118 / 139
オーディアス攻略作戦
解体業者に電話したいタイプのJK
しおりを挟む
「どうしてですか!」
普段からコミュ力の化け物で円満に会話を進める与一が、珍しく、思わずといった様子で声を荒げる。
対して、父は淡々と言葉を返した。
「与一さんの主張は分かった。その年でそれだけしっかりとした主張を考えられるのは立派だ」
「それなら!」
「だが主張を理解できたかどうかと、それに納得して受け入れるかはまた別の話だ」
「何が、何がダメだって言うんですか!」
「ダメな物はダメだ。どうしてもそれを曲げさせたいなら、我が家のルールに従ってもらう。奏音、着替えて道場に来るんだ」
父はそう言うと、その場を立ち去ってしまう。
「奏音……」
与一が心配そうな表情で私へ視線を送る。
「与一、ありがとう」
「でも……」
与一の表情に悔しさが滲む。
彼女はきっと、説得が失敗したと思っているんだろう。だけど、それは違う。彼女の理路整然とした言葉は父のロジックを破壊した。
「与一が変わりにしゃべってくれて、すごく勇気が出たよ。でも、全部の問題を与一に任せるわけにはいかない。与一が頑張ってくれた様に、今度は私が頑張る番だ」
私はニッと笑って、与一へ向かって軽く拳を突き出す。与一は少しだけ悩んでから、私の拳に拳を合わせた。
「わかった。頑張ってね」
風間流の道着へ着替えて、道場の襖を開ける。ここに来るのは、私が見放されて風間流を教えてもらえなくなって以来だ。
「来たか」
道場の中央には既に道場着に着替えた父が立っていた。もしかしたら、ここで殺されるかもしれない。
父の無表情な顔を見て、そんな考えが頭をよぎる。私は頭を振って恐怖を振り払って、道場に入った。
「奏音、私はまだ、お前から直接何も聞いていない。与一さんの言う様に、あのゲームが続けたいのか?」
私が道場の中央、父と向かい合う位置まで移動すると、彼が感情を感じさせない声で話しかけてきた。
「……はい。他の人から見たらたかがゲームって言われるかもしれないけど。私にとっては重要な事なんです」
「そうか、覚悟があるならいい」
父はそう言うと、道場の隅で心配そうに私たちを見つめる与一の方へ視線を向けて語りかけた。
「時代錯誤で古臭いと思われるだろうが、風間家には様々なルールがある。その1つが、当主の決定を覆す方法だ」
「それは……」
「簡単だ、試合で勝てばいい」
「そんな、野蛮な!」
「そうだな、なんの合理性も無い、旧時代の野蛮なルールだ。だが、どれだけ正しい倫理も、合理も、力が伴わなければ意味が無い。風間家の繁栄を成しえたのはそんな時代の功績があったからだ」
そこまで喋って、父は私の方へ向き直って構えを取る。大地を噛み締める様に軽く腰を落とし、私へ対して半身になる。両手は拳を作らず、総合格闘技の様に肩を落としながら僅かに曲げた。
「(本当に風間家の伝統に則って戦うなら、この試合で負った怪我や、最悪命を落としても、それは合意の元として罪に問われない。現代においてそんなことが可能かは分からないけど……)」
「行くぞ」
この試合に、合図なんてない。
父が会話をしている間も、私はずっと父の隙を狙っていた。だけど、結局そんな物は見つけられなくて、戦いの火蓋を切ったのは彼だった。
「かはっ」
一瞬の沈黙の後、猛烈なスピードで父が踏み込む。圧倒的なAGIを持つアニーが見ている様なスローモーションな世界とは違う、現実の無慈悲な速さだ。たった一息で2メートルは空いていた距離が無に帰り、丸太の様な腕が私の腹に深々と突き刺さる。
顔面と腹の両方を同時に攻撃されて、咄嗟に顔面を防いで腹への攻撃を防ぐことができなかった。
軽く体が浮いて後へ吹き飛ばされる。
「ふんっ」
地面に片足が付くが付かないかぐらいのタイミングで、父の後ろ蹴りが追い討ちとして放たれた。
「きゅっ」
周囲の景色が色褪せて、脳内を色々な思考が駆け巡る。あっやばいこれ走馬灯だ死んだ。
「なっ」
恐怖で腰の力が抜けてそのまま糸の切れた人形の様に地面へ転がる。父の蹴りが頭上を通り抜けた。
「とぉりゃぁ!」
蹴りを放ったことで、一本で父を支える足へ私は足払いを放つ。
「へ?」
うん、ダメだこりゃ。
多分だけど重心が3000mぐらい地下にある。私の即席カポエラー風味キックじゃどうにもならない。高層タワマンでも立てる気かよ。誰か解体業者に電話して!! はやく!!
