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15.就任
しおりを挟む「招待人のアキラ・タオカ殿とユナ・アサヒナ殿だ」
「田岡 晶です」
「朝比奈 結奈です。よろしくお願いします」
「ゲーリヒ・フットマンであります。第一陸軍の補給部隊隊長です。歓迎致します」
ビッと敬礼してくれたのは、丸メガネに長い髪を一つ結びにした、男の人だった。メガネよりもモノクルが似合いそうな雰囲気で、すごく背が高い。百九十センチはありそうな長身だ。
後ろに居る人たちも木箱から離れ、ゲーリヒさんの後ろに整列してくれている。
あれ? もしかしてライアンさんって割と偉い人かも。と、彼らの対応を見てようやく気付いた。
そうちょうって階級がよくわからないけれど、あの会食にいた人達ってもしかしたら国の中でも上の方の人達なのかも知れない。
「やっぱり顔を覚えといて正解だったかも」
「ん」
私は独り言を言ったつもりだったけれど、ヒナが小さく肯定する。
ヒナはヒナで、会食中に分けられた女性陣の顔と名前を頭に叩き込んだらしい。接客業やってたから得意そうというと、コンビニ店員をちょっとやったくらいじゃ「お客様」で一括りにしちゃうから特徴的だったり意図して覚えないと無理だよと苦笑していた。
「アキラ。今後のことはこのゲーリヒから聞いてくれ。他に困ったことが起きたらいつでも声をかけて欲しい。クリストフ様も君たちのことを案じていたのでな。遠慮はいらない」
「ありがとうございます」
ライアンさんはわざわざ全員の前で言ってくれる。きっといじめ対策とかなんだろうな。
やっぱりこの人を捕まえといて良かった。と、しみじみ思う。
いつかこの国は脱出するつもりだけれど、個人でお世話になった人達には多少恩返し出来たらいいな。
「では、あとを頼む」
「はっ!」
そうしてライアンさんは建物へ入っていった。
ライアンさんの姿が見えなくなってから、ゲーリヒさんは礼を解く。
「では、早速ですが補給部隊の兵士達を紹介します。副隊長のウノ・ルッツバード」
「よろしく」
「一等兵 フリッツ、カイン、イライザ、アン」
それぞれ「はい」と返事をしてこちらを見ている。一等兵の人たちは私たちとあまり歳が変わらない。
「よろしくお願いします」
そう頭を下げる。
仕草が異なるのか、わかりやすく興味深そうな顔をしていた。
敬礼しとけばよかったのだろうか。
「作法については別途座学を設けますのでご安心を。その前に、今朝は新しく届いた備品の運搬をしております。そちらを終わらせるまで見学していてください。では総員、先ほど伝えた持ち場へ」
「はっ!」
指示を出すゲーリヒさん以外が、先ほど囲んでいた木箱に戻る。
茶けた紙と内容をイライザさんとアンさん二人がかりで確認して、フリッツさんとカインさんが倉庫へ順番に運んでいくという流れのようだ。
ウノさんは木箱の空いた場所にまた新しく荷物を運び込んでいる。鉄の棒……バールを使って、封された木箱を開ける役目を担っているらしい。
しばらく黙って眺めていたが、ただ立ってるだけも結構暇だ。補給部隊はゲーリヒさんの班だけではないとの事だけれど、この人数に対して木箱の量が結構多い気がする。
こりゃ昼までに終わらなそうだと気づいて、私はゲーリヒさんに手伝いを提案した。
「ゲーリヒ隊長。どこか、参加させてもらえませんか」
「む」
無表情だけれど、どこか思案するような空気。そりゃそうかと気付いて、慌てて体の前で両手を振った。
「ああ、ご心配でしたら監視していただいても大丈夫ですよ! わた…んんっ俺のスキルが役に立つのではと思ったので」
「……なるほど」
「はい。品名確認、梱包、運搬、開封などです。どうでしょうか。俺もこのスキルを授かって日が経ってないですし、練習させていただけたら嬉しいと思いまして」
もちろん、アイテムボックスに仕舞い込むことはしません。というか、容量的に出来ないかも知れないですし。
そう独り言のように付け加えると、ゲーリヒさんは顎を手に当てながら数秒考えて、私と視線を合わせた。
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