28 / 139
万年寒鉄を求めて
専用装備を作ろうとするタイプのJK
しおりを挟む
NPCの女性に案内されて店内の最奥にある扉へ案内される。扉の向こうには金髪丸メガネで白衣を纏った女性が木製のテーブル越しに座っていた。
「やあ、待っていたよヨイニ君! それと……君は"暴君"のアニーちゃんかな。まずはまずは座ってよ」
白衣の女性に促されるまま、椅子に腰を下ろす。
「初めまして、私はニーズズ、鍛治クラン"ウェーランド"のクランマスターをやらせてもらっているよ」
「ニーズズさんが全プレイヤー最高の鍛治職人なの?」
「いいや、私もそれなりにはできるけど……仲介係だよ」
「私の専用装備を作って欲しいんだけど、お願いできる?」
「ああ、アニーちゃんはカオスルーラーだからね。制限も多いだろうから専用装備はあった方が良いよね」
ニーズズさんが私の装備を上から下まで見る。
机に両肘をついて祈る様に両手を組んだ。
「だけど、全プレイヤー最高の鍛治士、ヴォルドは"暴君"の依頼は受けないと言っている」
「それはお金じゃ解決できない問題?」
「君はそのお金を何処で何をして稼いでいるんだい?」
「8割ぐらいはPKだね」
「ならその資金の少なからずは、本来、私達のお金になるはずだった訳だ」
確かに私は戦闘プレイヤーだけじゃなくて、採集系のプレイヤーも狩っている。
まあ戦闘プレイヤーを狩るのだって遠縁には生産系プレイヤーの資金を奪っている事にはなるんだけれど。
「つまり……本来は私達のお金になるはずだったお金を渡されて装備を作ってくれって言われても嫌だってこと?」
私の質問にニーズズさんは頷いた。
「そうだね。専用装備を用意すればPKを止めるなんてことは無いんだろ?」
「もちろん」
「ヴォルドの専用装備を手に入れた"暴君"は今以上に暴れ回って、更に被害は拡大するだろ? 奪われたお金で装備を作って、更に奪われる様になるなんて……割に合わなさすぎる。いち職人として見れば面白そうな依頼だけどね」
うーん、これは困った。
専用装備は欲しいけどPKを止める訳にはいかない。
「どーーーしてもダメ?」
「いいや? アニーちゃんとって幸運な事に、条件付きで依頼を受けても良いよ」
ニーズズさんが引き出しから地図を取り出すとテーブルへ広げた。
「これは?」
「ゴブリン鉱山は知っているよね?」
「うん、通ってる。ダンジョンの中には入った事ないけど」
ゴブリン鉱山は現時点で行けるダンジョンの中で最高難易度と目されている。そのダンジョンを攻略したプレイヤーがここ最近の私の獲物だ。
「……実はダンジョン内に隠し通路が見つかってね。そこから山頂へ向かう道に抜けられる様なんだ」
「ふーん?」
「この道の先に強力なエネミーが居て、まだ誰も先を知らないんだ」
「それが鍛治クランと関係があるの?」
「まぁ確証がある訳じゃないんだけどね? 一般的に閉ざされた山頂にあるものといえば?」
「お宝?」
「そうだね、特に伝説の鉱石とか」
「じゃあそこのお宝を持って帰ってくれば依頼を受けてくれるの?」
「そうだね、それと今後はウェーランドのクランメンバーを狩場で見つけても多少の配慮をもらえるとありがたいな」
「うーん、配慮なら良いよ?」
「よし、じゃあ交渉成立だ」
ニーズズさんと握手を交わす。
「それで、どんな装備が欲しいのかな?」
ニーズズさんが地図をひっくり返して瞳を輝かせる。何だかんだ言って、彼女個人は依頼に乗り気なのだろう。
「私の体型でもちゃんと装備できるやつ!」
「うん、そりゃそうだよね。素材は何が良いとかある?」
「腕は刃物と殴り合える強度は欲しいから金属かな? 殴る時には腕は重い方が良いんだけど、格闘がメインだと腕の振りが遅いのは嫌なんだよねー」
「アニーちゃんのダメージソースって殴りとパイルバンカー、どっちの方が高いの?」
「パイルかなー」
「それなら腕は振りの速さ重視の装甲厚が薄いタイプのガントレットの方がいいんじゃないかな」
ニーズズさんが裏返した地図にメモを取る。
「耐性は何を優先したい?」
