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フォートシュウロフ防衛戦
唐突に戦略シミュレーションRPGを始めるタイプのJK
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「で、作戦はどうするよ?」
広間にいる13人のプレイヤーそれぞれの自己紹介が終わった所で、白武者姿のシマーズさんが切り出した。なんだかこの光景って円卓の騎士っぽいね。
みんな腕を組んで考え込むばかりで発言しない。よし、ここはせっかくだし先陣を切らせてもらおうかな。
「はいはーい! 全員で防壁を飛び越えてズダダダー! って特攻する!」
「全員が俺や"暴君"みたいにAGIに振ってるビルドならそれも有りだがなぁ」
「着地を狙われて頭から各個撃破される可能性は避けたいな」
私の意見はシマーズさんにやんわりと、ヨイニからは割と直接的に否定されてしまった。
シクシク。
「純粋に考えるなら、外側を前衛、内側を後衛の編成で矢みたいに総大将の所まで突撃か?」
「陣形を維持しながら移動となると、移動速度に欠けるのでは?」
「シュクレちゃんの範囲火力をどう扱うかを起点に考えてみる?」
「つまりシュクレちゃんをどうやって確実に敵陣深くまで運ぶかってことになるよな」
「あ、あの私、ボスとの戦闘ではあまりお役に立てないです……」
「あー、あの詠唱は乱戦状態の中で発動できる類の物じゃ無いもんな」
「道中をシュクレちゃんで突破しつつ、ボスの目の前に単体火力最強の暴君を送り出すのが一番じゃ無いか?」
「暴君の攻撃には回数制限があるし、可能ならボス戦までは温存したいよな」
「で、結局それをどうやって実現するのかって話になるんだが……」
それぞれが意見を出し合って行く。
なんか皆むずかしー話してるなー。
「アニーはどう思う?」
そんな中、ふとヨイニが私に話を振った。
「むずかしーはなしだなーって思う?」
私の回答に、シマーズさんが険しくなっていた表情をちょっと緩めた。
「まあ、人には得手不得手があるもんだ」
続いて、他のメンバーも口を開く。
「戦闘では期待してるぜ暴君!」
「今のアタシら、仲間だもんね!」
シマーズの言葉で場の空気が少し緩む。
そんな中、ヨイニが再び私に声をかける。
「……よし分かった。状況設定をしよう」
「状況設定?」
「アニーは今、戦略シミュレーションRPGをしている。敵の戦力が外のゴブリンで、目標は総大将の討伐、戦力は俺たち13人だ。アニーならこのゲームをどうやって攻略する?」
「おー、ちょっと考えてみるね」
ヨイニの言葉で、私の中で何かのスイッチの切り替わる音が聞こえた。怪訝そうに彼と私をみる周囲を無視して、思考を加速させる。
「……よし、整いました」
「聞かせてくれ」
「まず、この場で現実での職業が軍師の人はいる?」
私の質問に答える人はいない。
まぁ、そうだよね。
「であるならば前提として、この場で私達が頭を捻って作戦の良し悪しを考えた所でそれは素人の憶測の域を出ないと評価するのが客観的で建設的だよね?」
私の質問にシマーズさんが動揺した様に答える。
「ま、まぁそうだな……」
「その前提に立った場合、過去の範例と照らし合わせて一番近いモデルケースから信頼できるエビデンスのある戦術を選択するのがベターだと考えられるよね?」
「えっごめんちょっと待って、もしかして中身変わってたりする? さっき"全員で防壁を飛び越えてズダダダー!"って言ってたのと本当に同一人物??」
やだなぁシマーズさん。
随分と失礼なことを言うじゃ無いか。
「でも、アニーのいう通りだな」
お、流石ヨイニ。
わかってるぅ!
