上 下
13 / 62
第3章 魔女の秘薬編

魔女の薬はあんまり信用できない

しおりを挟む
遺跡探査から少し経ったある日、ラクサスは街に買い物に出ていた。
(しかし、何度見ても魔王領っていう割に街が発展してるんだなぁ…もっと荒廃した荒野かと思ってた。)
ラクサスは街を見てそんな感想をもらす。
魔王領は魔王領と言う名前を取っているがそれ自体は非常に緩やかな王国である。皇帝こそ魔王であるが普通に人間も大勢いる。とはいえ、別に魔族が人間を奴隷にしているわけではない。逆もまたしかり。魔王領は人間と魔族が共存して暮らしている場所なのだ。
特にこの都市はその傾向が強く、人間に対して魔族も友好的な者が多い。
ラクサスはグリフォンに跨りながら街を歩く。
「しかしまぁ…このグリフォンの食い物にあんなに金がかかるとはな……。」
ラクサスはグリフォンに跨りながら、そうぼやく。
「クケェー」
「ん?何だ?腹が減ったのか?しっかしなぁ……グリフォンに食わすのは高いしな……。まぁ仕方ないか……。」
ラクサスはグリフォンから降りて、近くの果物屋に赴く。
「おっちゃん!何かないか?」
ラクサスがのれんをくぐった。すると、そこに見た顔がある
「あら?ドリアの息子じゃない。」
「あ、アンジェラさん!」
ラクサスが驚いた声を出す。アンジェラは相変わらず胸元の開いた露出の多い服に相変わらずの美貌である。手には竹籠を持っていた。
「ど、どうしてここに?」
「あら?どうしたもこうしたも魔法の試薬作りの材料集めだけれど?」
ラクサスが尋ねるとアンジェラはそう答える。
ラクサスはああそうかと感じた。彼女の事は父から聞いていた。とんでもない魔女であると……。
アンジェラはラクサスに近づいていく。
彼女はラクサスの頬に手を当てた。
そして、その額に自分の額を当てる。身長はアンジェラと同じくらいである。
ラクサスは突然の行動に顔を真っ赤にしてしまった。
「ねぇ、そこのグリフォンの毛でも爪でも素材として提供してくれないかしら?報酬は出すわよ?」
アンジェラは突然にそんなことを言った。
「いや、無理でしょうよ。そりゃあさすがに。」
「じゃ、じゃあ先っぽだけでもいいから。」
アンジェラはそう言ってラクサスの腕を引っ張る。
「嫌ですよ!一体何で魔女の研究に俺のペットを利用する必要があるんですか!」
ラクサスがそう言って腕を振り払う。
「あら?いいじゃないの?可愛いし。」
「ダメです!大体グリフォンの爪なんて何に使うんですか?」
「あなた知らないの?グリフォンの爪には特殊な薬効がいろいろあってね、何だっけ…あぁそうよ!媚薬…」
「お断りします!何が悲しくて媚薬の材料を提供するんですか!」
ラクサスがアンジェラの話を遮ってそう言った。
「あら?良いじゃない。特にあなたの隣にいる吸血鬼ちゃんなんかイチコロよ?」
ラクサスは両手をアンジェラの肩に置くと
「アンジェラさん…」
「二度とそんな意味の分からないことを言わないでください‥‥ありませんから!1億パーセントありませんから!」
「まったく最近の悪魔男子は…まぁいいわ。今私はそんなところで油を売ってる場合じゃないのよ。早く材料を調達しないと…」
どうやらアンジェラは何かの薬を作りたいらしい、まぁラクサスはそんなものに興味はないが。これでも魔王軍の四天王なのか?ラクサスは壮大な疑問を持って空を見上げる。アンジェラはその考えを見透かしたのか
「あなたまさか私のことを信用してないわね?」
「い、いえ信用してますとも!これでも同じ方に仕える同士ですから!」
ラクサスはそう両手を振って取り繕おうとする。一応これでも上官なので失礼のないようにしなければならない。
アンジェラはその様子を知ってか知らずか。
「まぁいいわ。信用しているならグリフォンに乗せなさい。荷物が重いのよ。」
ラクサスは気づかなかったが彼女の両手には買い物袋が下がっている。ラクサスはおもむろにいやそうな顔をして。
「あの‥‥俺をアッシー君だと思ってません?」
「あら?レディーの自宅にご招待出来るだけマシじゃない?お嫌い?」
アンジェラがニヤ付きながらそう言うのでラクサスは呆れ半分で後ろに案内する。
「落ちないでくださいよ…拾うの非常に面倒なので。」
「あら?これでもいつも箒に乗ってるからバランス感覚はいいはずだけど。」
「ふむ、じゃあ行くぞ!ポチ!」
「クケェ~。」
グリフォンはラクサスとアンジェラを乗せて空に旅立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そして俺は召喚士に