「たいせー?」
「斬撃に強いとか、打撃に強いとか、刺突に強いとか、火に強いとか」
「うーん難しいー」
私が頭を抱えるとニーズズさんが追加で判断材料を投下してくれる。
「斬撃と刺突はダメージ効率が高めだから厚く守った方が良いよ。フォートシュロフでは刺突と打撃を厚くするのが流行っているね」
「なんで刺突と打撃なの?」
「なんでだろうねー、どっかにしばき上げパンチングパイルバンカーをしてくる有名PKプレイヤーでもいるのかもねー」
へーそんなプレイヤーもいるんだねー。
何となく次のトレンドは雷耐性な気がするなー。
「じゃー耐性は任せるよ。あっでも属性耐性は炎を厚めにして欲しいな」
「うんうん、了解。デザインはどういうのが良いの?」
「尻尾と翼も装備できるデザインで、トゲトゲと流線型を組み合わせた感じが良い!」
「ベースカラーは?」
「迷彩効果のある黒かなー」
「ステータス補正は何を優先する?」
「AGIとSTRとINT」
「うんうん、なるほどねー」
ニーズズが書き込んでいた地図がそろそろ手狭になってきた所で、ヨイニが大きく咳払いをした。
「ウォホン!」
その声にハッとした様子でニーズズが顔を上げる。
「えっと、じゃあ続きは依頼を達成してからだね」
「確かに、今してもしょうがない話だったね」
「それじゃ、依頼の方よろしく!」
「やあ、待っていたよヨイニ君! それと……君は"暴君"のアニーちゃんかな。まずはまずは座ってよ」
白衣の女性に促されるまま、椅子に腰を下ろす。
「初めまして、私はニーズズ、鍛治クラン"ウェーランド"のクランマスターをやらせてもらっているよ」
「ニーズズさんが全プレイヤー最高の鍛治職人なの?」
「いいや、私もそれなりにはできるけど……仲介係だよ」
「私の専用装備を作って欲しいんだけど、お願いできる?」
「ああ、アニーちゃんはカオスルーラーだからね。制限も多いだろうから専用装備はあった方が良いよね」
ニーズズさんが私の装備を上から下まで見る。
机に両肘をついて祈る様に両手を組んだ。
「だけど、全プレイヤー最高の鍛治士、ヴォルドは"暴君"の依頼は受けないと言っている」
「それはお金じゃ解決できない問題?」
「君はそのお金を何処で何をして稼いでいるんだい?」
「8割ぐらいはPKだね」
「ならその資金の少なからずは、本来、私達のお金になるはずだった訳だ」
確かに私は戦闘プレイヤーだけじゃなくて、採集系のプレイヤーも狩っている。
まあ戦闘プレイヤーを狩るのだって遠縁には生産系プレイヤーの資金を奪っている事にはなるんだけれど。
「つまり……本来は私達のお金になるはずだったお金を渡されて装備を作ってくれって言われても嫌だってこと?」
私の質問にニーズズさんは頷いた。
「そうだね。専用装備を用意すればPKを止めるなんてことは無いんだろ?」
「もちろん」
「ヴォルドの専用装備を手に入れた"暴君"は今以上に暴れ回って、更に被害は拡大するだろ? 奪われたお金で装備を作って、更に奪われる様になるなんて……割に合わなさすぎる。いち職人として見れば面白そうな依頼だけどね」
うーん、これは困った。
専用装備は欲しいけどPKを止める訳にはいかない。
「どーーーしてもダメ?」
「いいや? アニーちゃんとって幸運な事に、条件付きで依頼を受けても良いよ」
ニーズズさんが引き出しから地図を取り出すとテーブルへ広げた。
「これは?」
「ゴブリン鉱山は知っているよね?」
「うん、通ってる。ダンジョンの中には入った事ないけど」
ゴブリン鉱山は現時点で行けるダンジョンの中で最高難易度と目されている。そのダンジョンを攻略したプレイヤーがここ最近の私の獲物だ。
「……実はダンジョン内に隠し通路が見つかってね。そこから山頂へ向かう道に抜けられる様なんだ」
「ふーん?」
「この道の先に強力なエネミーが居て、まだ誰も先を知らないんだ」
「それが鍛治クランと関係があるの?」
「まぁ確証がある訳じゃないんだけどね? 一般的に閉ざされた山頂にあるものといえば?」
「お宝?」
「そうだね、特に伝説の鉱石とか」