「そう考えるとヨイニが最初に言っていた案は惜しくって、紀元前7世紀頃に流行したファランクス陣形と発想がほぼ同じだから忠実に再現すればそれなりの効果は期待できるけど……あれは側面が弱くなるし移動速度が遅いから、完全包囲の中から本陣まで移動するのは過去の判例から難しいと評価できるよね?」
「おっおう……?」
「私も戦略や戦術について造詣が深い訳じゃ無いけど、敵陣突破という観点においては第二次世界大戦で猛威を振るった縦深攻撃ドクトリンを基本戦略にしつつ、1600年の"関ヶ原の戦い"で使われたとされている完全包囲状態から敵陣中央突破で退却を実現した捨て奸を戦術として採用するのが良いかなって気がするけど他に適したケースを知っている人はいる?」
しばし沈黙、皆がお互いに顔を見合わせていた。あれれ、どうして議論が進まないんだろ?
「……翻訳班!」
シマーズさんの声に何故かヨイニが答えた。
「考えがあるから信じて着いてきて欲しい! と言っている」
なんか凄い翻訳のされ方してない?
「よし分かった! ほとんど何言ってるか分からなかったけど、とにかく分かった! 俺はヨイニを信頼しているし、ヨイニの人を見る目も信用している! "暴君"の事は良く知らないがヨイニが信じるなら俺も信じる!」
「意義なーし! と言うか誰かがそれっぽい作戦を考えてくれるなら俺は何でも良い!」
「意義なーし! てかそろそろ戦いてー!!」
「が、頑張ります!」
翻訳がかなりエキサイトしてるけど何故か話は纏まった!
これがコミュ強の力か。
「えっと……皆はそれで良いの?」
「まぁ、あまり考えている時間も無いしな」
「言ってる事は分からなかったけど何となく一番適任っぽいから任せるよ!」
「このゲームにおいてはまだ皆が初心者だ。作戦の良し悪しなんて結局やってみた後じゃ無いと分からないし、多分"暴君"はこのパーティの最大戦力だ。ヨイニが良いなら、作戦の決定権を持つに値するよ」
「そっか……ありがと」
誰かに期待される事って、信じてもらえる事って。こんなにも嬉しいことなんだね。初めてだよ、こんな感覚。
広間にいる13人のプレイヤーそれぞれの自己紹介が終わった所で、白武者姿のシマーズさんが切り出した。なんだかこの光景って円卓の騎士っぽいね。
みんな腕を組んで考え込むばかりで発言しない。よし、ここはせっかくだし先陣を切らせてもらおうかな。
「はいはーい! 全員で防壁を飛び越えてズダダダー! って特攻する!」
「全員が俺や"暴君"みたいにAGIに振ってるビルドならそれも有りだがなぁ」
「着地を狙われて頭から各個撃破される可能性は避けたいな」
私の意見はシマーズさんにやんわりと、ヨイニからは割と直接的に否定されてしまった。
シクシク。
「純粋に考えるなら、外側を前衛、内側を後衛の編成で矢みたいに総大将の所まで突撃か?」
「陣形を維持しながら移動となると、移動速度に欠けるのでは?」
「シュクレちゃんの範囲火力をどう扱うかを起点に考えてみる?」
「つまりシュクレちゃんをどうやって確実に敵陣深くまで運ぶかってことになるよな」
「あ、あの私、ボスとの戦闘ではあまりお役に立てないです……」
「あー、あの詠唱は乱戦状態の中で発動できる類の物じゃ無いもんな」
「道中をシュクレちゃんで突破しつつ、ボスの目の前に単体火力最強の暴君を送り出すのが一番じゃ無いか?」
「暴君の攻撃には回数制限があるし、可能ならボス戦までは温存したいよな」
「で、結局それをどうやって実現するのかって話になるんだが……」
それぞれが意見を出し合って行く。
なんか皆むずかしー話してるなー。
「アニーはどう思う?」
そんな中、ふとヨイニが私に話を振った。
「むずかしーはなしだなーって思う?」
私の回答に、シマーズさんが険しくなっていた表情をちょっと緩めた。
「まあ、人には得手不得手があるもんだ」
