異世界バイリンガル〜青かった海を僕たちは知らない〜

高校生・夏目海翔（なつめ かいと）は、言語に特別な才能を持ちながらも、自分の居場所を見つけられず、日々の生活に虚しさを感じていた。

そんな「本当の自分」を探す旅を夢見る彼の前に、突如として異世界への扉が開かれる。

召喚された先は、数々の言語と文化が交錯する異世界「エルトラド」そこでは、かつて存在した「青い海」が消え去り、その再生を切望する人々の姿があった。

エルトラドでは言葉の壁が立ちはだかり、海翔は自分の無力さを痛感する。しかし、彼には異世界の言語を瞬時に理解する力、「バイリンガル」という特殊なスキルが宿っていた。

この能力を駆使しながら、彼はエルトラドの人々と心を通わせ、消えた青い海の謎を追い求める旅に出る。

旅の中で、彼は各地の異文化や風習に触れ、それぞれの言葉が持つ力や、人々の想いが生み出すつながりに気づいていく。

やがて海翔は、青い海がただの自然現象ではなく、人々の心の象徴であることを知る。それは失われた絆、忘れ去られた記憶、そして未来への希望を意味していた。　

彼の前に立ちはだかるのは、伝説を利用しようとする者、異なる価値観による衝突、そして彼自身の迷いや葛藤だ。

だが、旅の中で出会った仲間たち──古老ガロスや快活な少女リーファ、謎の漂流者アクタ──の支えを得ながら、海翔は一歩ずつ真実に近づいていく。

「言葉はただの道具ではない。誰かを救い、未来を創る力だ」──海翔の言葉が異世界に響き渡るとき、失われた青い海は再びその姿を現すのか。そして彼自身が見つける「青い海」とは何なのか。

言葉を通じて紡がれる心の旅路と、失われた希望を取り戻す物語。
異世界に描かれる、人と人をつなぐ感動のファンタジー。