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第1章 5人のヒロイン
第13話 その頃の姫騎士
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「弟よ、お前に王位を譲ろう」
シュペールベルク王国第1王女にして華麗なる姫騎士!
次の最高権力者と名高い私だ!
「……姉様。とりあえず、あなたはまだ王じゃありませんので譲るも何もありませんよ」
しかし、過去世の記憶が流れ込んできたことで、私はある真実を知っている。
それは――弟が王位を狙ってクーデターを起こすと言う事!
「お前が私を嫌っているのは知っている! だから譲る!」
「いや……嫌いという訳では……」
いいや、知っている!
お前が……いつも私を見下したような眼で見ていることをな!
「ただ……今回のように突拍子もないことを言いだしたり、魔物の出現と聞くや王宮を飛び出すのは……王族としてどうかと思ってはいます」
「……」
ほら見ろ!
「それに振り回されて困るのは臣下、ひいては民なのですよ。自重してください」
「ぐっ!」
民を引き合いに出すとは……卑怯者めっ!
「知っていますか、あなたが陰で何と言われているか」
「知らん!」
陰口を叩く奴らのことなんかはな!
「『猪姫』です。勉強に飽きたと10分で狩りに出かけ、夜会では言い寄ってきた貴族を吹き飛ばし……」
「……」
「姫騎士と言えば聞こえはいいですが、要は単なる筋肉馬鹿じゃないですか」
「ぬがーーーっ!!!」
こいつ……!
「し、知らん! 私はとにかくお前に王位を譲る! そして――私は旅に出る!」
「旅?」
「そうだ! 私には運命の相手がいるのだ! 遠い昔より定められた運命の相手がな! そいつに会いに行く!」
別に、急に流れ込んできた記憶に振り回されるわけではない!
アマトとかいうやつのことなんか知らん!
ちょっとだけ気になっているだけだ!
ちょっとだけ……ほんのちょっとだけかわいい顔してるなとか思っただけだ!
「別に好きだ惚れたの話ではないがな!」
「はぁ」
私のところには1番最後に会いに来るし!
我らが魔族に負けそうになってようやく会いに来るくせに!
だから今回はこっちから出向いてやろうとしているだけだ!
「誰ですかそれは。実在の人物ですか?」
「もちろんだ! 我が国の……いや、世界を何度も救おうとしている人間だ!」
未だそれは成せていないが……今度こそは我が【光天神破斬】レベルEXでそれを叶えてやろう!
「ふむ。あのうさ耳の少女の件もありますし、姉上を疑う訳ではありませんが……」
「うむ!」
うさ耳少女、フーシィが訪ねてきたこともあり、ある程度家族には私の状況――前世の記憶のようなものがあることを伝えてある。
そのフーシィは今日もどこかに出かけているようだが……。
「……婚約者であるあの方どうするのです?」
「知らん! 元より婚約者だと思ったこともないわっ!」
会ったことも……最早名前すら思い出せん!
「ということで! 私は行く! さらばだ!」
「お待ちください姉上、その方はどちらにいらっしゃるのですか?」
「……」
……知らん……。
「……適当に歩いていれば……会える、はず……」
……魔法国家カーネリー……あたりに行けば……。
「相手は犬か猫かゴブリンですか……」
「……どちらかと言えば犬っぽいな」
私の姿を見るたびに犬のように駆け寄って来るのだ。
本当に――かわいいやつだ。
「猪突猛進がすぎますよ。……はぁ~、姉上、運命の相手だと言うのならばここで待っていればいずれ会えるのでは?」
「それは! そうだが……」
「ならば、この地にて万全な体制で彼を受け入れた方がいいのではないですか?」
「……」
……。
「知らん! 早く会いたいんだもん!」
「姉上……」
そして奴の喜ぶ顔を拝んでやるのだ!
やつが最後に願ったアレも……どうしてもと言うのならば叶えてやらなくもないっ!
まったく、仕方のないやつだ!
もちろん私がリードしてやろうじゃないか!
イメージトレーニングも十全にしてきたからな!
「わっはっは!」
「……突然笑いださないで下さいよ……」
いかんいかん、思わず笑いが漏れてしまった。
「ところで、そのお方とはどのように出会ったのですか?」
「む? 信じられぬかもしれんが……実はな、この国と言うか世界がもうじき窮地に立たされるのだ! その時にな!」
実際に今の自分が経験したわけではない。ただ記憶として流れ込んできただけのもの。
だが、はっきりとわかる。
あれは事実なのだと。
「……ほう? どのような状況だったのですか?」
「うむ! これからだいたい2か月後、突如として魔族が侵攻してくるのだが――」
その話を聞いた弟が、旅に出る場合じゃないと私を軍務大臣に任命するよう父に進言、受理された。
そして昼夜迎撃態勢を整えることに追われ――。
くそっ! 弟めっ!
