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第7章 闇の商会編
急襲してきた怪物熊
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エリスはマサムネ、エリザベッタ、アンジェラと一緒に荷物をボルケニアのギルド近くのホテルに全て預け、ボルケニアの周辺を探索していた。前ではバロンが先導している。
「しかしまぁ…ボルケニアにギャングのアジトがあったとは知りやせんでしたぜ。しかもこんなに大勢でねぇ…」
腰に警棒を提げて歩くバロンにエリザベッタが答える。
「そうです。まさしく当学園の植物を運び込んだという報告を受けました。急に連絡することになってしまいすみませんね。」
「いえいえ、俺はこれでも学生時代にアンタに世話なりやしたからね。まぁ上司のフラン嬢に押しつ、じゃなくて頼まれてきたんで案内しやすぜ。それで?エリザベッタ先生はどこが根城だと睨んでるんですかい?」
バロンはエリザベッタに視線を送りながら続ける。それに関してはマサムネが答えた。
「街のど真ん中に潜伏している可能性もあるが…そんなことをアトミックファミリーが堂々と街中でやってたらフラン嬢とバロンが気づいているだろう。恐らくこの手の後ろめたい話は町はずれの洞穴でやるのが定石だ。まぁ小生が今まで読んだ小説に限ってだがな!フハハハハ!」
マサムネはそう高笑いを挙げて歩くのをエリスは冷ややかな目で見ていた。
「へ、へぃ…まぁマサムネの旦那がそう思われるならそうなんでしょう。っとここからは岩山の中に入りますけど、ここからは魔物が多くいるんで気を付けてくだせぇ。まぁこのパーティなら敵じゃねぇでしょうが。」
バロンは腰の警棒を振りそう言ったのだった。そんな彼の安直な予想は半ば裏切られることになるのだが。
ある男たちがその一部始終を双眼鏡で見届ける。一人はクロム、リン、マガンである。
「これはやべぇな…ボルケニアのバロンを始めとした魔王軍の野郎が出張って来やがった…リン。どうするよ?」
後ろにいる背の高いポニーテールのリンがそれに応じる。
「ふぅん…まずは人数を教えなさいよクロム。それによって対応だって変わってくるんだから。」
「およそ6人かね。まぁ全員それなりに力はあるだろ。どうする?このままじゃ俺らの根城がバレちまう。」
「バカねクロム。そんなことでウチのファミリーが落ちると思ってるわけ?バカにしないでよ。こっちは三巨頭の一角背負ってんの!」
腕を組んで怒りをあらわにするリンにクロムは呆れた顔をして言う。
「んなこと言ったってよぉ…今フレイムでガキどもの誘拐は順調らしいだろ?それでさぁ…」
クロムは後ろにある機械に視線を移す。そこにはローテーブルがあり上に様々な器具が乗っている。特に目を引くのはガラス製の巨大なサイフォンである。しかしコーヒーを入れるような酔狂なものではない。その中に入っているのは赤い液体であり、ポタポタ垂れている。これは酔草の抽出作業中である。カップ一杯の液体に危険成分がこれでもかと凝縮された並の人間ならば吸うだけで気が狂ってしまう超危険物質である。クロムたちアトミックファミリーは酔草の抽出をしていたのだ。
「こんなもん作ってどこが買うんだよ。ボスも変な注文つけやがってよぉ…」
「黙れクロム。買う奴がいるから作ってんだろ!これはデカいビジネスだ。失敗できるわけないだろ?」
「本当にマガンは向こうで子供誘拐してるビリーとどっこいどっこいのファミリーの狂犬よね。ホントに引くわ。」
「それだけはお前に言われたくねぇ!」
マガンは思いっきりツッコんだ。
「それで?どうすんだ?このまま接触を避けて逃げるか?最悪今ある分だけでもあそこに輸出しようぜ。」
「チッチッチ。そんな弱腰な姿勢だからクロムは女にもてねぇんだよ。」
「余計なお世話だな!」
「ふぅんマガンには解決する方法があるみたいな言い草ね。」
リンはマガンを見据えるとマガンは懐からとあるケースを取り出した。
「できれば実践投入の為の試験もしてくれと言われていてな。まぁちょうどいい機会だと思おうぜ。」
そう言ってマガンはケースから注射器を取り出してニヤリと笑みを浮かべる。
エリス一行はまだ山道を歩いていた。アンジェラはバロンと話している。
「ねぇまだ掛かるのかしら?」
「えぇアンジェラ嬢…生憎ここは道が複雑な上に目印になるようなものもないもんでしてね…じっくり探すと時間がかかるんでさぁ。」
「ホントは迷ったんじゃない?」
「何を?!そんなことないでしょう。この山のことは知り尽くしてるんで、もう大体隠れギャングがいそうなスポットは探しましたんで残りはもう少しでさぁ。」
「ふぅん…」
「まぁ日没までに見つけたいですな。冒頭に言った通り危険な場所なんで。」
「それで?バロンは何でこの山が危険か知ってるの?」
「あぁそりゃ出るんですよ…」
バロンは顔をこわばらせて震えながら次の言葉を言った。
「凶暴な熊がね…」
途端辺りに不穏な空気が立ち込める。しかしマサムネはその限りではない。
「フハハハハ!狂暴な熊などこの小生の刃で討ち取ってくれるわ!」
そう高らかに宣言したのである。まぁ彼自身とんでもない自身家だが腕は四天王並みにはあるので倒すのもやぶさかではないが…
ガサガサ、ガサガサ…ウガァァ!
