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6.初体験(後編)
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俺は女性と付き合ったことがない。
この街の生まれで、小さな頃から両親の花屋を手伝っていて、年頃になると店に買い物に来る女の子が気になった時もある。
だが同時に、彼女らには俺とは別に花を贈りたい者がいるのだということにも早々に気付いてしまった。俺なんかが口出ししてはいけない。強いて言えば彼女らの想いが成就する手助けが出来るような花選びをすることしか俺には出来なかった。
だが今、俺はカイルに求められている。初めてこの身体を欲しがられ、抱かれていると思うと男同士なんてことはとうにどうでもよくなっていた。
「かはっ……あ゛、あ、あぁ……♡」
あまりの圧迫感に息を吸う事も忘れて喘ぐ。あまりの事に俺は完全に思考能力を失っていた。例えるなら快楽も苦痛も性感も全てが洪水のように一気に押し寄せてきている感じだろうか。それによって頭も身体も、果ては心までもを散り散りに引き千切られるような錯覚を覚えた。
だがそんな俺の様子とは裏腹にカイルのモノは俺の結腸をグリグリと押し潰すように刺激し続け、更にその奥へ奥へと入り込もうとしてくる。俺の身体はそれを拒むどころか、うねりながら子種を搾り取ろうとしていた。
「エルム……お前のナカ、エロすぎ……っ」
カイルももう耐えられないとばかりに囁いた。そして俺の腰を強く掴み直すと激しく腰を動かし始めた。その動きは今まで以上に激しく、容赦なく俺を追い詰めるものだった。
パンッ!パァンッ!!グチャッ!ヌチャッ!
「あ゛っ♡ あ゛ぁっ♡ お゛っ♡」
肉と肉がぶつかり合う音と結合部から漏れる粘着質な音が部屋中に響く。その音にすら興奮を煽られ、俺はまた絶頂に達しようとしていた。だがもう出るものも無く、ただ透明な液体を垂れ流すだけだった。それでも俺は何度も尻で達していた。
カイルは俺の尻たぶを開きながら突き入れてくる。俺は獣じみた声を上げ、背中をしならせた。
セックスをしている、と今更ながらに実感した。男同士の触れ合いだけではない、お互いに貪り合い、子種を欲して与える紛れも無い性行為に及んでいる。
それは禁忌の筈だったが、そう思えば思う程俺の身体は燃え上がった。もう俺は男のままではいられない。もっと強い雄によって、雌にされてしまったのだ。そう実感すると、更に強い快楽が脳を痺れさせた。
「カイル……っ、もっと……もっとちょうだい……♡」
俺は久し振りに意味のある言葉を発した気がした。もう息も絶え絶えだったが、カイルを抱き寄せて耳元で告げたからきっと聞こえただろう。
「……っ! いい気になりやがって……!」
するとカイルは何とも切羽詰まった声を漏らすと、俺の両脇の下に手を差し込み持ち上げた。そしてそのまま俺の身体ごと台から下ろすと床に押し倒した。俺はされるがままに仰向けになる。
カイルは覆い被さると、俺を抱き締めてキスをした。それはまるで獣が獲物の喉笛を食いちぎる前のようで、俺の胸は期待に高鳴った。
「ん……ふ、ぅ……♡」
俺はカイルの首に腕を回した。そして自分から舌を伸ばして絡め合う。互いの唾液を交換し合い、飲み下す。両足もまたカイルの腰に回して彼を引き寄せた。
その間もカイルのモノは俺の中で脈打ちながら存在を主張していた。それは俺の中を押し広げ、隙間なく埋め尽くしている。その熱量と質量は凄まじく、それが抽送されるのだから呼吸すらままならない。
ドチュッ!ドチュッ!バチュン!
