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泣く子と八重歯には、勝てねぇ
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さーさーのーはーさーらさらー…。
だったかな。ごめん、歌は壊滅的に下手糞なんだ。音感てものを、母親の胎内に置き忘れてきてね。声変わり途中で喉もガラガラだから、人に聞かせられたもんじゃないよ。音楽の授業とかで披露すると、まぁみんながドン引きするレベル。
だけど中には、「欠点があるのも、素敵♡」とか言ってときめく女子もいるんだ。もう、何でもアリかよって話。
みなさん、こんばんは。一ノ瀬蒼12歳、ホモだよ。またちょっと、報告が空いたね。季節は七夕。とっくの昔に、体調不良は治って退院してるよ。ちなみに両親の離婚も、とっくの昔に成立しています。やったね!
今はおれの今後の行き先について検討しているので、まだ祖父母の家で厄介になってる状態。もう、矢でも鉄砲でも持って来いって話だよ。群馬を去るその日まで、せいぜい雪兎とイチャイチャさせてもらうさ。
今日は地域の七夕祭で、人前でちょっとした寸劇を演じる事になったんだ。え?おれらしくもないって?当然ながら、雪兎とのW主演だよ。じゃなきゃ、参加なんてしねぇ。どうでもいいけど、「W主演」の字面がちょっと「W不倫」に見えて色々と嫌な記憶が蘇った。まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。
ちなみに、演じる話も雪兎の創作だよ。七夕伝説を大胆にアレンジした、その名も「ひこ星とひこ星」。今のご時世、LGBTQに配慮したテーマとなっている。ちなみにこの作中作の内容はカケラも考えていないので、誰かが本当に作って頂けると作者が喜びます。
七夕の二人って、カササギに乗って会いに行くって言うけど…。この詳細は、地域とか時代によって微妙に異なるらしいね。雪兎からの、受け売りだけど。ざっと「①晴れだろうが雨だろうが、カササギに乗って会いに行く②雨の時だけ、カササギに乗って会いに行く③雨の時は、二人は会う事が出来ない」みたいなかんじ。
③て印象が、世間では強いんじゃないかな。おれも、今までそう思ってた。まぁ、晴れてようが会いませんって夫婦も世の中にはいるんですけどね。
人前で演じるって言ったけど、正確には子ども会のガキどもの前でだよ。あとは、その父兄。やだやだ。子どもはうるさくて、苦手なんだよ。ってかこんなBLじみた内容の劇を見せて、性癖歪んだりしねぇのかな。
子どもと言えば、観客の中に梢もいたよ。開演前から、雪兎の演技に期待を膨らませて声援を送ったりしている。もう少し年齢が上なら、両手に応援うちわかサイリウムでも抱えて振り回していた事だろう。
と思っていたら、後ろの席で本当に応援うちわを振っている人物がいたよ。内容は、「雪兎担当」と「投げCHUして♡」ね。この人は、雪兎の三番目の兄貴で楓さん。受験生のくせに、なに油売ってんだこんな所で。ちなみに、この作品における出番はこれだけです。
さて、開演間もなくって頃になって…。機材のトラブルで、音響やら証明やらが動かないって報告があった。修復まで、十数分はかかりそうだって。何だそりゃ。ヴァルキリーのライブじゃあるまいし、安っすいイベントだなぁ。
おれは別にこんな茶番、一生始まらなくても良かったんだけど…。ガキは騒ぎ出すし、雪兎は半泣きでこっち見てくるし。そんな事ばかりも、言ってられないじゃん。仕方ねぇな。泣く子と八重歯には、勝てねぇわ…って事で。
舞台に立って、ちょっとした余興って事でリフティングを始めたんだ。いつものサッカーボールじゃなくて、なんと蹴鞠ね。俊樹さんから、シンガポール土産ってやつをもらってたんだ。いつものボールとは勝手が違うけど、これはこれで練習になるよ。それにひこ星役って事で平安貴族?みてぇな衣装着てるから、こっちの方が不自然じゃないだろ。
こんな事もあろうと、こっそり用意しといたんだ…。え?特にトラブルが起こらなくても、披露する気マンマンだったかって?ノーコメントで。思いの外、子どもらには好評だったよ。おかげで、機材の復旧までの場繋ぎが出来た。雪兎もすっかり泣きやんで、感謝のあまり満面の笑みだ。今にも抱きついて来そうだったけど、そういうのは劇の後に取っておきな…。
そんなこんなで、舞台が跳ねて…。雪兎と一緒に、夜の道を歩いて帰ったよ。ついでに、疲れて寝ちゃった梢をおんぶして。って、何でこいつがいるんだよ。この構図、遠足の時にもあったな。
だけどあの頃に比べれば、ずいぶんおれに懐いてきたとは思う。余興で見せたリフティングに感激したんで、サッカー教えてほしいってよ。マジか。案外、チョロい奴だなぁ…。まぁ、悪い気分はしなけど。
ここ群馬も、思ってたより悪い所じゃなかった。ずっとここに残るって選択肢も…なくは、ないのかな。ちょっとだけ心惹かれたけど、それこそ未練だと分かってはいる。
おれはもし雪兎と離れ離れになっても、いつかはこの地に帰ってくる…。カササギの、橋を越えて?