「うっきゃぁ!」
なんかもう、あまりの理不尽な状況に変なテンションへなってきた。姿勢がどうとかガン無視して無茶苦茶に地面を転げ回って、なんとか距離をとって立ち上がり逃げ出す。
「えぇーい!」
逃げる私を追う父の足音を背中に感じながら、眼前に迫る壁を蹴り三角跳びの要領で反転する。
「とぉりゃぁ!」
私へ迫っていた父へ向かって、回転の遠心力と相対速度を乗せた空中回し踵落とし、鷹穿ちを放つ!
「ふん!」
私の渾身の反撃に対して、父は即座に反応、捻り込む様に拳を突き出す。白刃流しだ! それを認識した瞬間、サーッと血の気が引く。お願いお願いお願い失敗しって!!
「げふぅ!」
私の鷹穿ちは起動が逸らされ空を切る。それと同時に父の無慈悲な右腕が脇腹へと突き刺さった。
普段からコミュ力の化け物で円満に会話を進める与一が、珍しく、思わずといった様子で声を荒げる。
対して、父は淡々と言葉を返した。
「与一さんの主張は分かった。その年でそれだけしっかりとした主張を考えられるのは立派だ」
「それなら!」
「だが主張を理解できたかどうかと、それに納得して受け入れるかはまた別の話だ」
「何が、何がダメだって言うんですか!」
「ダメな物はダメだ。どうしてもそれを曲げさせたいなら、我が家のルールに従ってもらう。奏音、着替えて道場に来るんだ」
父はそう言うと、その場を立ち去ってしまう。
「奏音……」
与一が心配そうな表情で私へ視線を送る。
「与一、ありがとう」
「でも……」
与一の表情に悔しさが滲む。
彼女はきっと、説得が失敗したと思っているんだろう。だけど、それは違う。彼女の理路整然とした言葉は父のロジックを破壊した。
「与一が変わりにしゃべってくれて、すごく勇気が出たよ。でも、全部の問題を与一に任せるわけにはいかない。与一が頑張ってくれた様に、今度は私が頑張る番だ」
私はニッと笑って、与一へ向かって軽く拳を突き出す。与一は少しだけ悩んでから、私の拳に拳を合わせた。
「わかった。頑張ってね」
風間流の道着へ着替えて、道場の襖を開ける。ここに来るのは、私が見放されて風間流を教えてもらえなくなって以来だ。
「来たか」
道場の中央には既に道場着に着替えた父が立っていた。もしかしたら、ここで殺されるかもしれない。
父の無表情な顔を見て、そんな考えが頭をよぎる。私は頭を振って恐怖を振り払って、道場に入った。
「奏音、私はまだ、お前から直接何も聞いていない。与一さんの言う様に、あのゲームが続けたいのか?」
私が道場の中央、父と向かい合う位置まで移動すると、彼が感情を感じさせない声で話しかけてきた。
「……はい。他の人から見たらたかがゲームって言われるかもしれないけど。私にとっては重要な事なんです」
「そうか、覚悟があるならいい」
父はそう言うと、道場の隅で心配そうに私たちを見つめる与一の方へ視線を向けて語りかけた。