「ん゛~~っ♡ ふぅ……っ♡」
カイルは体重を掛けながら激しいピストンを繰り返した。無様に大股を開き、尻穴を犯される。その恥辱すらも興奮の材料となっていた。
「お゛っ♡ おごっ♡ お゛ぉっ♡ ん゛っ♡」
俺は獣じみた声で鳴いた。もう理性など欠片も残っておらず、ただただ与えられる快楽に身を委ねるだけだ。カイルのモノは俺の中で更に質量を増して、結腸の奥まで入り込んでくる。
「エルム……好きだ……愛してる」
カイルはうわ言のように呟いた。その目はどこか遠くを見つめていて焦点が定まっていないようだったが、それでも彼は俺を求めてくれているのだ。それが堪らなく嬉しかった。俺もまた彼を求めていた。
だからだろうか、それとも単純に本能なのだろうか、俺は自然と自分から足を開いて彼を受け入れやすいように腰を浮かせていた。
そしてカイルもまたそれに応えるように俺の両足を抱えると更に深くまで突き入れてきた。
ドチュンッ!ズプッ!グチャッ!
「エルム、エルム……っ!出すぞ……っ!」
ビュッ、ビューーーッ!ビュルルル、ブジュルルル!
カイルはそう叫ぶと大きく腰を打ち付けてきて、その直後に俺の腹が一段と熱くなった。恐らく一度目よりも遥かに多い白濁が注ぎ込まれているのだろう。
もう、下腹部どころか腰回りまで侵蝕するかのような熱さだった。熱湯を流し込んだかのような圧倒的な感覚に意識が混濁しそうになるが、俺は何とか堪えた。
「あ゛っ……あ゛ぁ……♡」
だがそれでも身体は正直で、俺の陰茎からはプシュッ、と透明な液体が吹き出すのを感じる。まるでお漏らしをしてしまったかのような感覚だったが、それが何なのか俺には分からなかった。だがそんな事よりも今はただ、この快楽をもっと味わいたかった。
俺はカイルに抱きつき、彼の首筋に顔を埋める。そしてそのまま深く息を吸い込むと、鼻腔いっぱいに彼特有の匂いが広がった。汗ばんだ肌からは雄臭い匂いが立ち上ぼり、俺の脳を蕩けさせる。その匂いだけで軽く達しそうになった。
もう俺は完全に堕ちていた。
カイルは俺の身体を強く抱き締めると、また腰を動かし始めた。今度は先程よりもゆっくりとした動きだったがそれでも充分すぎる程の快楽が襲ってくる。
「ひあっ♡ ああっ♡」
俺は背をしならせながら声を上げる。もっと強く突いてほしいのに彼は焦らすかのように浅いところを擦るだけなのでもどかしさに気が狂いそうだった。
だがそれでも俺の中はきゅうっと締まり、彼のモノの形をありありと感じる。それがまた堪らなく心地良かった。
カイルは俺の腰を掴み直し更に激しく打ち付けてきた。パンッパンッという肉同士がぶつかり合う音が響き渡る中、カイルの息遣いが激しくなる。
「あ゛っ♡ お゛ぉっ♡」
「エルム、エルムぅ……っ」
そしてまた2人で達し、まだ足りないと腰を振り、あらゆる姿勢でまぐわい合う。
一晩中淫らに絡み合った俺達だったが、先に意識の方が限界を迎えたのか、いつの間にか気を失った。
***
気付いた時には窓の外が明るくなっていた。
俺とカイルは折り重なるように台所の床で倒れていた。ここだけ見たらちょっとした事件現場だ。
硬い床の上でくんずほぐれつしていたからだろう、全身が痛い。そして俺の下には半乾きの白い水溜りが広がっていた。
「あ……!」
ブッ、ブビッ……!
ヤバいと思った時にはもう、尻から白濁液が溢れていた。俺は咄嗟に手で押さえながらトイレに駆け込むが、その間にも汚い音を放ちながら液体が漏れ出てしまう。
一晩中犯されていたからだろう、俺の尻穴はすっかり緩んでしまっていた。もう既に腹に注がれた物の大半は漏らしてしまっていたが、便器に座るとグルグルと音を立て、残りが下ってくるのを感じた。
「あ……あ……」
ブジュッ、ブジュジュジュッ……!