「じゃあそこのお宝を持って帰ってくれば依頼を受けてくれるの?」
「そうだね、それと今後はウェーランドのクランメンバーを狩場で見つけても多少の配慮をもらえるとありがたいな」
「うーん、配慮なら良いよ?」
「よし、じゃあ交渉成立だ」
ニーズズさんと握手を交わす。
「それで、どんな装備が欲しいのかな?」
ニーズズさんが地図をひっくり返して瞳を輝かせる。何だかんだ言って、彼女個人は依頼に乗り気なのだろう。
「私の体型でもちゃんと装備できるやつ!」
「うん、そりゃそうだよね。素材は何が良いとかある?」
「腕は刃物と殴り合える強度は欲しいから金属かな? 殴る時には腕は重い方が良いんだけど、格闘がメインだと腕の振りが遅いのは嫌なんだよねー」
「アニーちゃんのダメージソースって殴りとパイルバンカー、どっちの方が高いの?」
「パイルかなー」
「それなら腕は振りの速さ重視の装甲厚が薄いタイプのガントレットの方がいいんじゃないかな」
ニーズズさんが裏返した地図にメモを取る。
「耐性は何を優先したい?」
「たいせー?」
「斬撃に強いとか、打撃に強いとか、刺突に強いとか、火に強いとか」
「うーん難しいー」
私が頭を抱えるとニーズズさんが追加で判断材料を投下してくれる。
「斬撃と刺突はダメージ効率が高めだから厚く守った方が良いよ。フォートシュロフでは刺突と打撃を厚くするのが流行っているね」
「なんで刺突と打撃なの?」
「なんでだろうねー、どっかにしばき上げパンチングパイルバンカーをしてくる有名PKプレイヤーでもいるのかもねー」
へーそんなプレイヤーもいるんだねー。
何となく次のトレンドは雷耐性な気がするなー。
「じゃー耐性は任せるよ。あっでも属性耐性は炎を厚めにして欲しいな」
「うんうん、了解。デザインはどういうのが良いの?」
「尻尾と翼も装備できるデザインで、トゲトゲと流線型を組み合わせた感じが良い!」
「ベースカラーは?」
「迷彩効果のある黒かなー」
「ステータス補正は何を優先する?」
「AGIとSTRとINT」
「うんうん、なるほどねー」
ニーズズが書き込んでいた地図がそろそろ手狭になってきた所で、ヨイニが大きく咳払いをした。
「ウォホン!」
その声にハッとした様子でニーズズが顔を上げる。
「えっと、じゃあ続きは依頼を達成してからだね」
「確かに、今してもしょうがない話だったね」
「それじゃ、依頼の方よろしく!」
11
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
なんだこのギルドネカマしかいない! Ψギルドごと異世界に行ったら実は全員ネカマだったΨ
剣之あつおみ
ファンタジー
VR専用MMORPG〖ソーサラーマスターオンライン〗、略して〖SMO〗。
日本で制作された世界初の音声認識変換マイク付きフルフェイスマスク型インターフェイスを装着し、没入感溢れるVRMMOアクションが楽しめると話題を呼んだゲームである。
200名を超える人気声優を起用して、自分の声をAIで自動変換しボイスチャットが出来る画期的な機能を搭載。サービス開始当初、国内外問わず同時接続400万名以上を突破し社会現象にもなったゲーム。
このゲームをこよなく楽しんでいた女子高生「シノブ」はサービス終了日に一緒にプレイしていたギルドメンバーとゲームそっくりな異世界へと飛ばされる。
彼女の所属していたギルド〖深紅の薔薇〗はリアル女性限定と言う規約を掲げていた。
異世界に飛ばされた彼女は仲間達と再会するが、そこで衝撃の事実に直面する。
女性だと思っていたギルドメンバー達は実は全員男性だった。
リアルでの性別は男性、ゲーム内で自身をリアル女性を語るプレイスタイル・・・
続に言う「ネカマ」だったのだ。
彼女と5人のネカマ達はゲームの知識を活かし、現実世界に戻る為に奮闘する物語である。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン
LW
ファンタジー
ゲーム感覚で世界を滅ぼして回ろう!
