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序章 彼が魔王軍に入るまで
俺!誕生!
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「ついに奥方様が出産なさったぞー!」
とある王国のバレンタイン邸の中廊下で小男が騒いでいる。いやこの男。小男と分類するには少し違う頭の上には角が生えているし、肌の色も緑で全く人間らしくない。そうこの男の正体は鬼なのである。
さて、そんなところで健吾は目を覚ました。
「ここは・・・ベビーベッドか。」
彼はそう言ってまた惰眠をむさぼろうとしたところで気が付いた。
「げ、ほんとに転生している!」
あの女神の言うことは半ば信じていなかったのだが、こうなっては信じるほかあるまい。
もっと部屋の中を見て回りたいが、生憎赤ん坊の身体のせいで思うように動くことが出来ない。健吾はとりあえずもがいて、何とか顔を横に向けることに成功した。
そこにいたのは若い女性だった。この人物が母親だと言われる前に気付いたのは親子の性だろうか。髪の毛は金髪、目は青く明らかに美人の部類に入る顔である。と言ってもさすがに母親に欲情するほど彼は追い込まれてはいないが。そして何よりも目を引いたのはその背中にある巨大な羽である。これはいわゆる悪魔の翼だと、恐る恐る背中に手を向けて触ってみるとやはり何か翼のようなものが生えている。
今見ている母親と思しき者の翼と比べるとずっと貧相だが、そこらへんは今後の成長で補われるのだろう。また、後で頭の上に角があってシッポも生えていることに気付いた。
俺は悪魔に転生したらしい。状況を整理していると、
「ああ、ラクサス。やっと産まれてきてくれたわね。」
俺の名前はラクサスっていうのか。気づかなかった。
すると向こうにある扉をがたがたと開けて何者かが入って来た。
「お~エリーナ様。これはまたかわいい赤ちゃんですね!」
そう答えるのはさっき大騒ぎしていた小鬼である。
「さすが魔王様の子。風格が漂っておりますぜ。」
そして一足遅れて大男が入って来た。彼もまた角と翼と尻尾が付いていた。さっきの母親が比較的可愛らしい部類に入るのに対し、この男の方はどこを見てもがっしりとしている。どことなく厳しそうな軍人の雰囲気だ。ザ、悪魔だ…
「初めまして、我が息子。ラクサス・バレンタインよ。」
彼はそう言って俺を抱き上げる。その手には数々の傷跡が残っており、戦いに身を投じている様子を示している。しかしそれに対して抱き上げ方には優しさも感じる。
「吾輩がそなたの父、ドリア・バレンタインだ。」
健吾いやラクサスは彼らの息子として産まれたのだと、改めて気が付いた。
その後しばらくの時が過ぎラクサスはいつの間にか16歳になっていた。その間一応魔族らしく魔術の修行や外付き合いなどを行っていたが、これでも結構苦労する。父親はと言うと家庭的で優しい男で、到底魔王の重臣とは思えない。休日にはよく様々な料理を作ってくれた。
もちろん訓練法は厳しかったが、それでも一応は父が認めるまでの強さは得ているらしい。
(いや、わりとマジで頑張った…魔族として身体は頑丈だが、外付けの力までは担保されない。)
部屋はそれなりに大きいものを与えられた。ただ箱だけで中には大して自慢できるような代物はない。後さっきの小鬼はリコールと言って俺専属の使用人らしく、いろいろと世話を焼いてくれた。それでこの世界の様々な決まりについても学ぶことが出来た。
とある王国のバレンタイン邸の中廊下で小男が騒いでいる。いやこの男。小男と分類するには少し違う頭の上には角が生えているし、肌の色も緑で全く人間らしくない。そうこの男の正体は鬼なのである。
さて、そんなところで健吾は目を覚ました。
「ここは・・・ベビーベッドか。」
彼はそう言ってまた惰眠をむさぼろうとしたところで気が付いた。
「げ、ほんとに転生している!」
あの女神の言うことは半ば信じていなかったのだが、こうなっては信じるほかあるまい。
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今見ている母親と思しき者の翼と比べるとずっと貧相だが、そこらへんは今後の成長で補われるのだろう。また、後で頭の上に角があってシッポも生えていることに気付いた。
俺は悪魔に転生したらしい。状況を整理していると、
「ああ、ラクサス。やっと産まれてきてくれたわね。」
俺の名前はラクサスっていうのか。気づかなかった。
すると向こうにある扉をがたがたと開けて何者かが入って来た。
「お~エリーナ様。これはまたかわいい赤ちゃんですね!」
そう答えるのはさっき大騒ぎしていた小鬼である。
「さすが魔王様の子。風格が漂っておりますぜ。」
そして一足遅れて大男が入って来た。彼もまた角と翼と尻尾が付いていた。さっきの母親が比較的可愛らしい部類に入るのに対し、この男の方はどこを見てもがっしりとしている。どことなく厳しそうな軍人の雰囲気だ。ザ、悪魔だ…
「初めまして、我が息子。ラクサス・バレンタインよ。」
彼はそう言って俺を抱き上げる。その手には数々の傷跡が残っており、戦いに身を投じている様子を示している。しかしそれに対して抱き上げ方には優しさも感じる。
「吾輩がそなたの父、ドリア・バレンタインだ。」
健吾いやラクサスは彼らの息子として産まれたのだと、改めて気が付いた。
その後しばらくの時が過ぎラクサスはいつの間にか16歳になっていた。その間一応魔族らしく魔術の修行や外付き合いなどを行っていたが、これでも結構苦労する。父親はと言うと家庭的で優しい男で、到底魔王の重臣とは思えない。休日にはよく様々な料理を作ってくれた。
もちろん訓練法は厳しかったが、それでも一応は父が認めるまでの強さは得ているらしい。
(いや、わりとマジで頑張った…魔族として身体は頑丈だが、外付けの力までは担保されない。)
部屋はそれなりに大きいものを与えられた。ただ箱だけで中には大して自慢できるような代物はない。後さっきの小鬼はリコールと言って俺専属の使用人らしく、いろいろと世話を焼いてくれた。それでこの世界の様々な決まりについても学ぶことが出来た。
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