あのときは泣きたかった。

エピソード42

　・・野球好きになるのはこの夏が正直に思える最後の夏だな・・。
　山口は思っていた。

「オッケー、ナイスショート。」
　堀の好返球に球場もざわつく。
　んー。ホームに向かうと照明で白いな・・。
　センターを守っている山口・・。
「ナイスショート。」
　そう言って外野の周りを再び確認する・・。１２０メートルのセンター・・。
　・・俺はやっぱり投手向きかな・・。
　そう思いながら、センターのポジションのボールをさばく。
「ナイスセンター。」

　８か月後・・。
「キンコンカンコーン。」
「ありがとう、井上先生。」
　新たな春が近づき離任式が行われていた・・。
　担任である井上先生は離任する先生だ・・・・。
「康太君、応援してる。頑張って。」

「先生・・。」
　やはり小学生だ・・。涙もろくもなる・・。山口も入学してから知っている先生で、今年の担任の先生の知っている基で、活躍する姿を見せたかったが、移動は新たな可能性・・。そう感じているのだけれども、やはり、涙に頬がぬれていた・・。