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第23話 不穏
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ファンファーレが晴天の空に響き渡り、人生の始まりを祝福するように吉鳥が鳴いている。
「入学生代表、アレクシオス・ヴァルキリオン」
「はい」
代表挨拶なんてあるのか。主席合格者だからなのか、制服の襟に他の生徒とは色違いのバッジが付いている。
壇上に立った背の高い彼は大きく深呼吸してから口を開いた。
「狭き門を突破した親愛なる同志たちよ!」
威勢の良い出だしに皆が目線を上げる。
「ここ岸学園は勇気、知恵、そして誠実さを重んじる伝統を持ち、これまで多くの偉大な騎士たちを排出してきた。我々は、この伝統を受け継ぎ、王国の未来を切り開く新たな希望である。(中略)
共に歩み、共に学び、共に成長しましょう!」
会場は拍手喝采。
一言一句が力強くて魅力的だ。いや、別に男に興味があるわけではないけど、言葉に意味があるというか何というか。
主席の彼が降壇すると、舞台袖からいかにもお嬢様といった感じの娘が出てきた。きっと女性代表だろうな……しかし、どこかで見たような。
「次に騎士学校理事長、インヒター王国第一王女シュリア・リッチ・インヒター様のご挨拶」
しゅ、シュリア王女が理事長?!
「素晴らしい挨拶をありがとう、アレクシオス。今回の新入生は全員がスキル保持者ということで、とても頼もしく思っています」
何でだろう、ずっとこちらを見ながら話してないか……?
「皆様の新たなる冒険に幸あれ。王国の力となるよう期待しております」
彼女はじっとりとした目で僕を見てから舞台袖へと消えて行った。
何が何だかよく分からないが、まんまと王女様の懐に入ってしまったということか。これからの学校生活、大丈夫なのだろうか。
「それでは早速クラス分けに入る。今年度は2クラスであるので主席と次席をそれぞれのクラスの長を担ってもらう」
なるほど、そういうシステムか。
この王国騎士学校では上級生や生徒会といったものは存在しない。有事が起こらない限り一年に一度だけしか生徒を取らず、在学期間も一年だけなので毎年すれ違いになるというわけだ。
「それではAクラス代表はアレクシオス。Bクラス代表はバルト、壇上へ上がってくれ」
次席はバルトっていうのか……いや、まさかな。
「バルト、バルト・クラストはおらぬのか!」
嘘だろオオオオオ?!
フルネームで呼ばれたら僕しかいないじゃないか。よくある苗字ってわけでもないし、誰1人として壇上に行こうとしないし。
「は、はい!」
「さっさと上がってこんか」
「すみません、次席とは知らず……」
「合格の時に言われなかったのか?」
「はい、アラン団長が直々に来てくださったのですがそんなことは一言も――」
「あいつ、団長と知り合いなのか?」
「あの若さで騎士学校へって……まさかコネで次席に?」
「静まれ! それではクラス分けを行うぞ」
拝啓、父さん、母さん、そして学園モノが好きな君たちへ。僕の学校生活は厳しいモノになりそうです。
「よろしくねバルトくん」
「はい、えっと……」
「僕はアレクシオス・ヴァルキリオン。気軽にアレクとでも呼んでくれ。それと、敬語は不要だからね」
「はい……じゃなかった、うん!」
どうやら、主席は良い人のようです。
「おい、お前さ」
クラス分けが終わり、教室に入った途端に早速絡まれました。
「本当に次席なのかよ。団長とはどんな関係だ?」
「たまたま少し話したことがあるだけで、次席というのも信じられませんよ」
僕を囲んだ男衆は関節をポキポキと鳴らしながら威嚇してくる。ヤンキー特有のこのよく分からん行動は異世界でも共通のようだ。
「お前、なに笑って――」
「何をしている。早く席に座れ」
でたあ、異世界イケメン登場だああ。
手には名簿、襟には上級騎士のバッジ。どうやら彼がこのBクラスの担任教師になるようだ。
