「復讐の相手」

著恋凛

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34話

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斬り落とされた首はグロいのであまり見ないようにして、エマの元にまで駆け寄る。
「エマ!」
「し・・・歩希さん!」
檻をぶっ壊し、エマを抱き寄せる。
エマから名前で呼ばれたのは2ヶ月半前ぐらいなので少し違和感があるが、そんな事より助けられてよかったという安心感の方が大きかった。
「私のせいで歩希さんが死んだら・・・そう考えるだけで胸が苦しくなります。だから、無理だけはしないでください」
「俺のせいでエマが誘拐されたんだ。俺が死んでもエマを助ける。それがさがってもんだ。あと、俺らは同い歳なんだし、さん付けも敬語も要らないから!」
「わかっ・・・た。ホントにありがとうね。歩希!」
そんなこんなでエマを助け出し、何かされたか?や身体に異常はないか?などと質問していたら、雨は止み、辺りは既に暗くなっていた。
「さて、どうするかだな・・・」
「暗い中、山を下山するのは危ないって聞いた事あるよ、歩希」
「そうだよなぁ」
悩んでいると上空からホバリング音が聞こえたので俺とエマ、2人は同時に上を見る。なんの塗装もされてないヘリコプターが俺らの真上で止まる。
敵か味方か・・・・分からない以上、俺は日本刀に手を伸ばす。エマは今武装なし。戦いとなったら俺が1人で戦うことになる。
「歩希・・・」
不安そうな声を漏らすエマの頭を撫でて落ち着かせるが、注意は怠らない。
数秒後、扉の開いたヘリコプターからロープハシゴが垂らされる。そしてその開いた扉から顔を覗かせて、「乗って!」と言う夕貴。
それを見るなり俺は心を落ち着かせる。ロープハシゴを俺らは登り、ヘリコプターの中へと乗り込む。
「いやぁ、助かったよ。下山するかしないか迷ってたからところだったからな・・・・」
「ホント、俺がヘリコプター操縦できたおかげだな」
その声は聞き慣れたものではあったが、ここ数ヶ月は1度も聞いてなかった。操縦席に座っていたのは
「奏斗さん!?」
これは驚き、予想外。アベルとかかと思ったら、奏斗さんだった。
「いやぁ、久しぶりだな」
「なんでいんすか?」
「ちょうど歩希と入れ替わりで来たのよ。って、これも驚いたけど、カノッシュ!仲間にしたの?」
夕貴は模擬戦の時遭難してたので、カノッシュの事は俺が教えてあげた。俺より倍は強い奴がいるって。
てか、アイツもう拠点に着いたのか・・・カルフォルニアの山としか言ってないんだけどなぁ・・・・
「あぁ、アイツは常識人だったからな。行く道迷ってたから仲間に入れた。ってか、カノッシュよりも奏斗さん!なんでいんすか?」
エマの声がしないなと、思ったら、子供のような目をしつつ、外を眺めている。
「俺か?・・・・お前ら1回日本には来ただろ?」
「はい」
「その時にな、再調査されたんだ。夕貴ちゃんと歩希に深い関わりがあった対能力者撲滅局の幹部全員。他のみんなは俺なんかよりもっと上の役職だから未だに調査されてるけど、俺は現在、交番勤務の雑魚ってなってるから調査もササッと終わらせられたんだよ。これ以上変に嗅ぎ付かれてもウザイからな、なんなら今すぐアメリカに飛ぶか、ってなったんだよ」
「なんか、すごいっすね」
その後、俺たちは適当な話をしたり、どんな仲間がいるって感じの話をしていた。エマは俺らの話を邪魔しないようにか、シンプルに景色が好きなのか、ずっと外を見ている。




「遅くないっすか?」
話に夢中になっていたので気づかなかったが、既に日が登り始めている。それは一晩越したことに直結する。
「俺も思った」
「俺も思った、って奏斗さんが操縦してるでしょ!」
マジで、ほんとに頑張れば歩いて行ける距離だったのに全然つかない。
そんな時、エマが声を荒らげる。
「師匠!なんか火が出てます!」
「え?マジで?・・・・マジじゃん!」
「やべぇ、わからんけど、爆発するぞ!」
扉を蹴り破り、思いっきり外に飛ぶ。
これがパラシュート無しスカイダイビングか・・・・
そんな事を思っていたらヘリコプターが爆発した。破片が散らばりながら俺らと一緒に地面へと落ちていく。
その散らばった破片にエマと奏斗さんは激突して意識を無くす。夕貴はさっきまでウトウトしていたのに既に完全に意識を覚醒させていて、破片を躱していた。
「夕貴はエマを頼む!」
俺はアニメでよくある平泳ぎのようにして奏斗さんの元にまで近寄り、手を掴む。
高速で落下する中、下を見回すと下はここから見ても分かるほど廃ビルが数個と、更地だった。
「歩希、やることわかってるでしょ?」
エマの手を掴んでいる夕貴がこちらを見ながら言うので、頷く。
地面との距離は徐々に近づいていく。
100メートル・・・80メートル・・・50メートル・・・20メートル・・・10メートル・・・5メートル・・・3メートル
3メートルになった瞬間に悪魔の能力を発動し、3式で重力を破壊する。
今までものすごいスピードで落下していたが、急に何事も無かったかのようにゆっくりと着地する。
夕貴の方もできたようだ。
「誰かなぁ、人の敷地に勝手に入ってきたのは・・・」
その声は俺のものでも夕貴のものでもなかった。
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