上 下
48 / 139
幻夢境街戦略バトル

イベントが開催されるタイプのJK

しおりを挟む
「あ、アニーさん、何をやったんですか?」

 喫茶dremerでシュクレがクランメンバー一覧を表示して戦慄せんりつしている。

「え? ちょっと闘技場とうぎじょうでチャンピオンになって演説えんぜつしただけだよ?」

「そうですか……」

 イベントを目前にして、クラン"メメントモリ"は300名以上のメンバーを集めることに成功した。

「これ、統制とか取れるんですか?」

「無理じゃない?」

 だって審査とかしてないし。クランへの加入申請が来たら脳死で全部許可しただけだもん。

「ど、どんな人達が集まってるんですか?」

「んー、イベント前だし一応アンケートとってみる?」

 クランにはクラン内で自由に会話の可能なクランチャット機能がある。それを使ってアンケートを投げてみた。

「クランに入った理由をアンケートするよー! まず……兎に角、私をPKしたいって言ってたひとー!」

「「「はーい」」」

 うん、大体100名ぐらい。

「シュクレちゃんに詠唱を作って欲しい、もしくは詠唱の真髄しんずいを学びたいその為なら何でもしますっていう魔法使い系の廃人勢なひとー!」

「「「「はぁーい!!」」」」

 こっちは50名ぐらい。

「私の演説を聞いてつまりPKクランだなって解釈した脳が殺人衝動さつじんしょうどうに汚染されてる異常者いじょうしゃなひとー!」

「「「えっ違うの???」」」

 これは大体50名かな。日本は本当に業と闇の深い国だね。これで世界一治安が良いんだから狂気だよ。
 でも大好きだな。

「対人戦に魂を捧げた戦闘狂バトルマニアのひとー!」

「「「おうっ!」」」

 概ね25人って感じだね。
 因みにこの中にはこの間のゴングマン? ゴリラマン? って人も入っている。

「その他のひとー!」

「少佐どのー!」

「カオスルーラー希望の星!」

「大隊指揮官どのー!」

 と……演説以降、なんか良く分からないけど私に命令されたい特殊性癖の人たちが25名ぐらい。
 これとは別に、イベントに全く興味がなくってそもそも今日ログインしてない人も割といる。

「まもなく、イベントが始まります。イベント参加中は思考加速により現実世界と体感時間が変化します。イベントに参加しますか?」

 そうこうしているとイベント開始時間となった。参加表明をしているクランのメンバー全員にアナウンスがされる。
 選択ボタンを押すまでちょっとだけ時間がった。

 ヨイニへフレンドチャットを送る。

「もしもし、ヨイニ」

「よう、アニー。どうしたんだ?」

 ヨイニにはまだ告白の返事ができていない。でもあまり待たせるのも彼女に悪いし……近々、答えを出さないとね。

「……イベント、楽しもうね!」

「ああ、アニーもな!」

 ヨイニとのチャットを終えて、アナウンスの選択肢にYESと答える。







 一瞬の暗転の後、視界が一気に開けた。
 目の前に広がるのは、緑豊かな草原だ。細かく揺れる草の葉が、風の流れを可視化している。
 
「はぁー草原のど真ん中かぁー」

 どこまでも広がる……て程では無い、そこそこな平原のど真ん中に私たちは転移した。

「えっと、この天使像を守るんですよね?」

 シュクレちゃんが視線を向けた先には、純白の大理石から掘り出された様な天使像が鎮座していた。
 優しい顔に、大きく広がった翼は力強さを感じさせる。その堂々とした姿勢はまるで、平原を守る守護神の様だ。

 実際の所、この天使像が何かをしてくれることは一切なくて、なんなら私たちが守護しゅごらねばならないんだけど。

「そうだねー」

 このイベントの主目的は、特定のモンスターを討伐してポイントを稼ぐことだ。だけどこの天使像が破壊されると、破壊したクランにポイントの半分を奪われてしまう。

「はーいじゃあまずは私をPKしたい皆ー! 試みるのは別に止めないんだけど、それはそれとしてクラン報酬は欲しくないー?」

「欲しいぞー!」

「お前をPKできるなら別にいらないぞー!」

「貰ってやっても良いぞー!」

 うん、まあ5~6割の人は欲しいらしい。
 こんなの統制取れるわけないね。

「よし分かった、クラン報酬を狙いに行きたい人はとりあえずMAP埋めとモンスターのリスポーン位置を調査してきてー! クラン報酬とかどうでも良いから私をPKしたい人は好きにしてよーし!」

「おらぁぁああ!」

 と、真後ろから声が響く、振り返ると、私を狙って槍を突き出したプレイヤーが突っ込んでくる。
 その場で両足の踵を起点にくるりと体の向きを180度変えて、外向きに拳を捻りながら突き出す。
 風間流裏秘技其乃六かざまりゅううらひぎそのろく白刃流しらはながし。

 槍の刃先に向かって拳を正面に合わせて突き出す。接触の瞬間、手首を捻って回転ベクトルを発声させ、刃の腹を弾く様にして刃先を紙一重でらす。

「キヒヒッ」

 突き出した腕はそのまま槍を持ったプレイヤーの頭をがっしりと掴む。

「まっ」

「パイルバンカー」

 ぐしゃり。
 また2時間後ね。

「イベント中、プレイヤーのリスポーンは5回までだから注意してねー」

 パッと手を離す、プレイヤーの死体が顔面からダメージエフェクトを噴き出しながら地面へ転がった。

「あっシュクレちゃん狙いの変態魔法使いの人々ー」

語弊ごへいがあるぞー!」

「ちっちげーし!」

「詠唱作ってくれー!」

 うん?
 ガチっぽい人は今の内に処理した方が良いかな?

「シュクレの指示で天使像を中心に拠点を作ってー。報酬はシュクレの詠唱を間近で聞ける事だよー、頑張ったら解説もしてくれるかもよー」

「ふえっ!? わっ解りました……」

「シュクレちゃん、設計図は持ってるよね?」

「はい、大丈夫です」

「じゃ、おねがいー」

「俺たちはどうすれば良いんだー!」

 殺戮衝動さつりくしょうどうに脳が汚染された悲しき獣の鳴き声が聞こえる。

「効率的にPKの場を用意するにはMAPが埋まらない事にはどうしようもなーい! 自由にしてよーし! MAP埋めたければ埋めてもよーし!」

「俺た(ry」

「戦闘狂の皆はこの場で待機! 獲物を求めてフィールドを徘徊してもよーし!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...