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0〜1年目 スタート地点から
第6話 それぞれの1年目の終わり
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八月を迎え、ドラフト同期で一軍に残っているのは、ドラフト1位の杉澤投手のみである。
ドラフト3位の竹下選手は不動のトップバッターになることを期待されていたが、プロの壁にぶち当たっていた。
一軍では打率が二割にも届かず、二軍に落ちてからも精彩をかき、打率は二割を僅かに超える程度まで下がってしまった。
ベンチでも苛立ったり、不貞腐れたような態度を取る事が増え、誰も声をかけず、孤立していた。
飯島投手は二軍でも中継ぎとして、防御率4.08とピリッとしない当番が続き、春先に二軍に落ちてから、一軍に上がれていない。
即戦力の期待を受けた三人の中で、杉澤投手は7月末時点で、5勝5敗、防御率3.95と唯一戦力になっていたが、4球団競合の大卒のドラフト1位としては可も無く不可も無い、と言ったところだった。
二軍ではドラフト2位の谷口が気を吐いていた。
打率は.233と高く無いものの、ホームランを7月末時点で、14本打ち、2軍ながらホームラン数はリーグ1位であった。
なおドラフト4位の三田村は高校時代に痛めた右手を手術したため、まだ試合出場は無い。
また、ドラフト5位の原谷捕手は2軍の控え捕手として、25試合に出場して、打率.125でホームラン1本と打撃面での課題を露呈していた。
当たれば飛ぶが、当たらないのだ。
そして僕は…、2軍の控えのバックアップ要員として、20試合に出場に留まっていた。
打率は22打数3安打の.136…。
原谷捕手と違って当たっても飛ばないのだ。
山城コーチとの夜間練習のお陰で守備力は自信がついてきたが、打撃面は課題だらけである。
8月を終え、杉澤投手は7勝6敗と一つ勝ち越していた。
必ずしも期待通りの活躍とは言えないかもしれないが、新人王候補として名前が挙がっていた。
新人王レースの最大のライバルは高卒でのプロ入り三年目の小田外野手で打率.290でホームランも12本放っていた。
後は東京チャリオッツの社会人一年目25才の右腕、木下投手が中継ぎとして40試合で19ホールド、防御率3.40の成績でやはり候補に挙がっていた。
杉澤投手は10勝すれば確実に新人王を取れるだろうと言われていた。。
だが9月に入ってからは中々勝ち星がつかず、9月末時点で、7勝7敗の五分、防御率3.79となっていた。
なお小田外野手は9月末時点で、打率.269、ホームラン13本、木下投手は45試合で21ホールド、防御率4.00とそれぞれ数字を落としており、新人王争いは混沌としていた。
だから杉澤投手は10月頭の最終登板で勝てば新人王の可能性は高まると言われていた。
そして最終登板。
杉澤投手は六回まで無失点に抑えた。
あと一回、七回を投げきれば規定投球回に達する。
チームも3対0と勝っていたこともあり、杉澤投手は続投した。
だが彼にはツキがなかった。
ワンアウトを取ったものの、その次の打者の詰まった、内野手と外野手の間に落ちた。
次の打者の打球は三塁ベースに当たって二塁打となった。
ワンアウト二塁、三塁。
その次の打者は三振に切って取った。
あとワンアウトで規定投球回に達し、新人王にぐっと近づく。
だが次の7番打者にフルカウントから四球を与えてしまった。
次は打率.129の8番打者である。
初球はカットボールでファールを取り、二球目はカーブが良いところに決まり、見逃しでツーストライクを取った。
杉澤投手はタイミングが合ってないと見て、ストレートで三球三振を取りにいった。
だが電光石火。
一二、の三で振り抜いた打球はそのままライトスタンドの最前列に飛び込んだ。
逆転満塁ホームランである。
杉澤投手はがっくりとうなだれた。
だがあとワンナウトで規定投球回に達するのは変わらない。
続投したが、次の打者に死球を与えたところで、降板となった。
7勝8敗、防御率4.08。
規定投球回にわずか1/3イニング不足。
これが杉澤投手の一年目の成績だった。
結局、スカイリーグの新人王は木下投手が獲得した。
所属する東京チャリオッツが優勝したことも、その要因だろう。
こうして僕らの一年目のシーズンが終わった。
僕の二軍成績は、27試合に出場し、24打数4安打。打率.167でエラーが4つ。
攻守で大きな課題を残したが、山城コーチとの夜間練習の成果で、シーズンの後半は一つもエラーをしなかった。
高校時代のチームメートの山崎と平井はシーリーグであり、二軍でも対戦は無かった。
山崎は8月に一軍に上がり、初登板完投勝利を挙げるなど、2勝1敗。来期新人王の資格を残すために、29イニングしか投げなかった。
平井は六月に一軍に上がり、初打席でホームランを放ったが、それ以降は15打数ノーヒットで、結局、打率.063で一年目のシーズンを終えた。
もっとも二軍では打率.275でホームラン9本とレギュラーを獲得していた。
3位以上のチームはクライマックスシリーズや、日本シリーズ等のポストシーズンを迎えるが、今季もぶっちぎりの最下位に低迷した我が、静岡オーシャンズはこの後は秋季キャンプに入る。
秋季キャンプは基本的に若手主体であり、当然僕もメンバーに選ばれた。