私を謀ったなっ!
シュペールベルク王国第1王女にして華麗なる姫騎士!
次の最高権力者と名高い私だ!
「……姉様。とりあえず、あなたはまだ王じゃありませんので譲るも何もありませんよ」
しかし、過去世の記憶が流れ込んできたことで、私はある真実を知っている。
それは――弟が王位を狙ってクーデターを起こすと言う事!
「お前が私を嫌っているのは知っている! だから譲る!」
「いや……嫌いという訳では……」
いいや、知っている!
お前が……いつも私を見下したような眼で見ていることをな!
「ただ……今回のように突拍子もないことを言いだしたり、魔物の出現と聞くや王宮を飛び出すのは……王族としてどうかと思ってはいます」
「……」
ほら見ろ!
「それに振り回されて困るのは臣下、ひいては民なのですよ。自重してください」
「ぐっ!」
民を引き合いに出すとは……卑怯者めっ!
「知っていますか、あなたが陰で何と言われているか」
「知らん!」
陰口を叩く奴らのことなんかはな!
「『猪姫』です。勉強に飽きたと10分で狩りに出かけ、夜会では言い寄ってきた貴族を吹き飛ばし……」
「……」
「姫騎士と言えば聞こえはいいですが、要は単なる筋肉馬鹿じゃないですか」
「ぬがーーーっ!!!」
こいつ……!
「し、知らん! 私はとにかくお前に王位を譲る! そして――私は旅に出る!」
「旅?」
「そうだ! 私には運命の相手がいるのだ! 遠い昔より定められた運命の相手がな! そいつに会いに行く!」
別に、急に流れ込んできた記憶に振り回されるわけではない!
アマトとかいうやつのことなんか知らん!
ちょっとだけ気になっているだけだ!
ちょっとだけ……ほんのちょっとだけかわいい顔してるなとか思っただけだ!
「別に好きだ惚れたの話ではないがな!」
「はぁ」
私のところには1番最後に会いに来るし!
我らが魔族に負けそうになってようやく会いに来るくせに!
だから今回はこっちから出向いてやろうとしているだけだ!
「誰ですかそれは。実在の人物ですか?」
「もちろんだ! 我が国の……いや、世界を何度も救おうとしている人間だ!」
未だそれは成せていないが……今度こそは我が【光天神破斬】レベルEXでそれを叶えてやろう!
「ふむ。あのうさ耳の少女の件もありますし、姉上を疑う訳ではありませんが……」
「うむ!」
うさ耳少女、フーシィが訪ねてきたこともあり、ある程度家族には私の状況――前世の記憶のようなものがあることを伝えてある。
そのフーシィは今日もどこかに出かけているようだが……。
「……婚約者であるあの方どうするのです?」
「知らん! 元より婚約者だと思ったこともないわっ!」
会ったことも……最早名前すら思い出せん!
「ということで! 私は行く! さらばだ!」
「お待ちください姉上、その方はどちらにいらっしゃるのですか?」
「……」
……知らん……。
「……適当に歩いていれば……会える、はず……」
……魔法国家カーネリー……あたりに行けば……。
「相手は犬か猫かゴブリンですか……」
「……どちらかと言えば犬っぽいな」
私の姿を見るたびに犬のように駆け寄って来るのだ。
本当に――かわいいやつだ。
「猪突猛進がすぎますよ。……はぁ~、姉上、運命の相手だと言うのならばここで待っていればいずれ会えるのでは?」
「それは! そうだが……」
「ならば、この地にて万全な体制で彼を受け入れた方がいいのではないですか?」
「……」
……。
「知らん! 早く会いたいんだもん!」
「姉上……」
そして奴の喜ぶ顔を拝んでやるのだ!
やつが最後に願ったアレも……どうしてもと言うのならば叶えてやらなくもないっ!
まったく、仕方のないやつだ!
もちろん私がリードしてやろうじゃないか!
イメージトレーニングも十全にしてきたからな!
「わっはっは!」
「……突然笑いださないで下さいよ……」
いかんいかん、思わず笑いが漏れてしまった。
「ところで、そのお方とはどのように出会ったのですか?」
「む? 信じられぬかもしれんが……実はな、この国と言うか世界がもうじき窮地に立たされるのだ! その時にな!」
実際に今の自分が経験したわけではない。ただ記憶として流れ込んできただけのもの。
だが、はっきりとわかる。
あれは事実なのだと。
「……ほう? どのような状況だったのですか?」
「うむ! これからだいたい2か月後、突如として魔族が侵攻してくるのだが――」
その話を聞いた弟が、旅に出る場合じゃないと私を軍務大臣に任命するよう父に進言、受理された。
そして昼夜迎撃態勢を整えることに追われ――。
くそっ! 弟めっ!
私を謀ったなっ!
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