俺は顔を赤くしながら、それでも尻の穴に力を入れて中身を噴き出した。触手の粘液はいつの間にか腸内で吸収されていたが、カイルに出された精液は出さないといけないと本能的に直感していた。
「ふっ、ん……んっ……!」
ブリュリュッ、ビチビチッ!ブジュッ!
俺は腹を摩りながら何度も力んだ。同時に昨晩のことを思い出す。
カイルに好きだと言われたこと、激しく犯されたこと。今は何もかも信じられない。だが俺の尻から滴る液体と激しい水音が何よりの証拠だった。腹の奥からアナルまで流れ落ちて来る感覚は不快さと快感の両方があった。
10分程の時間を掛けて概ね腹を空にしてから俺はトイレを出た。身体を清めたかったがこの家に風呂場は無い。いつも近くの共同浴場を使っているのだが、せめて一度身体を拭いてからでないと外に出る気にはならなかった。
「あ……」
「あ」
そんなことを思いつつキッチンへ戻れば、同じく目覚めたらしいカイルが床を雑巾で拭いていた。そのどこか間抜けな様子に、目が合ったもののすぐにお互い逸らす。
「その……昨日は、いきなりすまん」
「いいよ。でもちょっと、驚いた」
「本当にすまん。あんなことするつもりは無かったんだ。でも、この家に入って、お前のことを見てたら、なんかムラムラして……」
「いいったら」
カイルは何故か必死に弁明していた。確かに、好きと言う前に触り始めたのはおかしいのだろう。これまでそういう経験が無かったから正解がちゃんと分からないのだが。
「身体、大丈夫か?」
「全部痛い」
「だよな……やっぱベッドに連れて行くべきだった」
「それは駄目だ」
「え?」
「……寝室には入るな」
カイルは反省したようだったが、俺の言葉に首を傾げた。だがすぐにプライベートな空間だと察したらしい。
「まぁ、そういうのもあるよな。いいよ、それで。てか、俺もさ、なんかおかしかったんだ。あんなにガツガツしたの、初めてだった気がする。……悪かった」
「えっ?」
「もうこんなことしない。店にも行かないから、安心して……」
「な、なんで?」
カイルが深々と頭を下げたのを見て混乱する。だがその反応はカイルにとっても予想外らしかった。
「へ? だっていきなり襲って、一晩中ヤってたんだぞ? 普通嫌いになるだろ。そうじゃなくても、距離置きたいとかさ」
「カイルは、そう思ってるのか?」
「……え?」
我ながら回りくどい。そう口にしてから気付いた。
俺にとって、驚きはしたが嫌な経験ではなかった。そして俺はカイルに嫌われたくないし、嫌いだとも思わない。これを恋愛感情と言っていいかは分からなかったが、明白なのは。
「俺は……もし、カイルがもう1回したいって言ったら、してもいいと、思う」
……いや俺、大分恥ずかしいこと言ってるな。
後から自覚してボッと顔が赤くなる。カイルもポカンとして俺を見詰めていた。
「で、でもちゃんと、その時は先に言え! 俺も支度ってものがあるし、その……ビックリするから!」
「お、おう……」
「ほら、さっさと片付けて風呂行くぞ!」
俺は照れ隠しにぶっきらぼうに言ってもう1枚の雑巾を取りに行った。
仮に恋人が出来たとして、どうしたらいいかなんて分からない。ただ俺が出来るのは、これまで通りの付き合いだった。
***
『悪いんだが、次の冒険の予定がもう決まってんだ。しかもちょっと長めでな』
だが数日後、そう言ってカイルは旅立って行った。