もっとも若手でキャンプメンバーに選ばれないと、その年でクビの可能性がある。
良かった。一年でクビにならないで。
だがプロの厳しさを実感するのはこれからであった。
ドラフト3位の竹下選手は不動のトップバッターになることを期待されていたが、プロの壁にぶち当たっていた。
一軍では打率が二割にも届かず、二軍に落ちてからも精彩をかき、打率は二割を僅かに超える程度まで下がってしまった。
ベンチでも苛立ったり、不貞腐れたような態度を取る事が増え、誰も声をかけず、孤立していた。
飯島投手は二軍でも中継ぎとして、防御率4.08とピリッとしない当番が続き、春先に二軍に落ちてから、一軍に上がれていない。
即戦力の期待を受けた三人の中で、杉澤投手は7月末時点で、5勝5敗、防御率3.95と唯一戦力になっていたが、4球団競合の大卒のドラフト1位としては可も無く不可も無い、と言ったところだった。
二軍ではドラフト2位の谷口が気を吐いていた。
打率は.233と高く無いものの、ホームランを7月末時点で、14本打ち、2軍ながらホームラン数はリーグ1位であった。
なおドラフト4位の三田村は高校時代に痛めた右手を手術したため、まだ試合出場は無い。
また、ドラフト5位の原谷捕手は2軍の控え捕手として、25試合に出場して、打率.125でホームラン1本と打撃面での課題を露呈していた。
当たれば飛ぶが、当たらないのだ。
そして僕は…、2軍の控えのバックアップ要員として、20試合に出場に留まっていた。
打率は22打数3安打の.136…。
原谷捕手と違って当たっても飛ばないのだ。
山城コーチとの夜間練習のお陰で守備力は自信がついてきたが、打撃面は課題だらけである。
8月を終え、杉澤投手は7勝6敗と一つ勝ち越していた。
必ずしも期待通りの活躍とは言えないかもしれないが、新人王候補として名前が挙がっていた。
新人王レースの最大のライバルは高卒でのプロ入り三年目の小田外野手で打率.290でホームランも12本放っていた。
後は東京チャリオッツの社会人一年目25才の右腕、木下投手が中継ぎとして40試合で19ホールド、防御率3.40の成績でやはり候補に挙がっていた。
杉澤投手は10勝すれば確実に新人王を取れるだろうと言われていた。。
だが9月に入ってからは中々勝ち星がつかず、9月末時点で、7勝7敗の五分、防御率3.79となっていた。
なお小田外野手は9月末時点で、打率.269、ホームラン13本、木下投手は45試合で21ホールド、防御率4.00とそれぞれ数字を落としており、新人王争いは混沌としていた。
だから杉澤投手は10月頭の最終登板で勝てば新人王の可能性は高まると言われていた。
そして最終登板。
杉澤投手は六回まで無失点に抑えた。
あと一回、七回を投げきれば規定投球回に達する。
チームも3対0と勝っていたこともあり、杉澤投手は続投した。
だが彼にはツキがなかった。
ワンアウトを取ったものの、その次の打者の詰まった、内野手と外野手の間に落ちた。
次の打者の打球は三塁ベースに当たって二塁打となった。
ワンアウト二塁、三塁。
その次の打者は三振に切って取った。
あとワンアウトで規定投球回に達し、新人王にぐっと近づく。
だが次の7番打者にフルカウントから四球を与えてしまった。
次は打率.129の8番打者である。
初球はカットボールでファールを取り、二球目はカーブが良いところに決まり、見逃しでツーストライクを取った。
杉澤投手はタイミングが合ってないと見て、ストレートで三球三振を取りにいった。
だが電光石火。
一二、の三で振り抜いた打球はそのままライトスタンドの最前列に飛び込んだ。
逆転満塁ホームランである。
杉澤投手はがっくりとうなだれた。
だがあとワンナウトで規定投球回に達するのは変わらない。
続投したが、次の打者に死球を与えたところで、降板となった。
7勝8敗、防御率4.08。
規定投球回にわずか1/3イニング不足。
これが杉澤投手の一年目の成績だった。
結局、スカイリーグの新人王は木下投手が獲得した。
所属する東京チャリオッツが優勝したことも、その要因だろう。
こうして僕らの一年目のシーズンが終わった。
僕の二軍成績は、27試合に出場し、24打数4安打。打率.167でエラーが4つ。
攻守で大きな課題を残したが、山城コーチとの夜間練習の成果で、シーズンの後半は一つもエラーをしなかった。
高校時代のチームメートの山崎と平井はシーリーグであり、二軍でも対戦は無かった。
山崎は8月に一軍に上がり、初登板完投勝利を挙げるなど、2勝1敗。来期新人王の資格を残すために、29イニングしか投げなかった。
平井は六月に一軍に上がり、初打席でホームランを放ったが、それ以降は15打数ノーヒットで、結局、打率.063で一年目のシーズンを終えた。
もっとも二軍では打率.275でホームラン9本とレギュラーを獲得していた。
3位以上のチームはクライマックスシリーズや、日本シリーズ等のポストシーズンを迎えるが、今季もぶっちぎりの最下位に低迷した我が、静岡オーシャンズはこの後は秋季キャンプに入る。
秋季キャンプは基本的に若手主体であり、当然僕もメンバーに選ばれた。
もっとも若手でキャンプメンバーに選ばれないと、その年でクビの可能性がある。
良かった。一年でクビにならないで。
だがプロの厳しさを実感するのはこれからであった。
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