「時代錯誤で古臭いと思われるだろうが、風間家には様々なルールがある。その1つが、当主の決定を覆す方法だ」
「それは……」
「簡単だ、試合で勝てばいい」
「そんな、野蛮な!」
「そうだな、なんの合理性も無い、旧時代の野蛮なルールだ。だが、どれだけ正しい倫理も、合理も、力が伴わなければ意味が無い。風間家の繁栄を成しえたのはそんな時代の功績があったからだ」
そこまで喋って、父は私の方へ向き直って構えを取る。大地を噛み締める様に軽く腰を落とし、私へ対して半身になる。両手は拳を作らず、総合格闘技の様に肩を落としながら僅かに曲げた。
「(本当に風間家の伝統に則って戦うなら、この試合で負った怪我や、最悪命を落としても、それは合意の元として罪に問われない。現代においてそんなことが可能かは分からないけど……)」
「行くぞ」
この試合に、合図なんてない。
父が会話をしている間も、私はずっと父の隙を狙っていた。だけど、結局そんな物は見つけられなくて、戦いの火蓋を切ったのは彼だった。
「かはっ」
一瞬の沈黙の後、猛烈なスピードで父が踏み込む。圧倒的なAGIを持つアニーが見ている様なスローモーションな世界とは違う、現実の無慈悲な速さだ。たった一息で2メートルは空いていた距離が無に帰り、丸太の様な腕が私の腹に深々と突き刺さる。
顔面と腹の両方を同時に攻撃されて、咄嗟に顔面を防いで腹への攻撃を防ぐことができなかった。
軽く体が浮いて後へ吹き飛ばされる。
「ふんっ」
地面に片足が付くが付かないかぐらいのタイミングで、父の後ろ蹴りが追い討ちとして放たれた。
「きゅっ」
周囲の景色が色褪せて、脳内を色々な思考が駆け巡る。あっやばいこれ走馬灯だ死んだ。
「なっ」
恐怖で腰の力が抜けてそのまま糸の切れた人形の様に地面へ転がる。父の蹴りが頭上を通り抜けた。
「とぉりゃぁ!」
蹴りを放ったことで、一本で父を支える足へ私は足払いを放つ。
「へ?」
うん、ダメだこりゃ。
多分だけど重心が3000mぐらい地下にある。私の即席カポエラー風味キックじゃどうにもならない。高層タワマンでも立てる気かよ。誰か解体業者に電話して!! はやく!!
「うっきゃぁ!」
なんかもう、あまりの理不尽な状況に変なテンションへなってきた。姿勢がどうとかガン無視して無茶苦茶に地面を転げ回って、なんとか距離をとって立ち上がり逃げ出す。
「えぇーい!」
逃げる私を追う父の足音を背中に感じながら、眼前に迫る壁を蹴り三角跳びの要領で反転する。
「とぉりゃぁ!」
私へ迫っていた父へ向かって、回転の遠心力と相対速度を乗せた空中回し踵落とし、鷹穿ちを放つ!
「ふん!」
私の渾身の反撃に対して、父は即座に反応、捻り込む様に拳を突き出す。白刃流しだ! それを認識した瞬間、サーッと血の気が引く。お願いお願いお願い失敗しって!!