彼は根っからの冒険者だってことは知ってたし、恋人らしい付き合いをしようともあまり思ってはいなかった。
それに男同士で仲睦まじく歩こうものならご近所の噂になってしまう。身体を重ねていることまでバレたら、もしかしたら異端と見做され神官騎士に捕まってしまうかもしれない。
向こうもそう思ったのだろうか、カイルはああ言ったものの、やはり負い目があるのか結局その後俺に手を出そうとはしなかった。
ただ出発前に店を訪れて、初めて自分で花を選んで買った。真っ赤な薔薇を1輪、代金を支払うとそのまま俺に渡して来る。
『これを俺だと思ってくれ』
『……何日かで枯れるが』
『うるせぇ! こういうのは雰囲気だろ雰囲気!』
花屋としてつい事実を述べてしまったが、キレる様子が何だか面白くて吹き出してしまい、つられてカイルも笑った。
でも彼が手を振って店を出て行った時、俺は初めて胸が締め付けられるような気持ちになった。
これまでカイルに対してそんなことは感じたことは無い。大事な常連客ではあったが、はいはい毎度ありと流すように見送ることの方が多かった。
冒険に行くと言ったって、どうせすぐに帰って来ると深く考えていなかった。もしかしたら何かあって帰って来ないかもしれないと思ったのも初めてだった。
まさか、これが恋なんだろうか。俺に確かめる術は無かった。
それでも行かないでほしいとは言えなかったのは、彼が根っからの冒険者だと知っていたからだ。仮に冒険者を辞めて俺の傍に居ると言ったとしても、絶対にその後飽きてしまうに決まっている。花屋の生活は、俺でさえも時々倦んでいた程に平和で退屈なのだ。
きっとこれでいい。彼は冒険へ行き、俺が帰りを待つ。彼が帰って来たらそれを歓迎して土産話を聞く。それが俺達の付き合い方なのだろう。
自分にそう言い聞かせて、俺は俺の日常を送るしかなかった。
それが本当は詭弁であることも分かっていた。淡々と花屋の仕事をこなすが、心にぽっかりと穴が空いたようにも感じていたのだった。
この街の生まれで、小さな頃から両親の花屋を手伝っていて、年頃になると店に買い物に来る女の子が気になった時もある。
だが同時に、彼女らには俺とは別に花を贈りたい者がいるのだということにも早々に気付いてしまった。俺なんかが口出ししてはいけない。強いて言えば彼女らの想いが成就する手助けが出来るような花選びをすることしか俺には出来なかった。
だが今、俺はカイルに求められている。初めてこの身体を欲しがられ、抱かれていると思うと男同士なんてことはとうにどうでもよくなっていた。
「かはっ……あ゛、あ、あぁ……♡」
あまりの圧迫感に息を吸う事も忘れて喘ぐ。あまりの事に俺は完全に思考能力を失っていた。例えるなら快楽も苦痛も性感も全てが洪水のように一気に押し寄せてきている感じだろうか。それによって頭も身体も、果ては心までもを散り散りに引き千切られるような錯覚を覚えた。
だがそんな俺の様子とは裏腹にカイルのモノは俺の結腸をグリグリと押し潰すように刺激し続け、更にその奥へ奥へと入り込もうとしてくる。俺の身体はそれを拒むどころか、うねりながら子種を搾り取ろうとしていた。
「エルム……お前のナカ、エロすぎ……っ」
カイルももう耐えられないとばかりに囁いた。そして俺の腰を強く掴み直すと激しく腰を動かし始めた。その動きは今まで以上に激しく、容赦なく俺を追い詰めるものだった。
パンッ!パァンッ!!グチャッ!ヌチャッ!