続いて、他のメンバーも口を開く。
「戦闘では期待してるぜ暴君!」
「今のアタシら、仲間だもんね!」
シマーズの言葉で場の空気が少し緩む。
そんな中、ヨイニが再び私に声をかける。
「……よし分かった。状況設定をしよう」
「状況設定?」
「アニーは今、戦略シミュレーションRPGをしている。敵の戦力が外のゴブリンで、目標は総大将の討伐、戦力は俺たち13人だ。アニーならこのゲームをどうやって攻略する?」
「おー、ちょっと考えてみるね」
ヨイニの言葉で、私の中で何かのスイッチの切り替わる音が聞こえた。怪訝そうに彼と私をみる周囲を無視して、思考を加速させる。
「……よし、整いました」
「聞かせてくれ」
「まず、この場で現実での職業が軍師の人はいる?」
私の質問に答える人はいない。
まぁ、そうだよね。
「であるならば前提として、この場で私達が頭を捻って作戦の良し悪しを考えた所でそれは素人の憶測の域を出ないと評価するのが客観的で建設的だよね?」
私の質問にシマーズさんが動揺した様に答える。
「ま、まぁそうだな……」
「その前提に立った場合、過去の範例と照らし合わせて一番近いモデルケースから信頼できるエビデンスのある戦術を選択するのがベターだと考えられるよね?」
「えっごめんちょっと待って、もしかして中身変わってたりする? さっき"全員で防壁を飛び越えてズダダダー!"って言ってたのと本当に同一人物??」
やだなぁシマーズさん。
随分と失礼なことを言うじゃ無いか。
「でも、アニーのいう通りだな」
お、流石ヨイニ。
わかってるぅ!
「そう考えるとヨイニが最初に言っていた案は惜しくって、紀元前7世紀頃に流行したファランクス陣形と発想がほぼ同じだから忠実に再現すればそれなりの効果は期待できるけど……あれは側面が弱くなるし移動速度が遅いから、完全包囲の中から本陣まで移動するのは過去の判例から難しいと評価できるよね?」
「おっおう……?」
「私も戦略や戦術について造詣が深い訳じゃ無いけど、敵陣突破という観点においては第二次世界大戦で猛威を振るった縦深攻撃ドクトリンを基本戦略にしつつ、1600年の"関ヶ原の戦い"で使われたとされている完全包囲状態から敵陣中央突破で退却を実現した捨て奸を戦術として採用するのが良いかなって気がするけど他に適したケースを知っている人はいる?」
しばし沈黙、皆がお互いに顔を見合わせていた。あれれ、どうして議論が進まないんだろ?
「……翻訳班!」
シマーズさんの声に何故かヨイニが答えた。
「考えがあるから信じて着いてきて欲しい! と言っている」
なんか凄い翻訳のされ方してない?
「よし分かった! ほとんど何言ってるか分からなかったけど、とにかく分かった! 俺はヨイニを信頼しているし、ヨイニの人を見る目も信用している! "暴君"の事は良く知らないがヨイニが信じるなら俺も信じる!」
「意義なーし! と言うか誰かがそれっぽい作戦を考えてくれるなら俺は何でも良い!」
「意義なーし! てかそろそろ戦いてー!!」
「が、頑張ります!」
翻訳がかなりエキサイトしてるけど何故か話は纏まった!
これがコミュ強の力か。
「えっと……皆はそれで良いの?」
「まぁ、あまり考えている時間も無いしな」
「言ってる事は分からなかったけど何となく一番適任っぽいから任せるよ!」
「このゲームにおいてはまだ皆が初心者だ。作戦の良し悪しなんて結局やってみた後じゃ無いと分からないし、多分"暴君"はこのパーティの最大戦力だ。ヨイニが良いなら、作戦の決定権を持つに値するよ」
「そっか……ありがと」
誰かに期待される事って、信じてもらえる事って。こんなにも嬉しいことなんだね。初めてだよ、こんな感覚。
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