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第2話 屋敷にて
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「うわあ……」
故郷から馬車で1時間余り。テュールフ領は国の中でも1、2を争う大きさを誇っていた。
「どう? 本物のお屋敷なんて初めてでしょ?」
「はい、故郷では遠くから見ていただけでしたので感動しています」
「でもどうせすぐに慣れるわよ」
カリンの対応は実にドライだった。
僕は彼女に案内され屋敷内を紹介してもらった。紹介と言っても使っている場所だけ。他にも部屋はあるがほとんど倉庫になっているらしい。
「今日はもう休んでいいわ。明日からよろしく」
「はい」
用意された部屋はまるで高級スイートホテルのような作りだった。泊まったことないけど。
夢にまで見た人生初のフカフカベッドで、僕は落ちるように眠りについた。
肌に伝わる生暖かい感覚と、ほのかに香る甘い香り。
「うーん……」
「カ、カリン様……?」
「あら、おはよう」
目をこすりながら僕の方を見上げる姿は、普通の女の子と大差は無い。この瞬間だけは愛おしさすら感じる。
「そろそろ起きますか?」
「ううん、まだ」
あれから何日が経っただろうか。魔女の生活はとにかく暇で、朝は好きな時間に起き好きな朝食を食べる。その後は好きな時間に領地を周り、異常の有無を確認するのみだ。もっと忙しい魔法使いの領主はいるだろうが、テュールフ家では代々こんな感じらしい。
僕はそんな生活に早くも飽きてきていた。
「今日は外食などいかがですか?」
「がいしょく?」
「はい。領地の美味しい店でお食事でも……」
「興味無いわ」
いつもこんな調子でダラダラと一日を過ごす。19歳ならもっと外の世界に興味を持っていいはずなのだが。
「カリン様は趣味など無いのですか?」
「あるわよ」
「なんです?」
「寝ること」
まったく、困った魔女だ。僕は布団からゆっくりと這い出て彼女から逃げた。いつもならカリンが追いかけてくるのだが、今日はなぜか眠ったまま起きようとしない。僕としては好都合だ。キッチンに向かい、朝食の支度をする。
カリンは食にも興味が無いようで、領民から献上されたパンにジャムを塗って食べていた。最初こそ良かったものの、僕にとっては味気なさ過ぎて早々に飽きてしまった。幸いにも領民からの献上品を持て余していたようで、肉や卵、野菜まで多く揃っていた。
今日はパンと目玉焼きとソーセージの組み合わせだ。支度ができたところで寝ている魔女様を呼びに行く。
「カリン様、朝食の準備ができました」
「別に、毎日作らなくて良いんだよ?」
「食べませんか?」
「食べる」
どうやら食に興味がないというより、作るのが面倒臭いのだろう。僕が料理を作るようになってからは、毎食しっかりと食べている。
「うんうん、美味しい」
「良かったです」
もぐもぐと頬張る顔はいつまでも見ていられる。
よく考えれば人間と魔女が同じテーブルで食事をとっているのは、一般的な関係では見ることができない風景だろう。カリンはそれくらい他のものに興味関心がなく、領民に対しても放任主義を徹底している。
「おかわり……ある?」
「無いですけど、食べたいのでしたら焼きますよ」
「ちょうだい」
「はい」
おかわりをねだられたのは初めての経験だ。なかなか本心を見せないカリンだが、時折こういった姿を見せる。これが俗に言うツンデレってやつなのだろうか。
故郷から馬車で1時間余り。テュールフ領は国の中でも1、2を争う大きさを誇っていた。
「どう? 本物のお屋敷なんて初めてでしょ?」
「はい、故郷では遠くから見ていただけでしたので感動しています」
「でもどうせすぐに慣れるわよ」
カリンの対応は実にドライだった。
僕は彼女に案内され屋敷内を紹介してもらった。紹介と言っても使っている場所だけ。他にも部屋はあるがほとんど倉庫になっているらしい。
「今日はもう休んでいいわ。明日からよろしく」
「はい」
用意された部屋はまるで高級スイートホテルのような作りだった。泊まったことないけど。
夢にまで見た人生初のフカフカベッドで、僕は落ちるように眠りについた。
肌に伝わる生暖かい感覚と、ほのかに香る甘い香り。
「うーん……」
「カ、カリン様……?」
「あら、おはよう」
目をこすりながら僕の方を見上げる姿は、普通の女の子と大差は無い。この瞬間だけは愛おしさすら感じる。
「そろそろ起きますか?」
「ううん、まだ」
あれから何日が経っただろうか。魔女の生活はとにかく暇で、朝は好きな時間に起き好きな朝食を食べる。その後は好きな時間に領地を周り、異常の有無を確認するのみだ。もっと忙しい魔法使いの領主はいるだろうが、テュールフ家では代々こんな感じらしい。
僕はそんな生活に早くも飽きてきていた。
「今日は外食などいかがですか?」
「がいしょく?」
「はい。領地の美味しい店でお食事でも……」
「興味無いわ」
いつもこんな調子でダラダラと一日を過ごす。19歳ならもっと外の世界に興味を持っていいはずなのだが。
「カリン様は趣味など無いのですか?」
「あるわよ」
「なんです?」
「寝ること」
まったく、困った魔女だ。僕は布団からゆっくりと這い出て彼女から逃げた。いつもならカリンが追いかけてくるのだが、今日はなぜか眠ったまま起きようとしない。僕としては好都合だ。キッチンに向かい、朝食の支度をする。
カリンは食にも興味が無いようで、領民から献上されたパンにジャムを塗って食べていた。最初こそ良かったものの、僕にとっては味気なさ過ぎて早々に飽きてしまった。幸いにも領民からの献上品を持て余していたようで、肉や卵、野菜まで多く揃っていた。
今日はパンと目玉焼きとソーセージの組み合わせだ。支度ができたところで寝ている魔女様を呼びに行く。
「カリン様、朝食の準備ができました」
「別に、毎日作らなくて良いんだよ?」
「食べませんか?」
「食べる」
どうやら食に興味がないというより、作るのが面倒臭いのだろう。僕が料理を作るようになってからは、毎食しっかりと食べている。
「うんうん、美味しい」
「良かったです」
もぐもぐと頬張る顔はいつまでも見ていられる。
よく考えれば人間と魔女が同じテーブルで食事をとっているのは、一般的な関係では見ることができない風景だろう。カリンはそれくらい他のものに興味関心がなく、領民に対しても放任主義を徹底している。
「おかわり……ある?」
「無いですけど、食べたいのでしたら焼きますよ」
「ちょうだい」
「はい」
おかわりをねだられたのは初めての経験だ。なかなか本心を見せないカリンだが、時折こういった姿を見せる。これが俗に言うツンデレってやつなのだろうか。
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