魔獣使役で魔界生活~転生した先は魔王軍幹部の悪魔族でした~

UMA未確認党

文字の大きさ
上 下
48 / 67
第7章 闇の商会編

探し物をするときに行き倒れるのは止めましょう

しおりを挟む
 ある日自宅の前にこの間会ったばかりの魔女が倒れていたらどう思うだろうか。少なくともラクサスは混乱した。
「あの~。アンジェラさん…何で俺の家の前で行き倒れてるんです?」
アンジェラは面倒くさそうにラクサスを見上げるとこう言い放つ。
「ん?あぁラクサスね…どうかしら?魔物は集まった?」
「えぇまぁ…ところで貴方はいったい何をしてるんです?こんなとこまで来て…」
「あぁそれはね…とある薬草を探してるのよ。学園長に言われてね。それが見つからなくてここに来たところで行き倒れて…」
「いやバカですかアンタ!てか、探し物ならウチの太守にでも頼めばいいでしょうが!」
そうラクサスは怒るのでアンジェラは観念して。
「はいはい。えっと今ここはフリーザン卿じゃなくて、ローシァちゃんの担当領域だったわね…」
アンジェラはメモを読むとラクサスの方を向いた。
「あなたのグリフォンに乗せなさいよ。」
「へ?」
「乗せなさい。上司命令よ?」
ラクサスは困惑した。何を考えてこの人はポチに乗ろうとしているのか。
「あのあれはタクシーじゃないんすけど…立派な魔物で俺の戦力なんですけど…」
「いいから!早くしないとあのババ学園長に怒られるのよ!」
そう言ってアンジェラは走ってポチに乗り込んだ。一拍遅れてラクサスも前に乗る。
「はぁ…貸しっすからね…で?どこまで行くんで?」
「ローシァちゃんの家に連れて行きなさい。」
「へい…それじゃ見張りを立てときますね。」
ラクサスが胸に下げていた笛を鳴らす。すると…地面から手が出て来る。その腕は周囲の土を掘り返し、その内ガイコツ数体が姿を見せた。
「きゃぁぁ!ガイコツ?!!!なんて驚くと思った?」
アンジェラは驚くふりをしてから真顔に戻って言った。どうやらこの程度ではビビらないらしい。ガイコツは剣を持つとラクサスに敬礼をした。
「あぁ頼んだぞ!」
そう言ってラクサスとアンジェラは飛んで行った。
「新しい魔物が増えたのね。あれはスケルトンかしら?」
「えぇ。この前のネクロマンサー騒動の時に何体か拝借を…」
「あぁ、スケルトンってネクロマンサーに動かされることが多いけどある程度魔力貯まると自分で魔物化して自律するものね。そのレベルになるともはや下手な術者の制御すら超えて危険だけれども、あなたなら制御できるのね。」
「えぇ。一応心臓には魔石を付けてるのでエネルギーが切れる心配もないんで。」
「へぇ…その手の改造をしてるのね…本当に魔術向学の進歩には驚かされるわ。」

二人がそんな話をしていると奥にローシァの屋敷が見えて来た。
「ここがあの女のハウスね。」
「浮気相手の家に突入でもするのかな?」
ラクサスは呆れながら屋敷の前の庭にポチを止めた。

