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幻夢境街戦略バトル

イベントが開催されるタイプのJK

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「あ、アニーさん、何をやったんですか?」

 喫茶dremerでシュクレがクランメンバー一覧を表示して戦慄せんりつしている。

「え? ちょっと闘技場とうぎじょうでチャンピオンになって演説えんぜつしただけだよ?」

「そうですか……」

 イベントを目前にして、クラン"メメントモリ"は300名以上のメンバーを集めることに成功した。

「これ、統制とか取れるんですか?」

「無理じゃない?」

 だって審査とかしてないし。クランへの加入申請が来たら脳死で全部許可しただけだもん。

「ど、どんな人達が集まってるんですか?」

「んー、イベント前だし一応アンケートとってみる?」

 クランにはクラン内で自由に会話の可能なクランチャット機能がある。それを使ってアンケートを投げてみた。

「クランに入った理由をアンケートするよー! まず……兎に角、私をPKしたいって言ってたひとー!」

「「「はーい」」」

 うん、大体100名ぐらい。

「シュクレちゃんに詠唱を作って欲しい、もしくは詠唱の真髄しんずいを学びたいその為なら何でもしますっていう魔法使い系の廃人勢なひとー!」

「「「「はぁーい!!」」」」

 こっちは50名ぐらい。

「私の演説を聞いてつまりPKクランだなって解釈した脳が殺人衝動さつじんしょうどうに汚染されてる異常者いじょうしゃなひとー!」

「「「えっ違うの???」」」

 これは大体50名かな。日本は本当に業と闇の深い国だね。これで世界一治安が良いんだから狂気だよ。
 でも大好きだな。

「対人戦に魂を捧げた戦闘狂バトルマニアのひとー!」

「「「おうっ!」」」

 概ね25人って感じだね。
 因みにこの中にはこの間のゴングマン? ゴリラマン? って人も入っている。

「その他のひとー!」

「少佐どのー!」

「カオスルーラー希望の星!」

「大隊指揮官どのー!」

 と……演説以降、なんか良く分からないけど私に命令されたい特殊性癖の人たちが25名ぐらい。
 これとは別に、イベントに全く興味がなくってそもそも今日ログインしてない人も割といる。

「まもなく、イベントが始まります。イベント参加中は思考加速により現実世界と体感時間が変化します。イベントに参加しますか?」

 そうこうしているとイベント開始時間となった。参加表明をしているクランのメンバー全員にアナウンスがされる。
 選択ボタンを押すまでちょっとだけ時間がった。

 ヨイニへフレンドチャットを送る。

「もしもし、ヨイニ」

「よう、アニー。どうしたんだ?」

 ヨイニにはまだ告白の返事ができていない。でもあまり待たせるのも彼女に悪いし……近々、答えを出さないとね。

「……イベント、楽しもうね!」

「ああ、アニーもな!」

 ヨイニとのチャットを終えて、アナウンスの選択肢にYESと答える。







 一瞬の暗転の後、視界が一気に開けた。
 目の前に広がるのは、緑豊かな草原だ。細かく揺れる草の葉が、風の流れを可視化している。
 
「はぁー草原のど真ん中かぁー」

 どこまでも広がる……て程では無い、そこそこな平原のど真ん中に私たちは転移した。

「えっと、この天使像を守るんですよね?」

 シュクレちゃんが視線を向けた先には、純白の大理石から掘り出された様な天使像が鎮座していた。
 優しい顔に、大きく広がった翼は力強さを感じさせる。その堂々とした姿勢はまるで、平原を守る守護神の様だ。

 実際の所、この天使像が何かをしてくれることは一切なくて、なんなら私たちが守護しゅごらねばならないんだけど。

「そうだねー」

 このイベントの主目的は、特定のモンスターを討伐してポイントを稼ぐことだ。だけどこの天使像が破壊されると、破壊したクランにポイントの半分を奪われてしまう。

「はーいじゃあまずは私をPKしたい皆ー! 試みるのは別に止めないんだけど、それはそれとしてクラン報酬は欲しくないー?」

「欲しいぞー!」

「お前をPKできるなら別にいらないぞー!」

「貰ってやっても良いぞー!」

 うん、まあ5~6割の人は欲しいらしい。
 こんなの統制取れるわけないね。

「よし分かった、クラン報酬を狙いに行きたい人はとりあえずMAP埋めとモンスターのリスポーン位置を調査してきてー! クラン報酬とかどうでも良いから私をPKしたい人は好きにしてよーし!」

「おらぁぁああ!」

 と、真後ろから声が響く、振り返ると、私を狙って槍を突き出したプレイヤーが突っ込んでくる。
 その場で両足の踵を起点にくるりと体の向きを180度変えて、外向きに拳を捻りながら突き出す。
 風間流裏秘技其乃六かざまりゅううらひぎそのろく白刃流しらはながし。

 槍の刃先に向かって拳を正面に合わせて突き出す。接触の瞬間、手首を捻って回転ベクトルを発声させ、刃の腹を弾く様にして刃先を紙一重でらす。

「キヒヒッ」

 突き出した腕はそのまま槍を持ったプレイヤーの頭をがっしりと掴む。

「まっ」

「パイルバンカー」

 ぐしゃり。
 また2時間後ね。

「イベント中、プレイヤーのリスポーンは5回までだから注意してねー」

 パッと手を離す、プレイヤーの死体が顔面からダメージエフェクトを噴き出しながら地面へ転がった。

「あっシュクレちゃん狙いの変態魔法使いの人々ー」

語弊ごへいがあるぞー!」

「ちっちげーし!」

「詠唱作ってくれー!」

 うん?
 ガチっぽい人は今の内に処理した方が良いかな?

「シュクレの指示で天使像を中心に拠点を作ってー。報酬はシュクレの詠唱を間近で聞ける事だよー、頑張ったら解説もしてくれるかもよー」

「ふえっ!? わっ解りました……」

「シュクレちゃん、設計図は持ってるよね?」

「はい、大丈夫です」

「じゃ、おねがいー」

「俺たちはどうすれば良いんだー!」

 殺戮衝動さつりくしょうどうに脳が汚染された悲しき獣の鳴き声が聞こえる。

「効率的にPKの場を用意するにはMAPが埋まらない事にはどうしようもなーい! 自由にしてよーし! MAP埋めたければ埋めてもよーし!」

「俺た(ry」

「戦闘狂の皆はこの場で待機! 獲物を求めてフィールドを徘徊してもよーし!」
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