辺りに恐ろしい声がこだました。熊にしてはやや大きい声の気もするが気にしない。
「ククク!遂に本命のご登場と言うことか…」
「いや何やってるんですか!早く準備してくださいよ!」
マサムネは余裕しゃくしゃくとしているのでエリスが慌てて準備するように促す。
そして遂に敵は姿を現したのだ。その体高10mで身体のあちらこちらに傷を持つ狂暴な怪物が…
「熊が現れたわね。バロンあれが件の怪物かしら?」
アンジェラが尋ねるとバロンは白目を剥いている。
「はぁ?あんな熊が野生で生息してるわけないでしょうが!並みの熊でも2mぐらいなんだ。あれはデカすぎますぜこりゃぁ…」
この熊はバロンの想定の数倍の大きさである。そもそも討伐レベルも並みの熊ならCランクの所をこれはAランクは下らない。いや狂暴さで言えばもっと上になるだろう。まさに怪物である。エリザベッタは目を閉じて分析する。
「この熊は野生で存在が確認できません。恐らく白牙熊が一番近いですがやはり大きさには数倍の違いがあります。少なくとも私の『百科事象事典』には該当しません。」
「っとエリザベッタ様の百科事典に無いってことはあれは自然物じゃあないのか。」
「いやバロン。そんなこと言ったってあんなの放っておいたら絶対街に下りるじゃない!」
「心配はいらねぇです。『溶岩傀儡』」
バロンは巨大なマグマのゴーレムを召喚する。
「エリザベッタ様は下がることを勧める。」
反対にマサムネは腰に手を添え居合切りをしようとする。
こうしてフレイム、ボルケニアで戦線の火ぶたが切って落とされたのだった。
「しかしまぁ…ボルケニアにギャングのアジトがあったとは知りやせんでしたぜ。しかもこんなに大勢でねぇ…」
腰に警棒を提げて歩くバロンにエリザベッタが答える。
「そうです。まさしく当学園の植物を運び込んだという報告を受けました。急に連絡することになってしまいすみませんね。」
「いえいえ、俺はこれでも学生時代にアンタに世話なりやしたからね。まぁ上司のフラン嬢に押しつ、じゃなくて頼まれてきたんで案内しやすぜ。それで?エリザベッタ先生はどこが根城だと睨んでるんですかい?」
バロンはエリザベッタに視線を送りながら続ける。それに関してはマサムネが答えた。
「街のど真ん中に潜伏している可能性もあるが…そんなことをアトミックファミリーが堂々と街中でやってたらフラン嬢とバロンが気づいているだろう。恐らくこの手の後ろめたい話は町はずれの洞穴でやるのが定石だ。まぁ小生が今まで読んだ小説に限ってだがな!フハハハハ!」
マサムネはそう高笑いを挙げて歩くのをエリスは冷ややかな目で見ていた。
「へ、へぃ…まぁマサムネの旦那がそう思われるならそうなんでしょう。っとここからは岩山の中に入りますけど、ここからは魔物が多くいるんで気を付けてくだせぇ。まぁこのパーティなら敵じゃねぇでしょうが。」
バロンは腰の警棒を振りそう言ったのだった。そんな彼の安直な予想は半ば裏切られることになるのだが。
ある男たちがその一部始終を双眼鏡で見届ける。一人はクロム、リン、マガンである。
「これはやべぇな…ボルケニアのバロンを始めとした魔王軍の野郎が出張って来やがった…リン。どうするよ?」
後ろにいる背の高いポニーテールのリンがそれに応じる。
「ふぅん…まずは人数を教えなさいよクロム。それによって対応だって変わってくるんだから。」
「およそ6人かね。まぁ全員それなりに力はあるだろ。どうする?このままじゃ俺らの根城がバレちまう。」
「バカねクロム。そんなことでウチのファミリーが落ちると思ってるわけ?バカにしないでよ。こっちは三巨頭の一角背負ってんの!」
腕を組んで怒りをあらわにするリンにクロムは呆れた顔をして言う。
「んなこと言ったってよぉ…今フレイムでガキどもの誘拐は順調らしいだろ?それでさぁ…」
