はじめに手に入れたスキル「偽装」で、性別を変えました

キシマニア

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9. 会食会場にて

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 会場は思ったよりも人がまばらだった。

 と、最初は思っていたのだけれど。
 それは間違いで、スルスさんが教えてくれた通り位の低いもの達から先に入場して待っておく慣習らしい。
 とどのつまり、私とヒナをはじめ、既にここに集められている召喚者たちは位が低いものと認知されているということだ。

 元は平民だから、抵抗感は薄い。
 けれど、そちらの都合で拉致しといて雑に扱われるようでは、と色々思うところがあった。
 元の世界に比べて文明が遅れているから、無意識のうちに見下してたんだろう。
 良くないな。と思いちょっと反省した。本当にちょっとだけだから、ゆるして欲しい。

 スルスさんとは違うお仕着せのメイドさんから、従姉妹の結婚式で見たウェルカムドリンクのような感じでゴブレットを受け取る。
 赤ワインかな。にしては家で見たものより色が少し薄くて、若干の沈殿物がある。
 果肉入りのオレンジジュースみたいな感じで不思議だ。

 ちなみにこちらでは私たちくらいの年ではもう飲酒は全く問題ないらしい。農村では大人も子どもも、水分補給と栄養補給をかねてビールを飲むのだそうだ。
 ちゃんとアルコールの入ったものを。
「子供も??」とヒナが驚いていたが、私たちの世界でも昔はお水よりお酒の方が普段飲まれていたというから、恐らく同じような理由なのだろう。

 長方形の広間の中央に、変なお風呂みたいな噴水みたいなものが置いてある。
 バラのような花びらが浮かんでいたけれど、品種交配してないからか高級感というより素朴で可愛い印象を受けた。
 白いクロスがかけられた机にいくつかお椀があったから、ここで食事をするのだろう。
 刺繍の入った布には、大きな箸置きのようなものが置かれている。お皿かと思えば薄いパンだ。
 自分たちの世界の常識との違いに驚き、そしてげんなりした。
 これに順応していくのは、思ったより大変そうだ。

 高い天井にはシャンデリアが下がっている。今立っているのは一階だけれど、二階の天井の高さくらいはありそうだ。

 室内バルコニーと、私たちが通された入り口とは別に扉と降り階段もあった。
 壁には分厚く、重そうな臙脂色のカーテン。それから色んなタペストリーがあるからか、調度品はあまり無い。唯一棚に飾られた絵皿は純粋に綺麗だなと思った。そして、使わないんだな。とも。

 部屋の隅では音楽隊みたいな人たちがいる。楽器も細かいところは違うけれど、私たちの世界のものと似通っているのはなんだか不思議だ。
 空気が揺れて音が響くという原理が一緒だと、そうなってしまうのだろうか。

 そうして辺りを観察していると、名前を呼ばれながら高位の貴族達が螺旋階段から入場しはじめる。私はその様子をじっと見つめた。
 一応顔を覚えておかなくては。

 金髪碧眼がメインの貴族達。七対三くらいの割合で、赤髪や茶髪、黒髪の人達もいた。黒髪でも彫りが深い顔立ちで、真っ黒な瞳は居ない。
 そんなふうに傾向をつかんでいると、ついにファンファーレが鳴る。

 ファンファーレの一番盛り上がるタイミングをはかっているのだようか。全面にこの国の紋章が入ったマントを引き摺るようにして、王様が入ってきた。横には、王様より若い金髪の女性も居る。

 周りの貴族たちがざっと平頭し、召喚された人たちだけが棒立ちになっていた。

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