花屋のエルム〜触手と男の危険な香り〜

金盞花

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3.自慰と常連客

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 その後俺は、触手草ことドラゴンウィスカーもどきをどうすべきか悩んだ。
 本当ならさっさと燃やすか粉々に切り刻むべきだ。触手で人を襲うなど魔物の一種であり、どう考えても危険である。こんなのを飼っているなどと自警団や騎士に知られたら処罰は免れないだろう。

 だが俺は、触手から受けたあの感覚が忘れられずにいた。もう一度体験してはいけない。あんなものにハマったら人生が終わる。そんな確証があるにも関わらず、それを捨てるということが出来なかった。
 折衷案として、俺はドラゴンウィスカーもどきの鉢植えを家の物置に仕舞った。窓も無く、鍵の閉まる部屋だ。水も制限すれば少しは大人しくなるだろう。
 そう思うこと数日。俺は自分の身体が既に変貌していることに気付いていた。

「ん……はぁっ……♡」

 夜、寝室に入った俺は上着を脱ぐと熱い吐息を漏らしながら自分の胸へ指を這わせた。
 触手に襲われてからというもの、身体がとても敏感になっていた。少し服に擦れただけで感じてしまい、接客中だろうと店の準備中だろうと関係無く性欲が募っていた。我慢出来ずに日中トイレで抜くこともあったが、それでも全く治らない。

 寝る前ともなればそれは最高潮に達し、俺はもうオナニーのことしか考えられなくなっていた。
 両手で突起を摘まむとビリリと電気が走ったような快感が走る。同時に陰茎がピクリと反応し、布地を持ち上げる感覚があった。

「ふ……ぅんっ♡」

 俺は左右それぞれの性感帯を刺激する。親指で捏ねくり回し、人差し指と中指で挟んで摘み上げるように引っ張る。そうしているうちにあっという間にそこは硬く芯を持ち始めてしまった。
 じんじんとした熱は全身へ広がり、自然と腰が動いてしまうのを抑えられない程だった。もう頭の中にあるのは快楽への欲求しかなかった。この火照りを鎮めなければ眠ることなんて出来ないだろう。

 俺はベッドに座ってズボンを下ろすと、既に下着を押し上げて勃起している陰茎がぶるんと飛び出てきた。
 俺は右手で自分の肉棒を擦り上げるようにして刺激を与え始めた。ただそれだけで背筋に甘い痺れが走るようだった。指先から伝わる硬さを感じるだけでも気持ちいいがそれでは足りない。
 もどかしい気持ちになりながらもひたすら続けると先端からは先走り汁が溢れ出てきて、それを指先で掬う度に快感が増していった。

「あっ♡ あふっ……んっ♡」

 次第に腰の動きは大胆になり、まるで娼婦のようにカクつかせながら夢中で手淫を続けた。竿だけでなく、はしたなく勃起した乳首を弄りながらなんて、本当に女のようだと自分でも思う。
 だがそれでも胸を弄ると電流のような快感が幾度も脳天を貫き、もっともっとと思ってしまうのだ。俺は右手で肉棒を扱きながら左手で乳首を摘む。そして同時にカリ首の辺りを指で擦ると堪らない快感が駆け巡り思わず仰け反ってしまった。

「あ゛っ♡ んお゛ぉっ♡」
 ビクンッ!ビクッビクッ!ビクビク……ッ!!

 だがあともう少しというところで絶頂には至れない。昼間も客の居ないタイミングを見計らって自慰をしていたからだろうか。どれだけ擦っても達せないもどかしさに息が荒れる。
 だが俺は同時に、また別の性感帯が疼いていることにも気付いていた。
 尻穴だ。触手に犯されたせいか、下半身全体に快感を感じるようになってしまった身体は貪欲で、再びあの快楽を味わいたいと渇望していた。
 グニッと尻を左右に広げる。ヒクつく肛門の奥、腸内が空気に晒されて冷たい風を感じると同時に、その刺激さえ今の俺にとっては大きな興奮材料だった。

「あ……っ♡ はぁ……♡」

 俺は自分の指を舐め、唾液で湿らせるとその指をゆっくりと挿入した。そしてそのまま根元まで押し込むと、それだけで甘い痺れが全身に広がるのを感じた。
 中は熱く熟れていて柔らかい粘膜が指を包む。指を折り曲げて内壁を擦ればそれだけで全身がピクっと跳ね上がるような快感に襲われた。
 俺は夢中になって指を動かした。最初は1本だけだったのが次第に2本3本と増えていき、気付けば4本も咥え込んでいた。
 それでもまだ足りないとばかりに俺の中はきゅうきゅう締め付けてくる。もっと太いものを求めてヒクつくそこはまるで別の生き物のようだと思った。

「ん……っ♡ はぁ……♡ あ……んっ♡」
 グチュッ!ジュプッ!ヌチャァッ……!

 俺は夢中で自分の尻穴を弄っていた。腸内を掻き回す度に甘い刺激が全身を駆け巡って頭の中を白く染め上げる。特に入り口の辺りは敏感になっているようで、指の腹で撫でる度に自然と尻臀に力が入ってしまう。
 それと同時に触手によってドロドロと蕩けさせられたことを思い出してしまい更に身体が熱を帯びていった。
 あの触手は一体どんな形をしていただろう。太く長いものから、細くて先端がイボイボしているものまで様々な種類があった気がする。
 俺はその形状や感触を一つ一つ思い出すと、それを自分の尻で体験した時にどう感じたのかを妄想してしまっていた。

「ん……っ♡」

 俺は4本の指をそれぞれバラバラに動かして腸内を蹂躙していた。その動きはまるで何かを探しているようなものだった。しかしいくら探しても望むものは見つからない。あの太さと硬さを持った触手には到底敵わないからだ。
 俺は意を決して指を突き込んだまま、反対の手で自分の肉棒を握り込んだ。
 既に先走り汁で濡れているそれを上下に擦ると腰が砕けそうになる程の快感に襲われた。

 グチュ!ヌチュッ!ニチャァッ!ニュルゥッ!!
「んお……っ♡ あ゛ぁっ♡」

 もう我慢出来なかった。俺はベッドに横になると枕に頭を押し付けて尻を上げた状態で自慰を続けた。尻穴を弄ると同時に、シーツに胸を押し付けて乳首が擦れるようにした。

 ズプッ!ジュポッ!!ビュルルルッ!!
「はぁ……っ♡ あ゛~~っ♡」

 もうダメだ。止まれない。気持ち良すぎて何も考えられない。早く楽になりたいという一心でひたすら手を動かす速度を上げた。
 程なくして込み上げてきた射精感に身を任す。俺の先端からは勢い良く精液が飛び散りシーツを汚したと同時に、尻穴がきゅうっと収縮して指を締め付けたのを感じた。

 ビクビクと痙攣しながら脱力する身体。しかしそれでもなお俺の性欲は治らなかった。むしろ一度出したことで更に増してしまった気がする程だ。
 俺は尻穴をヒクつかせ、物欲しげにパクつくそこに指を入れると再び抜き差しを開始した。
 今度はもっと太いものを求めるかのように深く挿入し激しく動かす。腸内を掻き回し、時折指先で腹側の壁を擦るとそれだけで軽くイってしまいそうだったがそれでもまだ足りなかった。

「あ゛……っ♡ んお゛ぉっ♡」
 グチュ!ヌチャァッ!ニュルゥッ!!

 俺はもう何も考えられずひたすら快楽を求めて手を動かすことしか出来なかった。
 そして夜の空が白み、疲れ果てて気を失うまで、俺は自慰にに耽り続けたのだった。

 ***

 それからというもの、俺の生活は少しおかしくなってしまった。
 昼間、店で働いている間、ふと気を抜くと胸の先や股や尻や腹の奥がムズムズすることがあった。客が居ない時はこっそりカウンターの中で椅子に座ったまま、いけない所を弄ってしまう時もあった。こんな性欲、もっと若い時も感じたことが無い。

 俺は結局、数日後にはドラゴンウィスカーもどきを物置から出した。ベッドサイドに置くと、そいつは閉じ込めておいた復讐とばかりに夜な夜な俺の身体に触手を伸ばしてきた。
 俺の身体は滅茶苦茶にされ、こんなことばかりしては壊れると思っても気持ち良さに抗い切れず、俺は何度も喘いで達してしまった。
 睡眠時間が足りず、店番の途中で寝てしまうこともあった。どうにかしなければと思いながらも、俺はあの植物を捨てられずにいた。

(あっ……どうしよう、また……)

 ある日の夕方のことだった。
 ジョウロで店先に置いた鉢植え達に水をやっている最中、俺の身体が疼き始めた。外なので俺は誰かに見られても気付かない程度に太腿を擦り合わせた。
 でもそんなことでムズムズとした感覚は収まってくれない。早く仕事を終えてしまおうと俺はジョウロを大きく傾け、中の水を空にしようとした。

「よぉエルム! お疲れ!」

 そんな俺の背後から声が掛かり、俺はビクリと肩を震わせた。
 振り返るまでもなく近付いて来たのは、革鎧にマントを纏った青年だった。俺の店によく来てくれる、冒険者のカイルだ。

「か、カイル! おかえり、今回も生きて帰って来やがったな」
「ハッ、客相手にとんだ減らず口だな」

 俺は突然のことに一瞬驚いたが、なんとか平静を装いつつ笑いかけた。
 カイルは戦士というジョブに就いているらしい。仲間と一緒にクエストに出掛けて、数日間街に帰らないことも多い。
 でも必ず出掛ける時と帰る時に俺の店に立ち寄って花を1輪買っていく、大事な常連の1人だ。俺よりちょっと年上だが気が合い、今ではこうして軽口を叩き合う仲でもある。

 しかし俺の心臓は今にも破裂しそうなくらい高鳴っていた。だって今の恥ずかしい姿を見られてたかもしれないのだ。こいつに気付かれたら今後一生からかわれるに決まっている。
 だがカイルはそんな俺に気付いた様子も無く、いつも通り明るい笑みを浮かべて言った。

「俺がそんなヘマする筈無いだろ。とは言え、今回のボスはなかなか手強かったかな。キマイラって知ってるか?」
「ああ、名前ぐらいは……」
「それが襲い掛かって来たんだ。俺達のチームワークの前では敵ではなかったが……」

 カイルは帰って来る度にこうして冒険の話を聞かせてくれる。ほとんど街から出ない俺にとってはワクワクする話だ。だが羨ましいという気持ちはちっとも沸かない。戦闘能力の無い俺がダンジョンに行ったところで死ぬだけなのだから。
 だが、当然ながら冒険に花は不必要だ。なのに毎回買うってことは、きっとそれをあげる大切な人が居るのだろう。
 カイルのパーティには可愛らしい弓師やセクシーな魔術師が居るのを見掛けたことがある。カイルは金髪と青い目が美しく、顔立ちも結構整っているから女性にも人気だと思う。超地味な俺とは比べるまでもない。

「……という訳で、俺達は無事に生還出来たって訳だ」
「相変わらず凄いなお前は。怪我はしなかったのか?」
「そりゃもう血塗れだったさ。でもウチの神官は優秀だからな、回復魔術で全快だ!」
「じゃあ凄いのはそっちの方だな」
「なんだと?!」

 カイルの話を聞きながら、俺はどんな花がいいか店を見回した。彼はいつも買う花の種類はこちらに任せっきりだ。お前からの贈り物なのだからお前が決めろとたまに言っているが嫌だと言う。面倒な客だ。
 今は良い色のガーベラがあるのでそれにしようかと、エプロンで手を拭きながらお店の中へ入ろうとした時だった。

「……わっ!」
「……!」

 睡眠不足の所為だろうか、ちょっとした段差につまづいてしまった。転ぶと思って咄嗟に身体を硬くして眼を瞑る。
 だが全く痛みが無い。代わりに、身体を支えてくれるしっかりとした温かさがあった。

「おい、平気か?」

 そう声をかけられ、顔を上げると目の前にカイルの顔があった。どうやら彼が抱き止めてくれたようだ。
 俺は慌ててその身を押して離れながらお礼の言葉を口にしようとするが、動揺して上手く話せない。何故か心臓が早鐘を打っていた。そんな俺を見てカイルは少しだけ呆れ混じれに優しく微笑んでいた。

「怪我は無いみたいだな、良かった。でも、どうしたんだ? 少し疲れているみたいだが……」
「だ、大丈夫、悪いな……」

 俺は慌ててカイルの元からお店のカウンターへと向かった。
 これまで俺はカイルをただの客兼友達としか見ていなかった。だが今、初めて俺を支えてもビクともしない程の筋肉を感じた。戦士なのでそれは当然なのだが、この辺りとは違う土の匂いと微かな血の匂いも鼻を擽った。
 その腕に抱かれ、逞しさを感じた瞬間、俺はふとあの植物のことを思い出してしまった。触手に絡み付かれた時の気持ち良さが蘇り、下腹部の奥がキュンッとなるのを感じたのだ。
 俺は頭を小さく横に振った。今は仕事中なんだからこんなことを考えてはいけない。ましてやカイルは大事な客だ。そう自分に言い聞かせてはみるものの、一度意識してしまうともう止まらなかった。

(……カイルなら、あの触手相手にどうなるんだろう……♡)

 いけないと思ってもついつい想像し、駄目だと思う程に興奮してしまう。俺は下着が内側から持ち上がりつつあるのを感じた。カイルのがっしりとした身体をチラチラと見て、その下半身も立派だろうと思い描いてしまっていた。

「……エルム? やっぱり具合が悪いんじゃないか? 顔が赤いぞ?」
「えっ、あっ……!」

 そんな俺を見てカイルが近寄って来た。いつもは明るい笑顔が印象的だが、急に少し心配そうな真剣な表情をされると余計にドキドキしてしまう。
 確かに俺の身体は火照っていた。だがこれは明らかに何かの間違いだ。だって俺達は男同士なんだから。馬鹿なことを言う訳にもいかず、俺は無理矢理仕事を全うしようとした。
 近くの水入りバケツからピンクのガーベラを1輪取ると、カイルの方に突き出した。

「大丈夫だ。それより、これなんてどうだ?」

 カイルは俺の勧めた花を暫し見て、そしてフッと笑うと、それを受け取って口付けた。こういうキザったらしい仕草も何となく様になってしまうから狡い。

「ありがとう、これを貰うよ。で、だ。どうだい? 今夜、食事でも」
「え? でも帰って来た日はいつもパーティメンバーと飲むんじゃないのか?」
「今日はお前と話したい気分なんだ。良かったらお前の部屋に行きたい。酒や料理は持って行くからさ」

 これには少し驚いた。確かに数回、懐が心許ない時に俺の部屋で飲んだこともある。いつもと違う流れに俺は困惑しつつも、深く考えずに承諾してしまった。

「い、いいよ……」
「OK、決まりだ。仕事が終わった頃にまた来る」

 そう言って満面の笑みを残し、会計をしてからカイルは去って行った。
 この心臓の高鳴りは多分気の所為、自慰のし過ぎの余波だろう。そう自分に言い聞かせながら、俺は閉店の準備に入るのだった。
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