クロムは後ろにある機械に視線を移す。そこにはローテーブルがあり上に様々な器具が乗っている。特に目を引くのはガラス製の巨大なサイフォンである。しかしコーヒーを入れるような酔狂なものではない。その中に入っているのは赤い液体であり、ポタポタ垂れている。これは酔草の抽出作業中である。カップ一杯の液体に危険成分がこれでもかと凝縮された並の人間ならば吸うだけで気が狂ってしまう超危険物質である。クロムたちアトミックファミリーは酔草の抽出をしていたのだ。
「こんなもん作ってどこが買うんだよ。ボスも変な注文つけやがってよぉ…」
「黙れクロム。買う奴がいるから作ってんだろ!これはデカいビジネスだ。失敗できるわけないだろ?」
「本当にマガンは向こうで子供誘拐してるビリーとどっこいどっこいのファミリーの狂犬よね。ホントに引くわ。」
「それだけはお前に言われたくねぇ!」
マガンは思いっきりツッコんだ。
「それで?どうすんだ?このまま接触を避けて逃げるか?最悪今ある分だけでもあそこに輸出しようぜ。」
「チッチッチ。そんな弱腰な姿勢だからクロムは女にもてねぇんだよ。」
「余計なお世話だな!」
「ふぅんマガンには解決する方法があるみたいな言い草ね。」
リンはマガンを見据えるとマガンは懐からとあるケースを取り出した。
「できれば実践投入の為の試験もしてくれと言われていてな。まぁちょうどいい機会だと思おうぜ。」
そう言ってマガンはケースから注射器を取り出してニヤリと笑みを浮かべる。
エリス一行はまだ山道を歩いていた。アンジェラはバロンと話している。
「ねぇまだ掛かるのかしら?」
「えぇアンジェラ嬢…生憎ここは道が複雑な上に目印になるようなものもないもんでしてね…じっくり探すと時間がかかるんでさぁ。」
「ホントは迷ったんじゃない?」
「何を?!そんなことないでしょう。この山のことは知り尽くしてるんで、もう大体隠れギャングがいそうなスポットは探しましたんで残りはもう少しでさぁ。」
「ふぅん…」
「まぁ日没までに見つけたいですな。冒頭に言った通り危険な場所なんで。」
「それで?バロンは何でこの山が危険か知ってるの?」
「あぁそりゃ出るんですよ…」
バロンは顔をこわばらせて震えながら次の言葉を言った。
「凶暴な熊がね…」
途端辺りに不穏な空気が立ち込める。しかしマサムネはその限りではない。
「フハハハハ!狂暴な熊などこの小生の刃で討ち取ってくれるわ!」
そう高らかに宣言したのである。まぁ彼自身とんでもない自身家だが腕は四天王並みにはあるので倒すのもやぶさかではないが…
ガサガサ、ガサガサ…ウガァァ!
辺りに恐ろしい声がこだました。熊にしてはやや大きい声の気もするが気にしない。
「ククク!遂に本命のご登場と言うことか…」
「いや何やってるんですか!早く準備してくださいよ!」
マサムネは余裕しゃくしゃくとしているのでエリスが慌てて準備するように促す。
そして遂に敵は姿を現したのだ。その体高10mで身体のあちらこちらに傷を持つ狂暴な怪物が…
「熊が現れたわね。バロンあれが件の怪物かしら?」
アンジェラが尋ねるとバロンは白目を剥いている。
「はぁ?あんな熊が野生で生息してるわけないでしょうが!並みの熊でも2mぐらいなんだ。あれはデカすぎますぜこりゃぁ…」
この熊はバロンの想定の数倍の大きさである。そもそも討伐レベルも並みの熊ならCランクの所をこれはAランクは下らない。いや狂暴さで言えばもっと上になるだろう。まさに怪物である。エリザベッタは目を閉じて分析する。
「この熊は野生で存在が確認できません。恐らく白牙熊が一番近いですがやはり大きさには数倍の違いがあります。少なくとも私の『百科事象事典』には該当しません。」
「っとエリザベッタ様の百科事典に無いってことはあれは自然物じゃあないのか。」
「いやバロン。そんなこと言ったってあんなの放っておいたら絶対街に下りるじゃない!」
「心配はいらねぇです。『溶岩傀儡』」
バロンは巨大なマグマのゴーレムを召喚する。
「エリザベッタ様は下がることを勧める。」
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