「復讐の相手」

著恋凛

文字の大きさ
上 下
31 / 35

31話

しおりを挟む
『エマ・ジョンソンは誘拐した。返して欲しければ明日までにハグラン山に来い。早い分には何時でもいい。そして我々と戦え。もし、遅れる事があったらエマ・ジョンソンを痛めつけながら殺す。
                                     888部隊    』
アスファルトの地面に落ちたクレープの生クリームが暑さで溶ける中、俺はとりあえず拠点へと走るのだった。





「はぁはぁ」
上がった息を整えるように一度大きく深呼吸する。
「ど、どうしたの?」
異様な空気を放つ俺を見るなり、リビングにいた夕貴がそう訊いてくる。
「エマが・・・エマが誘拐された」
その言葉に夕貴の表情は一瞬にして変わる。この状況は最悪もいい所、日本から出てきて1番の高い壁だ。しかも・・・・誘拐犯が888部隊とは・・・・
白い紙を見せる。
異変を察知した他の面々も徐々に揃っていき、空気が氷のように冷えていく。
「・・・・俺が1人で行ってくる」
こうなったのは俺のせい。俺のせいで仲間を殺させる訳にはいかないからな。
「おまっ・・・・1人でって」
拓斗が言葉を放とうとするが、夕貴がそれを止めた。
「わかったわ・・・・」
「夕貴ちゃん!?」
驚いた表情でみんな夕貴の事を見つめる。そのみんなの中に俺も入っている。そんな簡単に認めてくれるなんて・・・・
「どうせ何言ったって、口論になって論破したって、歩希は絶対に一人で行くって聞かないわ。そうでしょ?歩希」
「うん。玄関開かないようにしてでも一人で行く」
「なら、無駄な事はやめて、歩希がやりたいようになればいい。ただ絶対に死なない事。これだけは絶対に守りなさい・・・・これはお願いじゃなくて命令。わかった?」
そういう夕貴の顔は部下に命令する上司の顔だ。
「そのぐらいわかってる。俺らの目標は日本の破壊・・・・それは肝に銘じている」
そう言い残し、俺は武器庫に向かった。




武器庫でグロックとナイフを取り、グロックはホルスター、ナイフはナイフケースにしまう。日本刀をベルトに付け、玄関へと向かう。
「じゃ、行ってくるわ。じゃーな」
みんなにそう言い、玄関の扉に手をかける。
「またね、歩希」
その言葉を背に扉を開けて1歩踏み出そうとすると、夕貴とは違う声が俺の耳まで届いた。
「待って!歩希さん!」
そう言ってきたアッシュの方に向く。アッシュはペルーで出逢った時から髪が伸びて少々女の子っぽくなった。
「これ、持っていってください」
渡されたのは絆創膏。
「どうせオーバースモールを使うんでしょ?傷口をほったらかしてたら、そこからウイルスが入ってきたりするのでちゃんと絆創膏貼っといてくださいよ!帰ってきたら消毒などもしますから。それとまだ誘拐犯されて数時間だから平気だと思うんですけど、この炎天下だし、エマさんが脱水症状になってないかも心配です。ですから、速攻で連れ戻してください!」 
今ではDESTROYERSのお母さんと言う感じになったアッシュ。医学に精通している人がいて本当に良かった。怪我をしてもちゃんと治してくれるし、これで多少は無理できる。
「わかったよ。んじゃ、今度こそ行ってくる」
そして俺はハグラン山に向かうのだった。




ハグラン山に着いた俺は山道を歩く。葉が揺れた瞬間、俺は日本刀を抜き、背後から来る攻撃を受ける。
「1度目すら決まらなかった攻撃がどうして決まると思った?」
ケロッグのがら空きとなった腹に蹴りを入れ、吹っ飛ばす。
「俺の仲間を・・・・エマを返せ。何故誘拐した?回答によっては俺はお前らを全員殺す」
「何故誘拐したか?ハハッ」
一度笑い、ケロッグが言った。
「そんなの汚名返上・・・・888部隊は最強なんだ。敗北は許されない。それも無名の組織に敗北するなんて言語道断。だから、その敗北を取り消すためにね・・・」
俺は・・・俺はその言葉を聞いて今までにない以上の怒りを覚えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

処理中です...