「あ゛っ♡ あ゛ぁっ♡ お゛っ♡」
肉と肉がぶつかり合う音と結合部から漏れる粘着質な音が部屋中に響く。その音にすら興奮を煽られ、俺はまた絶頂に達しようとしていた。だがもう出るものも無く、ただ透明な液体を垂れ流すだけだった。それでも俺は何度も尻で達していた。
カイルは俺の尻たぶを開きながら突き入れてくる。俺は獣じみた声を上げ、背中をしならせた。
セックスをしている、と今更ながらに実感した。男同士の触れ合いだけではない、お互いに貪り合い、子種を欲して与える紛れも無い性行為に及んでいる。
それは禁忌の筈だったが、そう思えば思う程俺の身体は燃え上がった。もう俺は男のままではいられない。もっと強い雄によって、雌にされてしまったのだ。そう実感すると、更に強い快楽が脳を痺れさせた。
「カイル……っ、もっと……もっとちょうだい……♡」
俺は久し振りに意味のある言葉を発した気がした。もう息も絶え絶えだったが、カイルを抱き寄せて耳元で告げたからきっと聞こえただろう。
「……っ! いい気になりやがって……!」
するとカイルは何とも切羽詰まった声を漏らすと、俺の両脇の下に手を差し込み持ち上げた。そしてそのまま俺の身体ごと台から下ろすと床に押し倒した。俺はされるがままに仰向けになる。
カイルは覆い被さると、俺を抱き締めてキスをした。それはまるで獣が獲物の喉笛を食いちぎる前のようで、俺の胸は期待に高鳴った。
「ん……ふ、ぅ……♡」
俺はカイルの首に腕を回した。そして自分から舌を伸ばして絡め合う。互いの唾液を交換し合い、飲み下す。両足もまたカイルの腰に回して彼を引き寄せた。
その間もカイルのモノは俺の中で脈打ちながら存在を主張していた。それは俺の中を押し広げ、隙間なく埋め尽くしている。その熱量と質量は凄まじく、それが抽送されるのだから呼吸すらままならない。
ドチュッ!ドチュッ!バチュン!
「ん゛~~っ♡ ふぅ……っ♡」
カイルは体重を掛けながら激しいピストンを繰り返した。無様に大股を開き、尻穴を犯される。その恥辱すらも興奮の材料となっていた。
「お゛っ♡ おごっ♡ お゛ぉっ♡ ん゛っ♡」
俺は獣じみた声で鳴いた。もう理性など欠片も残っておらず、ただただ与えられる快楽に身を委ねるだけだ。カイルのモノは俺の中で更に質量を増して、結腸の奥まで入り込んでくる。
「エルム……好きだ……愛してる」
カイルはうわ言のように呟いた。その目はどこか遠くを見つめていて焦点が定まっていないようだったが、それでも彼は俺を求めてくれているのだ。それが堪らなく嬉しかった。俺もまた彼を求めていた。
だからだろうか、それとも単純に本能なのだろうか、俺は自然と自分から足を開いて彼を受け入れやすいように腰を浮かせていた。
そしてカイルもまたそれに応えるように俺の両足を抱えると更に深くまで突き入れてきた。
ドチュンッ!ズプッ!グチャッ!
「エルム、エルム……っ!出すぞ……っ!」
ビュッ、ビューーーッ!ビュルルル、ブジュルルル!