「げふぅ!」
私の鷹穿ちは起動が逸らされ空を切る。それと同時に父の無慈悲な右腕が脇腹へと突き刺さった。
0
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
なんだこのギルドネカマしかいない! Ψギルドごと異世界に行ったら実は全員ネカマだったΨ
剣之あつおみ
ファンタジー
VR専用MMORPG〖ソーサラーマスターオンライン〗、略して〖SMO〗。
日本で制作された世界初の音声認識変換マイク付きフルフェイスマスク型インターフェイスを装着し、没入感溢れるVRMMOアクションが楽しめると話題を呼んだゲームである。
200名を超える人気声優を起用して、自分の声をAIで自動変換しボイスチャットが出来る画期的な機能を搭載。サービス開始当初、国内外問わず同時接続400万名以上を突破し社会現象にもなったゲーム。
このゲームをこよなく楽しんでいた女子高生「シノブ」はサービス終了日に一緒にプレイしていたギルドメンバーとゲームそっくりな異世界へと飛ばされる。
彼女の所属していたギルド〖深紅の薔薇〗はリアル女性限定と言う規約を掲げていた。
異世界に飛ばされた彼女は仲間達と再会するが、そこで衝撃の事実に直面する。
女性だと思っていたギルドメンバー達は実は全員男性だった。
リアルでの性別は男性、ゲーム内で自身をリアル女性を語るプレイスタイル・・・
続に言う「ネカマ」だったのだ。
彼女と5人のネカマ達はゲームの知識を活かし、現実世界に戻る為に奮闘する物語である。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜
ネリムZ
SF
パズルゲームしかやった事の無かった主人公は妹に誘われてフルダイブ型VRゲームをやる事になった。
理由としては、如何なる方法を持ちようとも触れる事の出来なかった動物達に触れられるからだ。
自分の体質で動物に触れる事を諦めていた主人公はVRの現実のような感覚に嬉しさを覚える。
1話読む必要無いかもです。
個性豊かな友達や家族達とVRの世界を堪能する物語〜〜なお、主人公は多重人格の模様〜〜
アルゲートオンライン~侍が参る異世界道中~
桐野 紡
SF
高校生の稜威高志(いづ・たかし)は、気づくとプレイしていたVRMMO、アルゲートオンラインに似た世界に飛ばされていた。彼が遊んでいたジョブ、侍の格好をして。異世界で生きることに決めた主人公が家族になったエルフ、ペットの狼、女剣士と冒険したり、現代知識による発明をしながら、異世界を放浪するお話です。
落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍
きこうダきこう
ファンタジー
王国騎士団の一兵卒だった主人公が魔王軍との戦闘中味方の誰かに殺され命を落とした後、神の使いより死ぬべき運命ではなかったと言い渡され、魂は死んだ時のままで再び同じ人生を歩んでいく事となった。
そのため幼少時代トロルによって家族を殺され、村を滅ぼされた出来事を阻止しようと思い、兄貴分的存在の人と父親に話し賢者と呼ばれる人やエルフ族らの助けを借りて襲撃を阻止した。
その後前世と同じく王国騎士団へ入団するための養成学校に入学するも、入学前に賢者の下で修行していた際に知った兄貴分的存在の人と幼馴染みに起こる死の運命を回避させようとしたり、前世で自分を殺したと思われる人物と遭遇したり、自身の運命の人と出会ったりして学校生活を堪能したのだった。
そして無事学校を卒業して騎士団に入団したが、その後も自身の運命を左右させる出来事に遭遇するもそれらを無事に乗り越え、再び魔王軍との決戦の場に赴いたのだった······。
40代(男)アバターで無双する少女
かのよ
SF
同年代の子達と放課後寄り道するよりも、VRMMOでおじさんになってるほうが幸せだ。オープンフィールドの狩りゲーで大剣使いをしているガルドこと佐野みずき。女子高生であることを完璧に隠しながら、親父どもが集まるギルドにいい感じに馴染んでいる…! ひたすらクエストをやりこみ、酒場で仲間と談笑しているおじさんの皮を被った17歳。しかし平穏だった非日常を、唐突なギルドのオフ会とログアウト不可能の文字が破壊する!
序盤はVRMMO+日常系、中盤から転移系の物語に移行していきます。
表紙は茶二三様から頂きました!ありがとうございます!!
校正を加え同人誌版を出しています!
https://00kanoyooo.booth.pm/
こちらにて通販しています。
更新は定期日程で毎月4回行います(2・9・17・23日です)
小説家になろうにも「40代(男)アバターで無双するJK」という名前で投稿しています。
この作品はフィクションです。作中における犯罪行為を真似すると犯罪になります。それらを認可・奨励するものではありません。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる