魔女の棲む森

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運命の欠片

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内心訳がわからなすぎて拍子抜けしたものの、至って冷静であるように振る舞う。

「…わたくしがこの森の外に出ることが出来ないのも、そして何故出ることが出来ないのかも、ご存知ですわよね?」

クランがここから出ることができない理由。それは代々の王にのみ"真実"が伝えられているはずだった。
その取り決めが1900年以上もの時が経つ間に変わっていなければの話ではあるが。

「もちろん知っている。知っているからこそこうして会いに来た。」

「知っているからこそ?」

思わず訝しげにジークフリートの言葉を繰り返し、考え込む。

「詳しいことは城でする。とにかく今は来てくれ」

せっかちなのか、慌てているのか、どちらとも取れないが少なくともクランの話を聞く気も、否やの返事をしたところでそれを受け付ける気も鼻から無いということはその態度で伝わってくる。
それに何より、城へ行くということはこの森から出られるということ。
もしかしたら、少しくらい自由に行動させてもらえるかもしれない。そしたら、今の街を見て、そこで暮らす人々を直に見て、千里眼で見たあの食べ物を食べて、いま人気の洋服屋さんに行って、この森には咲いていない花もたくさん扱っている花屋さんに行って……そして最後に、あの人のお墓参りにも行けたらいいなぁ。

寂しくは無いし、そんなに不便なことは無かったけれど、元来人と関わることが好きで好奇心旺盛な彼女は『いつか街を歩けたら』と心の奥底では思っていた。

でもきっと無理だ

そう思って諦めて、自分でも引き上げられないくらい深いところに必死に隠した願いがふつふつと呼び起こされた彼女は、『ジークフリートと共に行こう』

そう決断した。




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