カイルはそう叫ぶと大きく腰を打ち付けてきて、その直後に俺の腹が一段と熱くなった。恐らく一度目よりも遥かに多い白濁が注ぎ込まれているのだろう。
もう、下腹部どころか腰回りまで侵蝕するかのような熱さだった。熱湯を流し込んだかのような圧倒的な感覚に意識が混濁しそうになるが、俺は何とか堪えた。
「あ゛っ……あ゛ぁ……♡」
だがそれでも身体は正直で、俺の陰茎からはプシュッ、と透明な液体が吹き出すのを感じる。まるでお漏らしをしてしまったかのような感覚だったが、それが何なのか俺には分からなかった。だがそんな事よりも今はただ、この快楽をもっと味わいたかった。
俺はカイルに抱きつき、彼の首筋に顔を埋める。そしてそのまま深く息を吸い込むと、鼻腔いっぱいに彼特有の匂いが広がった。汗ばんだ肌からは雄臭い匂いが立ち上ぼり、俺の脳を蕩けさせる。その匂いだけで軽く達しそうになった。
もう俺は完全に堕ちていた。
カイルは俺の身体を強く抱き締めると、また腰を動かし始めた。今度は先程よりもゆっくりとした動きだったがそれでも充分すぎる程の快楽が襲ってくる。
「ひあっ♡ ああっ♡」
俺は背をしならせながら声を上げる。もっと強く突いてほしいのに彼は焦らすかのように浅いところを擦るだけなのでもどかしさに気が狂いそうだった。
だがそれでも俺の中はきゅうっと締まり、彼のモノの形をありありと感じる。それがまた堪らなく心地良かった。
カイルは俺の腰を掴み直し更に激しく打ち付けてきた。パンッパンッという肉同士がぶつかり合う音が響き渡る中、カイルの息遣いが激しくなる。
「あ゛っ♡ お゛ぉっ♡」
「エルム、エルムぅ……っ」
そしてまた2人で達し、まだ足りないと腰を振り、あらゆる姿勢でまぐわい合う。
一晩中淫らに絡み合った俺達だったが、先に意識の方が限界を迎えたのか、いつの間にか気を失った。
***
気付いた時には窓の外が明るくなっていた。
俺とカイルは折り重なるように台所の床で倒れていた。ここだけ見たらちょっとした事件現場だ。
硬い床の上でくんずほぐれつしていたからだろう、全身が痛い。そして俺の下には半乾きの白い水溜りが広がっていた。
「あ……!」
ブッ、ブビッ……!
ヤバいと思った時にはもう、尻から白濁液が溢れていた。俺は咄嗟に手で押さえながらトイレに駆け込むが、その間にも汚い音を放ちながら液体が漏れ出てしまう。
一晩中犯されていたからだろう、俺の尻穴はすっかり緩んでしまっていた。もう既に腹に注がれた物の大半は漏らしてしまっていたが、便器に座るとグルグルと音を立て、残りが下ってくるのを感じた。
「あ……あ……」
ブジュッ、ブジュジュジュッ……!
俺は顔を赤くしながら、それでも尻の穴に力を入れて中身を噴き出した。触手の粘液はいつの間にか腸内で吸収されていたが、カイルに出された精液は出さないといけないと本能的に直感していた。
「ふっ、ん……んっ……!」
ブリュリュッ、ビチビチッ!ブジュッ!
俺は腹を摩りながら何度も力んだ。同時に昨晩のことを思い出す。
カイルに好きだと言われたこと、激しく犯されたこと。今は何もかも信じられない。だが俺の尻から滴る液体と激しい水音が何よりの証拠だった。腹の奥からアナルまで流れ落ちて来る感覚は不快さと快感の両方があった。
10分程の時間を掛けて概ね腹を空にしてから俺はトイレを出た。身体を清めたかったがこの家に風呂場は無い。いつも近くの共同浴場を使っているのだが、せめて一度身体を拭いてからでないと外に出る気にはならなかった。
「あ……」
「あ」
そんなことを思いつつキッチンへ戻れば、同じく目覚めたらしいカイルが床を雑巾で拭いていた。そのどこか間抜けな様子に、目が合ったもののすぐにお互い逸らす。
「その……昨日は、いきなりすまん」
「いいよ。でもちょっと、驚いた」
「本当にすまん。あんなことするつもりは無かったんだ。でも、この家に入って、お前のことを見てたら、なんかムラムラして……」
「いいったら」
カイルは何故か必死に弁明していた。確かに、好きと言う前に触り始めたのはおかしいのだろう。これまでそういう経験が無かったから正解がちゃんと分からないのだが。