ふぃる
ファンタジー
新生活で待ち受けていたものは、ファンタジーだった。

Fairy Song

時雨青葉
ファンタジー
妖精たちが飛び交う世界。 ここでは皆、運命石と呼ばれる石を持って生まれてくる。 この運命石は、名のとおり自分の運命の相手へと繋がっているのだという。 皆いずれ旅立つ。 対になる運命石を持つ、運命の相手を捜して。 ―――しかし、そんなロマンチックな伝承に夢を見れない者がここに一人。 自分は生まれながらの欠陥品。 だからどうせ、運命の相手なんて…… 生まれ持った体質ゆえに、周囲との価値観の差に壁を感じずにいられないシュルク。 そんな彼に、とある夜の出会いが波乱を巻き起こす。 「恨むなら、ルルーシェを恨みなさい。」 唐突に振り上げられる刃は、退屈でも平和だった日常を打ち砕く。 運命石を中心に繰り広げられる、妖精世界の冒険譚!! 運命の出会いを、あなたは信じますか…?

魔法学校で最弱の僕が最強魔法少女の従者となりました

モーティー
ファンタジー
魔法学校ギョウダァに、思わぬ波紋が広がる! 学園最弱の烙印を押されたオズワルド。 そんな彼が、伝説の魔法少女グリンディアの従者に抜擢される。 最強と最弱の意外な組み合わせに、学園中が注目! オズワルドの隠された才能は開花するのか? グリンディアの突飛な行動に、彼は振り回されっぱなし。 そんな中、ふたりの間に芽生える不思議な感情。恋?友情?それとも主従愛? 笑いあり、驚きあり、そして少しの魔法と恋のときめきあり。 ふたりが織りなす、ちょっと変わった学園生活。 『魔法学校で最弱の僕が最強魔法少女の従者となりました』 魔法とユーモア、そして微妙な恋心が織りなす、心温まるファンタジーラブコメ、開幕!

月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~

羽月明香
ファンタジー
魔女は災いを呼ぶ。 魔女は澱みから生まれし魔物を操り、更なる混沌を招く。そうして、魔物等の王が生まれる。 魔物の王が現れし時、勇者は選ばれ、勇者は魔物の王を打ち倒す事で世界から混沌を浄化し、救世へと導く。 それがこの世界で繰り返されてきた摂理だった。 そして、またも魔物の王は生まれ、勇者は魔物の王へと挑む。 勇者を選びし聖女と聖女の侍従、剣の達人である剣聖、そして、一人の魔女を仲間に迎えて。 これは、勇者が魔物の王を倒すまでの苦難と波乱に満ちた物語・・・ではなく、魔物の王を倒した後、勇者にパーティから外された魔女の物語です。 ※衝動発射の為、着地点未定。一応完結させるつもりはありますが、不定期気紛れ更新なうえ、展開に悩めば強制終了もありえます。ご了承下さい。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...