小さな山のおはなし

ぴっとすぅ

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小さな山のおはなし

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ヤッホーって呼べば
ヤッホーって山は応えてくれます。

杉山  椎の山  桑の山 ・・
ドングリや椎の実 拾い、 キノコを採りに行ったり、山葡萄を集めたり、鳥たちもおいしい木の実をつぐみにきます。

そんな豊かな山の中で 誰も近づかない背丈の低い山がおりました。

その山はいつもこういうのでした。
「僕は、ずっとこのままでいいんだ。
小鳥や人間が入って来ると騒がしくって眠れやしない。
その上、僕はどんなに頑張ってもヤッホーって言い返せない。
だって小さな山だもん。」
そういう小さな山は、草がボウボウと生えているだけでした。

春のある日のこと 
小さな桃の実を2つくわえた小鳥が、
この小さな山に降り立ちました。

「あぁ 喉が乾いたわ。
遠くの山里から長旅をしてきたの。
ねぇ、あの窪みにたまったお水を一口ちょうだいな。」
そう言うと、おいしそうに小さな山の窪みのお水をゴクリゴクリと飲みました。
『くすぐったいなぁ…。』
と小さな山は、思わず笑っていました。

「ありがとう!
とってもおいしいお水ね。
これならすっかり遠くに飛んでいけそうよ。
お礼に桃の実をお一つどうぞ。」
そういうと、くわえて飛んできた桃の実を一つ、 小さい山の小さなくぼみにおいて飛んで行きました。

お礼をいわれた小さな山は、照れくさいやら恥ずかしいやら。
ボウボウの草がサワサワと揺れました。

それから、夏が来て 秋になり 冬が過ぎました。
そして、また 春がやって来ました。

あのとき小鳥が置いていった桃の実は、小さなくぼみのあたりで少しずつ少しずつ芽を出しました。
いつしか小さな山の窪みの近くで桃の樹が育ち始めたのです。

まだまだ 小ぶりだけど、小さな山にうす桃色の実と緑に茂る桃の葉が、ひときは素敵です。
小さな山も 心なしか嬉しい気持ちになりました。

翌年もまた翌年も桃の樹は、小さな山にそれはそれは見事な桃の実をつけるようになりました。
もう、あの、草ボウボウの小さな山ではありません。
立派な桃の山となりました。

なにより、ふっくらと豊かな桃の実の
香りの高いこと高いこと

甘酸っぱい桃の香りに誘われて、自然とたくさんの小鳥や人間が集まるようになりました。

草だけがボウボウと生えていただけの山はだには、みんなが足繁く通って来るので、いつしか小径となりました。

小鳥たちの落とす糞に混ざった種から 、
紫色•橙色•山吹色•鶯色•藍色と
可愛い様々な色の花も咲き始めました。

素敵な素敵な桃の山に 
晴れた日は、たくさんの人間が 桃を口いっぱいに頬ばります。
小鳥たちのうれしそうなさえずりが聞こえます。
雨や嵐の日には、小鳥や虫たちが桃の葉の陰で羽をゆっくりとやすませるのです。

今日も、明日も、
ずっと ずっと ず~っと
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