「身体、大丈夫か?」
「全部痛い」
「だよな……やっぱベッドに連れて行くべきだった」
「それは駄目だ」
「え?」
「……寝室には入るな」
カイルは反省したようだったが、俺の言葉に首を傾げた。だがすぐにプライベートな空間だと察したらしい。
「まぁ、そういうのもあるよな。いいよ、それで。てか、俺もさ、なんかおかしかったんだ。あんなにガツガツしたの、初めてだった気がする。……悪かった」
「えっ?」
「もうこんなことしない。店にも行かないから、安心して……」
「な、なんで?」
カイルが深々と頭を下げたのを見て混乱する。だがその反応はカイルにとっても予想外らしかった。
「へ? だっていきなり襲って、一晩中ヤってたんだぞ? 普通嫌いになるだろ。そうじゃなくても、距離置きたいとかさ」
「カイルは、そう思ってるのか?」
「……え?」
我ながら回りくどい。そう口にしてから気付いた。
俺にとって、驚きはしたが嫌な経験ではなかった。そして俺はカイルに嫌われたくないし、嫌いだとも思わない。これを恋愛感情と言っていいかは分からなかったが、明白なのは。
「俺は……もし、カイルがもう1回したいって言ったら、してもいいと、思う」
……いや俺、大分恥ずかしいこと言ってるな。
後から自覚してボッと顔が赤くなる。カイルもポカンとして俺を見詰めていた。
「で、でもちゃんと、その時は先に言え! 俺も支度ってものがあるし、その……ビックリするから!」
「お、おう……」
「ほら、さっさと片付けて風呂行くぞ!」
俺は照れ隠しにぶっきらぼうに言ってもう1枚の雑巾を取りに行った。
仮に恋人が出来たとして、どうしたらいいかなんて分からない。ただ俺が出来るのは、これまで通りの付き合いだった。
***
『悪いんだが、次の冒険の予定がもう決まってんだ。しかもちょっと長めでな』
だが数日後、そう言ってカイルは旅立って行った。
彼は根っからの冒険者だってことは知ってたし、恋人らしい付き合いをしようともあまり思ってはいなかった。
それに男同士で仲睦まじく歩こうものならご近所の噂になってしまう。身体を重ねていることまでバレたら、もしかしたら異端と見做され神官騎士に捕まってしまうかもしれない。
向こうもそう思ったのだろうか、カイルはああ言ったものの、やはり負い目があるのか結局その後俺に手を出そうとはしなかった。
ただ出発前に店を訪れて、初めて自分で花を選んで買った。真っ赤な薔薇を1輪、代金を支払うとそのまま俺に渡して来る。
『これを俺だと思ってくれ』
『……何日かで枯れるが』
『うるせぇ! こういうのは雰囲気だろ雰囲気!』
花屋としてつい事実を述べてしまったが、キレる様子が何だか面白くて吹き出してしまい、つられてカイルも笑った。
でも彼が手を振って店を出て行った時、俺は初めて胸が締め付けられるような気持ちになった。
これまでカイルに対してそんなことは感じたことは無い。大事な常連客ではあったが、はいはい毎度ありと流すように見送ることの方が多かった。
冒険に行くと言ったって、どうせすぐに帰って来ると深く考えていなかった。もしかしたら何かあって帰って来ないかもしれないと思ったのも初めてだった。
まさか、これが恋なんだろうか。俺に確かめる術は無かった。
それでも行かないでほしいとは言えなかったのは、彼が根っからの冒険者だと知っていたからだ。仮に冒険者を辞めて俺の傍に居ると言ったとしても、絶対にその後飽きてしまうに決まっている。花屋の生活は、俺でさえも時々倦んでいた程に平和で退屈なのだ。
きっとこれでいい。彼は冒険へ行き、俺が帰りを待つ。彼が帰って来たらそれを歓迎して土産話を聞く。それが俺達の付き合い方なのだろう。
自分にそう言い聞かせて、俺は俺の日常を送るしかなかった。
それが本当は詭弁であることも分かっていた。淡々と花屋の仕事をこなすが、心にぽっかりと穴が空いたようにも感じていたのだった。
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