【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

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フォートシュウロフ防衛戦

自滅するタイプのJK

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「ここでは、アレを狩るの?」

 100mぐらい先に、キャラメイクで親の顔よりみたゴブリンが二匹、ゴブゴブしている。

「ここからだとちょっと距離があるな……」

「ま、見ててよ」

 その場で軽くジャンプして、脚の感じを確かめる。
 よーい、どんっ。

「おっとと」

 走り出してちょっとバランスを崩す。まだちょっとバランスが悪いけど、初期ではこれが限界だった。
 尻尾も使ってうまくバランスをとる。

「イヒヒヒッ……」

 ズダダダダダダ!!! と地面を蹴り上げながら草原を駆ける。走り出して数秒でゴブリンが眼前に迫った。ああ、すごい! 人間の脚では絶対に体験できない爽快感だ!

「○ね"ぇ"ぇ"ぇぇええええええぇ!!!」

 ダッシュの運動量をそのまま威力に上乗せして、右腕に託して振り抜く。

「キャハッ!」

 ゴブリンの顔面が地面に打ちすえられそのままバウンドし、空高くに打ち上げられる。
 顔面から激しい破損エフェクトが飛び散り、錐揉みきりもみ回転しながら地面に落下すると消滅した。

「キヒャヒャヒャヒャッヒャハヒャ!!!」

 全身を快感が駆け巡るのを感じつつ、もう一匹のゴブリンの隣を駆け抜ける。アニーは急には止まれない。
 大回りに最後のゴブリンの周りをカーブして再突入。

「パイルバンカァー!!」

 事前に登録した発声をキーにして、カスタムスキルが発動する。マジックユーザーのジョブで取得できる"ロックショット"の射程距離を0へして、代わりに攻撃力を最大に設定したスキルだ。これがアニー・キャノンのビルドコンセプトを構成するもう1つの主役。

 大体のゲームにおいて近接特化は魔法系のステータスが腐るし、魔法系は近接系のステータスが腐る。
 このスキルを中心に近接魔法型のビルドを組む事で、腐るステータスを無くす事によって相対的なリソースの有利を獲得する!

「イヒヒッヒヒヒヒヒ……あっ」

 ダッシュの運動エネルギーと拳の攻撃力に加え、インパクトの瞬間に魔力で構成されたパイル極太の釘が射出される。

 胸にパイルバンカーを受けたゴブリンが衝撃波を放ちながら吹き飛んでいく。そして、私の眼前には大きな木が1本。

 ワタシ、シッテル。
 アニーは急には止まれない。

 グシャァァア!!





 待機画面からヨイニへフレンドチャットを送る。

「ごめん、死んだ」

「ああ、見事に死んでたな。所持品は拾っておいたぞ」

 ヨイニから私の戦闘映像が送られてくる。そこには私が二匹のゴブリンを吹き飛ばし、そのまま木に激突する姿が映し出されていた。

「ひえー、恥ずかしい……」

「それにしても、とてもレベル1とは思えない破壊力だな」

「そうなの?」

 私は自分の趣向とデータ的な観点から今のビルドに決めたけど、検討の段階で他にも面白そうなビルドコンセプトをいくつか思いついている。アニーとは別のアプローチでも、同等の攻撃力は達成できるはずだ。

「なんかもう、世界観のぶち壊れる音が聞こえたぞ。もしかしたら今日のハイライトで紹介されるかもな」

「え!? なにそれ??」

「公式サイトで、ゲーム内であった面白い場面がムービーで紹介されるんだよ。利用規約に書いてあっただろ?」

「あんなの私にとっては読み飛ばす儀式的な何かだったんだけど」

「まあ、そういう奴が多いのは事実だけどな」

「えぇ……私が木に突っ込むシーンなんてなにが面白いのさ……」

「客観的に見て、一連の流れは大爆笑モノだろ。ちなみに今日のハイライトで好評な映像は週のハイライト、月のハイライトに移っていくぞ」

「どうか紹介されません様に……それがダメでもあまり目立ちません様に……」

「それはそうと、今日はどうする?」

「んーデスペナもあるし、明日も学校だし今日は終わろうかな」

 このゲームではデスペナルティとして一時間のリスポーン不可と、ステータス低下が発生する。
 ステータス低下は現実時間で1日が経過するまで解除されない。

「わかった。じゃあおやすみ」

「うん、おやすみー」





 一晩明けて目を覚ますと、なんとも言えない違和感があった。現実世界って、こんなにゆっくり動いていたっけ? 思考ってこんなに理路整然りろせいぜんとしている物だっけ?

「……そっか、私って疲れてたんだ」

 現実はゲームと違って、ずっと"勉強"コマンドを連打しても賢くは成れない。人間にはどうしても集中力の限界はあるし、ストレスが溜まれば思考力も低下する。私は自分の欲求に無自覚で、無意識の内にストレスを溜め込んでいたんだろう。アインシュタインだって二徹明けならきっと凡人だ。

 つまりゲーム最高! ひゃったほう! 早く準備してとっとと学校行って、とっとと帰ってきて、とっととゲームしよう。
 "1回だけプレイして合わなかったって言って辞める?"そんな事言うバカがもしいるならパイルバンカーの刑に処す。

奏音かのん、学校はどうだ?」

 家を出る途中で、お父様に声をかけられる。はて、この質問の意図はなんだろう。彼が私に何も期待していないのは態度や言動から明らかだ。

「まだ二日目なので、何もないです」

「そうか、もん……」

「風間家の名をこれ以上汚さない様に、問題は起こさない様に注意します。お父様」

 全部言われる前に先手を打って応えながら神妙に頷く。意図のない言葉は会話のフックに過ぎない。それなら彼が言いたい事は感情の話だ。
 視界に不愉快な存在が映ったから一方的に言葉で攻撃しようとしただけ。無抵抗に殴られて差し上げる必要は無い。

「そ、そうか……。分かっているなら、良い」

「それでは、いってまいります。お父様」

 私は清楚な感じに微笑んで家を後にした。こういう半分無意識みたいな言葉の暴力ってさ、お父様が特別にダメってわけじゃ無いよね。親は親という立場を悪意なく利用して”叱る”とか”注意する”って体で気軽にこういう事しちゃう人って案外多いんだろうな。

 私が特別、可哀想なわけじゃ無い。

 ただ世の中の構造的な問題として発生する普遍的な理不尽の1つだと理解できれば、こんなの朝の天気に関する感想と同じだ。その会話によって親密度が変わるわけでも無いし、知識が増えたりもしない。

 つまりはただの雑談だ。

「あ、ああ……」

 去り際、お父様の顔色が青ざめて見えた。
 なんでだろ?
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