなら、もっと楽なんだろうけど。そんな簡単に、気持ちを切り替える事なんて出来ない。人を好きになるより、嫌いになる事の方がもっと難しい…」
「潤くん…」
「結局その先生には、付き合ってる人…ただの想い人なのかな?どっちにしても、いるのが分かって。オレのこの気持ちが恋愛なのか分かんないまま、立ち消えになっちゃった。家庭教師も、辞めてもらう事になって。元々、授業内容がレベル高すぎてついて行けなかったしさぁ」
うわぁ。この潤くんですらついて行けないとか、マジにどんだけ頭いい人なの…。
「宙ぶらりんの気持ちのまま、未だに何でか交流は続けている。LIMEとか、実際に会ったりとか。そんだけの話。本当、つまらない話…」
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