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第6話 非凡
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「これは私のスキル【念話】よ。他の者には聞こえないから安心してそのまま聞いて」
それは聞こえるというより“感じる”という方が正しいかもしれない。
「君、戦闘系のスキルは持ってる? 持っていたらゆっくり頷いて」
僕は傾げるようにして首を斜めに振った。この【普通】が戦闘系スキルなのか生活用スキルなのか、はたまたそのどちらでもないのか分からないのだから仕方がない。
「そう……厳しいわね」
彼女は眉をハの字に曲げ大きく溜息を吐いた。まるで「使えねえな」と言われているようで癪だが、その通りなので申し訳なさが勝ってしまう。
(僕だってきっとやれば出来る子なんだ!)
心の中では強気だが、実際に動こうとすると身体が言うことを聞いてくれない。そんな僕とは違い、隣にいるお嬢様はかなり挑発的な視線を盗賊の男に向け続けている。
「おい、女。さっきからその目はなんだ?」
「あらごめんなさい。生まれつきこういう顔でしてよ」
(やめて! 挑発しないでぇええ!)
心の声を届けようにも僕に念話は使えない。
盗賊は彼女の首を片手で鷲掴みにするとゆっくり持ち上げた。座っていたはずの彼女の身体は宙に浮き、脚をバタつかせながら身悶える。
「やめろ!!」
言ってしまった。
ああ、やってしまったんだ。
無意識のうちに声を張り上げ、男の腕に掴みかかっていた。当然、僕なんかが立ち向かったところで歯が立つはずも――。
「な、なんだテメェ!」
「へ?」
自分のやっていることに驚いた。僕の手は男の腕を捻り上げ、それだけでなく彼女を片手で抱きかかえていたのだ。
「これは、一体……」
「クソガキがぁ!」
反射神経にしては出来過ぎている。殴りかかってくる男に対して、身体の中にある“何か”が働きそれを受け流した。更に男の体勢が崩れ足元が浮いた瞬間、僕の脚は円を描くようにして着地しようとした男の足を払ったのだ。
男は大きな音を立てて小屋の床に倒れた。それを見た他の盗賊らも殴りかかってくるが、僕は御令嬢を抱えたままそれを受け流し続けた。
「て、テメェ一体何者だ!?」
バルトです、なんて言ったら変だしなぁ。
それにこの状況には自分でも驚いている。レベルやステータス、それにスキルも相手の方が圧倒的に有利なはず。かといって武の心得があるわけでも無し、全く理解が追いつかない。
「どうやって縄を……?」
彼女も不思議を通り越して不信感を抱いているようだ。ただ僕は「さ、さぁ」としか言うことができなかった。
「クソが、殺してやるっ!」
外にいた見張りの男たちまでが小屋に押し入り、ナイフや短剣を抜いてこちらを威嚇した。
さすがにこの人数差は厳しいか。しかし、逃げようにも入口は塞がれているし窓も2人で通り抜けるには狭すぎる。
「やっちまえ野郎共!」
奴らが飛びかかってこようと声を上げた時、小屋の外から馬の足音が聞こえた。
「騎士団がこっちに向かって来るぞ!」
「ナニィ?!」
(騎士団……? ウチの町には警備隊しかいないはずだけどな)
「これはまずい……」
「なんで王国近衛騎士団がこんな所にいるんだよぉ!!?」
窓から外を見ると覚えのある旗が風になびき、小屋を包囲していた。
「お父様ったら心配性なんだから」
隣にいるのは御令嬢なんかじゃない。
この国の王女様だったのだ。
それは聞こえるというより“感じる”という方が正しいかもしれない。
「君、戦闘系のスキルは持ってる? 持っていたらゆっくり頷いて」
僕は傾げるようにして首を斜めに振った。この【普通】が戦闘系スキルなのか生活用スキルなのか、はたまたそのどちらでもないのか分からないのだから仕方がない。
「そう……厳しいわね」
彼女は眉をハの字に曲げ大きく溜息を吐いた。まるで「使えねえな」と言われているようで癪だが、その通りなので申し訳なさが勝ってしまう。
(僕だってきっとやれば出来る子なんだ!)
心の中では強気だが、実際に動こうとすると身体が言うことを聞いてくれない。そんな僕とは違い、隣にいるお嬢様はかなり挑発的な視線を盗賊の男に向け続けている。
「おい、女。さっきからその目はなんだ?」
「あらごめんなさい。生まれつきこういう顔でしてよ」
(やめて! 挑発しないでぇええ!)
心の声を届けようにも僕に念話は使えない。
盗賊は彼女の首を片手で鷲掴みにするとゆっくり持ち上げた。座っていたはずの彼女の身体は宙に浮き、脚をバタつかせながら身悶える。
「やめろ!!」
言ってしまった。
ああ、やってしまったんだ。
無意識のうちに声を張り上げ、男の腕に掴みかかっていた。当然、僕なんかが立ち向かったところで歯が立つはずも――。
「な、なんだテメェ!」
「へ?」
自分のやっていることに驚いた。僕の手は男の腕を捻り上げ、それだけでなく彼女を片手で抱きかかえていたのだ。
「これは、一体……」
「クソガキがぁ!」
反射神経にしては出来過ぎている。殴りかかってくる男に対して、身体の中にある“何か”が働きそれを受け流した。更に男の体勢が崩れ足元が浮いた瞬間、僕の脚は円を描くようにして着地しようとした男の足を払ったのだ。
男は大きな音を立てて小屋の床に倒れた。それを見た他の盗賊らも殴りかかってくるが、僕は御令嬢を抱えたままそれを受け流し続けた。
「て、テメェ一体何者だ!?」
バルトです、なんて言ったら変だしなぁ。
それにこの状況には自分でも驚いている。レベルやステータス、それにスキルも相手の方が圧倒的に有利なはず。かといって武の心得があるわけでも無し、全く理解が追いつかない。
「どうやって縄を……?」
彼女も不思議を通り越して不信感を抱いているようだ。ただ僕は「さ、さぁ」としか言うことができなかった。
「クソが、殺してやるっ!」
外にいた見張りの男たちまでが小屋に押し入り、ナイフや短剣を抜いてこちらを威嚇した。
さすがにこの人数差は厳しいか。しかし、逃げようにも入口は塞がれているし窓も2人で通り抜けるには狭すぎる。
「やっちまえ野郎共!」
奴らが飛びかかってこようと声を上げた時、小屋の外から馬の足音が聞こえた。
「騎士団がこっちに向かって来るぞ!」
「ナニィ?!」
(騎士団……? ウチの町には警備隊しかいないはずだけどな)
「これはまずい……」
「なんで王国近衛騎士団がこんな所にいるんだよぉ!!?」
窓から外を見ると覚えのある旗が風になびき、小屋を包囲していた。
「お父様ったら心配性なんだから」
隣にいるのは御令嬢なんかじゃない。
この国の王女様だったのだ。
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