最強ゲーマー女子高生による終末系百合ライトノベル。
「今すぐ自殺しなければ! 何でも構わない。今ここで私が最速で死ぬ方法はどれだ?」
自殺癖持ちのプロゲーマー、空水彼方には信条がある。
それは決着したゲームを最速で完全に清算すること。クリアした世界を即滅ぼして即絶命する。
しかも現実とゲームの区別が付いてない戦闘民族系ゲーマーだ。私より強いやつに会いに行く、誰でも殺す、どこでも滅ぼす、いつでも死ぬ。
最強ゲーマー少女という災厄が異世界を巡る旅が始まる。
表紙イラスト:えすけー様(@sk_kun)
表紙ロゴ:コタツラボ様(@musical_0327)
#ゲーマゲ
不遇職「罠師」は器用さMAXで無双する
ゆる弥
SF
後輩に勧められて買ってみたVRMMOゲーム、UnknownWorldOnline(通称UWO(ウォー))で通常では選ぶことができないレア職を狙って職業選択でランダムを選択する。
すると、不遇職とされる「罠師」になってしまう。
しかし、探索中足を滑らせて落ちた谷底で宝を発見する。
その宝は器用さをMAXにするバングルであった。
器用さに左右される罠作成を成功させまくってあらゆる罠を作り、モンスターを狩りまくって無双する。
やがて伝説のプレイヤーになる。
ツインクラス・オンライン
秋月愁
SF
兄、愁の書いた、VRMMO系の長編です。私、妹ルゼが編集してブレるとよくないなので、ほぼそのまま書き出します。兄は繊細なので、感想、ご指摘はお手柔らかにお願いします。30話程で終わる予定です。(許可は得ています)どうかよろしくお願いします。
ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜
コアラ太
SF
世界会議で、MR(複合現実)技術を使って、人間が住める惑星を開発する企画が立つ。それに歓喜した頭のおかしい研究・開発者達がこぞって参加し、『Neo Earth Terraforming』という1つのゲームを作り上げた。空気や土壌を最適化する機体を送り込み、ファンタジー世界を投影したRPGをプレイすることにより、自動で浄化してくれる。
世界が待望したゲームを釣り好き男がプレイする。「新種の魚がいると聞いて。」
【火木土】更新。たまに日曜日に追加更新します。
『カクヨム』にも重複投稿しています。
【完結済み】VRゲームで遊んでいたら、謎の微笑み冒険者に捕獲されましたがイロイロおかしいです。<長編>
BBやっこ
SF
会社に、VRゲーム休があってゲームをしていた私。
自身の店でエンチャント付き魔道具の売れ行きもなかなか好調で。なかなか充実しているゲームライフ。
招待イベで魔術士として、冒険者の仕事を受けていた。『ミッションは王族を守れ』
同僚も招待され、大規模なイベントとなっていた。ランダムで配置された場所で敵を倒すお仕事だったのだが?
電脳神、カプセル。精神を異世界へ送るって映画の話ですか?!
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる