上 下
89 / 139
剛輪禍工業革命-2:工業地帯奪還

考えるより先に手が出るタイプのJK

しおりを挟む
*「報告であります!」*

 皆ですっごい簡易的な拠点を作ったすぐ後"兵士"部隊のプレイヤーから連絡が入った。

*「敵勢エネミーの大まかな配置と建造物の配置をマッピングしました!」*

*「よろしい、被害報告をせよー」*

*「全滅であります!」*

*「えっ」*

 じゃあお前は誰なんだ、と思ってメンバーの状態をシステム画面から確認する。普通に半分ぐらい生き残ってるじゃん。

 そういえば軍隊だと半数が死亡したら事実上の全滅だみたいなのをどこかで読んだ気がするからそう言う基準なのかな。

*「入り口に簡単な防衛陣地があるから、再編成後に周囲を警戒せよー」*

*「イエス! マム!」*

「さて、そろそろ行こうか」

 "兵士"部隊は面倒で退屈な事も喜んでやってくれるから本当に便利だ。だけど純粋戦力としてみると"レッドバロン"や"シュクレ教"には敵わない。





 
「うん、情報通りだね」

 雲の切れ間から体表の光がかすかかに地面を照らす中、私たちは工業地帯へと足を踏み入れる。錆びついた鉄骨が剥き出しになった建物の間に、彷徨う人型の鎧"リビングアーマー"と金属質な甲殻を携えたさそりの様なモンスター"カリブスコープ"が鎮座ちんざしていた。

「さぁ始めようか」

 それまでただのオブジェの様に佇んでいたモンスター達が、私たちの接近に反応して動き始める。

「暴君、作戦は?」

 レッドバロンの1人が私に話しかけてくる。

「シュクレ教は近づかれたら逃げて、レッドバロンはシュクレ教に近づくモンスターはなるべく排除して上げて」

「俺たちは盾になれってことか?」

「いや、ダメそうなら普通に見捨てて良い。シュクレ教の人も助けてもらえる事を前提の立ち回りはしないでねー」

 日常的にPKをやっているレッドバロンはそもそもレベルやPSプレイヤースキルが高い上に、今ここにいるのはその中でも上位のプレイヤー達だ。シュクレ教の盾に使うには勿体なさすぎる。

「陣形とかは良いのか?」

「"兵士"の話しだと遠距離から範囲攻撃が飛んでくるらしいから、方陣はもう無意味だよ。あとはマップ見ながら見敵必殺サーチ&デストロイして!」

 私の掛け声に、各々が答えた。

「しゃぁ! やっと戦えるぜ!」

「やるぞー!」

「汚物は消毒じゃー!」

 私たちが近づくと、モンスター達の関節が赤く光り、金属同士が擦れ合う様な音と共に動き出す。

「「セット・リボルビングパイル」」

 発声によってスキルが発動し、トンファー型の釘打ち機が両腕へ装着された。そのまま勢いよく駆け出す。

「キヒヒヒ!」

 杖を構えようとするとリビングメイルへ突撃し、勢いそのままに右腕を叩き込む。インパクトのタイミングに合わせてトリガーを引き、魔力で形成されたパイルを叩き込んだ。

 ガシャン! 金属が砕けると音と共に、リビングメイルが膝をつく。手には反作用による衝撃の感触が伝わってくる。

「っと!」

 その黒光りする体から金属の擦れるような音を発しながらカリブスコープが私の方へ向かってくる。

 8本の足をガシャガシャと流れるように動かし一瞬で眼前まで迫ると、その尻尾が風を切り裂いて突き出された。

「えぇえい!」

 目で追う事すらできない高速の一撃、だけど私は考えるより先に手が出るタイプだ。ほぼ無意識の領域でその一閃をガントレットで弾く。

 そのまま一歩前へ、左手の釘打ち機パイルバンカーをカリブスコープの顔面へ押し当てて、トリガーを引く。

「ギィイイ!」

 カリブスコープが断末魔のような音を発し、その場へ崩れ落ちる。チラリと周囲へ視線を向けると、皆も苦戦しつつも順調にモンスターを排除して回っていた。この調子なら、このエリアは解放できるだろう。