なんてね。ちょっと、クサいか。
だったかな。ごめん、歌は壊滅的に下手糞なんだ。音感てものを、母親の胎内に置き忘れてきてね。声変わり途中で喉もガラガラだから、人に聞かせられたもんじゃないよ。音楽の授業とかで披露すると、まぁみんながドン引きするレベル。
だけど中には、「欠点があるのも、素敵♡」とか言ってときめく女子もいるんだ。もう、何でもアリかよって話。
みなさん、こんばんは。一ノ瀬蒼12歳、ホモだよ。またちょっと、報告が空いたね。季節は七夕。とっくの昔に、体調不良は治って退院してるよ。ちなみに両親の離婚も、とっくの昔に成立しています。やったね!
今はおれの今後の行き先について検討しているので、まだ祖父母の家で厄介になってる状態。もう、矢でも鉄砲でも持って来いって話だよ。群馬を去るその日まで、せいぜい雪兎とイチャイチャさせてもらうさ。
今日は地域の七夕祭で、人前でちょっとした寸劇を演じる事になったんだ。え?おれらしくもないって?当然ながら、雪兎とのW主演だよ。じゃなきゃ、参加なんてしねぇ。どうでもいいけど、「W主演」の字面がちょっと「W不倫」に見えて色々と嫌な記憶が蘇った。まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。
ちなみに、演じる話も雪兎の創作だよ。七夕伝説を大胆にアレンジした、その名も「ひこ星とひこ星」。今のご時世、LGBTQに配慮したテーマとなっている。ちなみにこの作中作の内容はカケラも考えていないので、誰かが本当に作って頂けると作者が喜びます。
七夕の二人って、カササギに乗って会いに行くって言うけど…。この詳細は、地域とか時代によって微妙に異なるらしいね。雪兎からの、受け売りだけど。ざっと「①晴れだろうが雨だろうが、カササギに乗って会いに行く②雨の時だけ、カササギに乗って会いに行く③雨の時は、二人は会う事が出来ない」みたいなかんじ。
③て印象が、世間では強いんじゃないかな。おれも、今までそう思ってた。まぁ、晴れてようが会いませんって夫婦も世の中にはいるんですけどね。
人前で演じるって言ったけど、正確には子ども会のガキどもの前でだよ。あとは、その父兄。やだやだ。子どもはうるさくて、苦手なんだよ。ってかこんなBLじみた内容の劇を見せて、性癖歪んだりしねぇのかな。
子どもと言えば、観客の中に梢もいたよ。開演前から、雪兎の演技に期待を膨らませて声援を送ったりしている。もう少し年齢が上なら、両手に応援うちわかサイリウムでも抱えて振り回していた事だろう。
と思っていたら、後ろの席で本当に応援うちわを振っている人物がいたよ。内容は、「雪兎担当」と「投げCHUして♡」ね。この人は、雪兎の三番目の兄貴で楓さん。受験生のくせに、なに油売ってんだこんな所で。ちなみに、この作品における出番はこれだけです。
さて、開演間もなくって頃になって…。機材のトラブルで、音響やら証明やらが動かないって報告があった。修復まで、十数分はかかりそうだって。何だそりゃ。ヴァルキリーのライブじゃあるまいし、安っすいイベントだなぁ。
おれは別にこんな茶番、一生始まらなくても良かったんだけど…。ガキは騒ぎ出すし、雪兎は半泣きでこっち見てくるし。そんな事ばかりも、言ってられないじゃん。仕方ねぇな。泣く子と八重歯には、勝てねぇわ…って事で。
舞台に立って、ちょっとした余興って事でリフティングを始めたんだ。いつものサッカーボールじゃなくて、なんと蹴鞠ね。俊樹さんから、シンガポール土産ってやつをもらってたんだ。いつものボールとは勝手が違うけど、これはこれで練習になるよ。それにひこ星役って事で平安貴族?みてぇな衣装着てるから、こっちの方が不自然じゃないだろ。
こんな事もあろうと、こっそり用意しといたんだ…。え?特にトラブルが起こらなくても、披露する気マンマンだったかって?ノーコメントで。思いの外、子どもらには好評だったよ。おかげで、機材の復旧までの場繋ぎが出来た。雪兎もすっかり泣きやんで、感謝のあまり満面の笑みだ。今にも抱きついて来そうだったけど、そういうのは劇の後に取っておきな…。
そんなこんなで、舞台が跳ねて…。雪兎と一緒に、夜の道を歩いて帰ったよ。ついでに、疲れて寝ちゃった梢をおんぶして。って、何でこいつがいるんだよ。この構図、遠足の時にもあったな。
だけどあの頃に比べれば、ずいぶんおれに懐いてきたとは思う。余興で見せたリフティングに感激したんで、サッカー教えてほしいってよ。マジか。案外、チョロい奴だなぁ…。まぁ、悪い気分はしなけど。
ここ群馬も、思ってたより悪い所じゃなかった。ずっとここに残るって選択肢も…なくは、ないのかな。ちょっとだけ心惹かれたけど、それこそ未練だと分かってはいる。
おれはもし雪兎と離れ離れになっても、いつかはこの地に帰ってくる…。カササギの、橋を越えて?
なんてね。ちょっと、クサいか。
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