「入学早々ではあるが、これから私と一対一の模擬戦を行なってもらう」
実に不穏である。
「入学生代表、アレクシオス・ヴァルキリオン」
「はい」
代表挨拶なんてあるのか。主席合格者だからなのか、制服の襟に他の生徒とは色違いのバッジが付いている。
壇上に立った背の高い彼は大きく深呼吸してから口を開いた。
「狭き門を突破した親愛なる同志たちよ!」
威勢の良い出だしに皆が目線を上げる。
「ここ岸学園は勇気、知恵、そして誠実さを重んじる伝統を持ち、これまで多くの偉大な騎士たちを排出してきた。我々は、この伝統を受け継ぎ、王国の未来を切り開く新たな希望である。(中略)
共に歩み、共に学び、共に成長しましょう!」
会場は拍手喝采。
一言一句が力強くて魅力的だ。いや、別に男に興味があるわけではないけど、言葉に意味があるというか何というか。
主席の彼が降壇すると、舞台袖からいかにもお嬢様といった感じの娘が出てきた。きっと女性代表だろうな……しかし、どこかで見たような。
「次に騎士学校理事長、インヒター王国第一王女シュリア・リッチ・インヒター様のご挨拶」
しゅ、シュリア王女が理事長?!
「素晴らしい挨拶をありがとう、アレクシオス。今回の新入生は全員がスキル保持者ということで、とても頼もしく思っています」
何でだろう、ずっとこちらを見ながら話してないか……?
「皆様の新たなる冒険に幸あれ。王国の力となるよう期待しております」
彼女はじっとりとした目で僕を見てから舞台袖へと消えて行った。
何が何だかよく分からないが、まんまと王女様の懐に入ってしまったということか。これからの学校生活、大丈夫なのだろうか。
「それでは早速クラス分けに入る。今年度は2クラスであるので主席と次席をそれぞれのクラスの長を担ってもらう」
なるほど、そういうシステムか。
この王国騎士学校では上級生や生徒会といったものは存在しない。有事が起こらない限り一年に一度だけしか生徒を取らず、在学期間も一年だけなので毎年すれ違いになるというわけだ。
「それではAクラス代表はアレクシオス。Bクラス代表はバルト、壇上へ上がってくれ」
次席はバルトっていうのか……いや、まさかな。
「バルト、バルト・クラストはおらぬのか!」
嘘だろオオオオオ?!
フルネームで呼ばれたら僕しかいないじゃないか。よくある苗字ってわけでもないし、誰1人として壇上に行こうとしないし。
「は、はい!」
「さっさと上がってこんか」
「すみません、次席とは知らず……」
「合格の時に言われなかったのか?」
「はい、アラン団長が直々に来てくださったのですがそんなことは一言も――」
「あいつ、団長と知り合いなのか?」
「あの若さで騎士学校へって……まさかコネで次席に?」
「静まれ! それではクラス分けを行うぞ」
拝啓、父さん、母さん、そして学園モノが好きな君たちへ。僕の学校生活は厳しいモノになりそうです。
「よろしくねバルトくん」
「はい、えっと……」
「僕はアレクシオス・ヴァルキリオン。気軽にアレクとでも呼んでくれ。それと、敬語は不要だからね」
「はい……じゃなかった、うん!」
どうやら、主席は良い人のようです。
「おい、お前さ」
クラス分けが終わり、教室に入った途端に早速絡まれました。
「本当に次席なのかよ。団長とはどんな関係だ?」
「たまたま少し話したことがあるだけで、次席というのも信じられませんよ」
僕を囲んだ男衆は関節をポキポキと鳴らしながら威嚇してくる。ヤンキー特有のこのよく分からん行動は異世界でも共通のようだ。
「お前、なに笑って――」
「何をしている。早く席に座れ」
でたあ、異世界イケメン登場だああ。
手には名簿、襟には上級騎士のバッジ。どうやら彼がこのBクラスの担任教師になるようだ。
「入学早々ではあるが、これから私と一対一の模擬戦を行なってもらう」
実に不穏である。
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