 妙に連携をとって戦ってきたり、逃げ出そうとする個体がいたりと若干の違和感はありつつも、次々とモンスターを倒していく。

「"暴君"このドロップが何だか分かるか?」

 戦闘が落ち着いてきた頃、レッドバロンの1人が私に話しかけてきた。彼の手には、水晶みたいな石が握られていた。

 そのアイテムには見覚えがある。さっきから戦っているこのエリアのモンスターを倒すと度々ドロップしているやつだ。

「わかんない、私もそれ気になってるんだよねー」

 改めて水晶を見ながら、ふと気になった事を口にしてみた。

「そういえばこれ、私達が街へきた時に乗ってた蒸気機関車の制御システムにも似たようなのがあったんだよね」

「ああ、お前がぶっ壊して機関車が制御不能になった挙句、街に突っ込んで盛大に破壊した時の」

「うるさい! ていうかそっちだって面白がってたじゃん! 同じクランなんだから同罪だよ!!」

「横暴だなぁ。さすが暴君だ」

「ガルルルル」

 私が半眼で睨みながら威嚇すると、レッドバロンの男は半笑いで両手を前にして私を制する。

 なんか私、動物扱いされてない?

「まぁまぁ、落ち着けって。じゃあとりあえずこれは、あの時の機関車みたいな魔力で動く機械を作るのに使う素材ってことか?」

「あー、その可能性はあるかもね。工場を獲得したら色々作れるみたいだし、その時に使うのかも」

「じゃあまぁ、一応集めておくか」

「そうだねー」
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんだこのギルドネカマしかいない! Ψギルドごと異世界に行ったら実は全員ネカマだったΨ

剣之あつおみ
ファンタジー
VR専用MMORPG〖ソーサラーマスターオンライン〗、略して〖SMO〗。 日本で制作された世界初の音声認識変換マイク付きフルフェイスマスク型インターフェイスを装着し、没入感溢れるVRMMOアクションが楽しめると話題を呼んだゲームである。 200名を超える人気声優を起用して、自分の声をAIで自動変換しボイスチャットが出来る画期的な機能を搭載。サービス開始当初、国内外問わず同時接続400万名以上を突破し社会現象にもなったゲーム。 このゲームをこよなく楽しんでいた女子高生「シノブ」はサービス終了日に一緒にプレイしていたギルドメンバーとゲームそっくりな異世界へと飛ばされる。 彼女の所属していたギルド〖深紅の薔薇〗はリアル女性限定と言う規約を掲げていた。 異世界に飛ばされた彼女は仲間達と再会するが、そこで衝撃の事実に直面する。 女性だと思っていたギルドメンバー達は実は全員男性だった。 リアルでの性別は男性、ゲーム内で自身をリアル女性を語るプレイスタイル・・・ 続に言う「ネカマ」だったのだ。 彼女と5人のネカマ達はゲームの知識を活かし、現実世界に戻る為に奮闘する物語である。

超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ
SF
 パズルゲームしかやった事の無かった主人公は妹に誘われてフルダイブ型VRゲームをやる事になった。  理由としては、如何なる方法を持ちようとも触れる事の出来なかった動物達に触れられるからだ。  自分の体質で動物に触れる事を諦めていた主人公はVRの現実のような感覚に嬉しさを覚える。  1話読む必要無いかもです。  個性豊かな友達や家族達とVRの世界を堪能する物語〜〜なお、主人公は多重人格の模様〜〜

現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ の内容を一部変更し修正加筆したものになります。  宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。  そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。  ※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※  ※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。  ※男主人公バージョンはカクヨムにあります

アルゲートオンライン~侍が参る異世界道中~

桐野 紡
SF
高校生の稜威高志(いづ・たかし)は、気づくとプレイしていたVRMMO、アルゲートオンラインに似た世界に飛ばされていた。彼が遊んでいたジョブ、侍の格好をして。異世界で生きることに決めた主人公が家族になったエルフ、ペットの狼、女剣士と冒険したり、現代知識による発明をしながら、異世界を放浪するお話です。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

自由にやっていくVRMMO

nanaさん
SF
これは最新VRMMOの Fantastic Frontierをプレイし始めたもうこの後の人生遊ぶび放題になった主人公こと 凛尊 有紗もといAlice のお話 *作者の自己満足で書いてます なので更新は不定期です 内容も誤字だらけだったり 色々と悲惨な内容になってたりします それでもよろしい方はどうぞ

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

処理中です...