「あの~!ローシァ嬢はご在宅か?」
ラクサスが門前で大声を出して聞くと奥から黒服でメガネをかけた女性が出て来て答える。恐らくメイドか何かだろう。
「はい、お嬢様ならば現在お仕事中でございますが。何か御用でしょうか。正直事前のご予約が無いのでして下さるべきかと。」
インテリ風のメイドはメガネをくいっとやって牽制する。まぁ確かに急に平日の昼間に来られても太守としても困るのかもしれない。
「私が来たと言いなさい。魔王軍四天王のアンジェラが。」
「承知いたしました。」
メイドは廊下の奥に消えるとローシァが入室を許可する声が聞こえた。
「久しぶりね。ローシァ。」
「あら?アンジェラさんではありませんの!」
ローシァは急いで本を仕舞ってしまうと戻って来た。
「ラクサスもいますのね。一体なんの御用でしょう。」
ローシァは手を叩いて使用人を呼ぶと茶を出すように言いつけた。
しばらくして変わった色の紅茶がやって来た。
「私のコネで某商会から手に入れた超ウルトラスーパー高級茶葉の紅茶ですわ。価値が分かる方にだけお出しいたしますの。まぁそれ理解できる人がこの国に何人いるかというお話ですけれど。おほほ。」
ローシァはそう言って超ウルトラスーパー高級紅茶を飲む。そもそもそんな超ウルトラスーパー高級紅茶を何でラクサスみたいなよく分からない奴に出してくるのか。バカにしたいのかそれともただのいい人なのか。ラクサスにはそれが分からない。
アンジェラは急に畏まってこう告げる。
「学園からまた薬草が無くなったのよ。しかもかなりマズいやつ。」
アンジェラはそう言ってうつむくが、隣にいたラクサスはそれを聞いて顔をしかめる。
「でもアンタ確か前の件で勝手に魔術学院の薬草使ったとか言われてなかったでしたっけ?」
「違うのよ。確かにそのことで魔術学院における私の信用度は地に落ちたどころかマイナスになったけど!これはそんな問題を遥かに超越した話なのよ。問題のヤバさはその数倍は行くわ。」
いやそれじゃあ五十歩百歩だし一応振り回された身分としてラクサスが面倒くさく思っていると、アンジェラは言葉を続ける。
「酔草って知ってるかしら?」
「酔草?すみません俺魔物には詳しいんですが植物はちょっと…人を食う花くらいしか知らなくて…」
ラクサスはそんなものを知っているわけがないので頸を横に振って顔をローシァの元に向ける。ただローシァは酔草がどういう代物なのかと言うことくらいは理解しているようで顔を上げるとこうつぶやいた。
「酔草ですわね…。あの草はこの周辺に自生しているものではないですわよ?」
ローシァはそう言って紅茶に口を付ける。
「え?酔草って何?いったい何なのそれ!」
ラクサスは一人だけ話に置いて行かれて少々悔しいが、聞かぬは一生の恥とアンジェラに聞くことにした。
「酔草はねぇ…大雑把に言えば薬草なんだけれども。これが危険で…一般には出回らないものなのよ。」
「はぁ…そんな草があるんすね…」
いやさすがにラクサスもどこかで話は聞いたことはあるのだろうが、生憎ほとんど右耳から入って左耳に流れ出ていくので覚えていなくともしょうがない。いやしょうがないという訳では決してないけれども。アンジェラは続ける。
「葉は十分に効能が薄まっていて、それでも大分危険なのだけれど、最も危ないのは果実でこれは見た目は本当に小さくて赤い綺麗な果実なのだけれども、なんせ生成された成分がぎゅっと凝縮されているせいで一個食べれば目の前に幻覚が宿り、五感は狂い正常な受け答えが出来なくなり、挙句の果てには死ぬというとんでもない植物。」
 なるほどつまり人間世界で言う麻薬という訳だ。成分まで同じかはさすがにラクサスでは理解できないが。
「それはとっくに一般社会には出回らないけれども、学園では少々研究用に保存されているの。」
「それが賊にでも盗まれたということでしょうか?」
ローシァはそう答える。
「えぇ…倉庫の中からね。現在学園にいる人間が総がかりで行方を捜索しているわ。それであなたの元に来たの。」
アンジェラはそう言ってローシァの方をじっと見る。
「はぁ…分かりました。情報は頭に入れておきます。」
「助かるわ。それじゃあまた何かあったら連絡するから。」
アンジェラは紅茶を飲み干して立ち上がる。
「ん?俺を連れてかないんすか?」
ラクサスはてっきり彼女に強引に連れていかれると思ったので面食らった。
「いや、だって別にあなたも一国一城の主でしょ?連れてかないわよ。」
「は、はぁ…」
アンジェラは呆然とするラクサスを残して帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅
恋愛
 その日、彼女のいる地球世界で、初の五感体験型VRMMOゲーム『セカンド・ワールド』のサービスが開始された。 今までの物とは違うという、そのゲームへの期待感に胸を膨らませながら、彼はその世界に降り立つ。  自らの世界の物とは違う価値観を元に作られた幻想世界に、 時には感心しながら、時には苦笑混じりに彼は彼女と共にそのゲームを楽しみ始めていく。  これは、彼(アスタール)と彼女(りりん)の2人のゲーム世界を仲介した秘密の異世界交流のお話。 タイトルに★の場合はアスタール視点、☆の場合はりりん視点で話が進みます。 ☆どこかで見たキャラが出てきますが、仕様です。 ☆ストック極少なので、日付は不定期。アップするのは18時にします。 ☆行き当たりばったりなので、矛盾点が出てくるかもしれませんが、優しくご指摘頂けると嬉しいです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...