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第4話 重課金

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 里でのもてなしは大層なモノだった。

 銀竜の連れてきた人族となれば、こういった扱いをされるのも当然のようだ。

「これは?」
「オークバットの羽焼きです」

 見た目は……アレだが、味はなかなかのものだ。
 こうして、次々に出される逸品の数々に舌鼓を打ち、竜の里を満喫した。

「明日は我が娘の案内で里を巡ると良い。今夜はここら
で休め」
「ありがとう銀竜さん」
「礼など不要。久方ぶりの来客に皆はしゃいでおったからな」

 しかし、この人――いや、竜の名前とか無いのかな?さっきも娘としか紹介してもらえなかったけど。

「そりゃまぁ、ドラゴンですからね」
「そういうモンなの?」
「ええ、基本的に人族でもない限りは個体に名は与えられないのですよ。銀竜やその他の特別な存在には稀にありますけど」

 ふぅん、なるほどな。

「お迎えにあがりました。熱海殿、カスミ殿」
「ありがとう、シルバ」
「はっ……今、なんと?」
「君の名前だよ。一晩考えたんだ」
「ひ、一晩我の事を」

 ポウっと赤くなる彼女の頬に、僕は気が付かないフリをした。
 
「ここが我が父、銀竜の生まれ落ちたとされる洞窟です」
「生まれ落ちた、とされる……?」
「はい。我ら里の者は皆、父から生まれました」

 つまり、銀竜は皆の父であり、母?
 ドラゴンとはここまで奥深い生き物だったのか。

「ところで、シルバも里の皆も人の姿をしているの?」

 昨夜から気になってはいたが、宴会で聞きそびれてしまったからな。

「我々は正確にはまだドラゴンではないのです。言わば卵から孵ったばかりの雛といった感じでしょうか」

 実に分かりやすい説明だ。

「じゃあ、シルバは生まれてからそう経ってはいないということ?」
「はい、まだ30年ほどでしょうか」

 ほとんどタメじゃん。

「他のドラゴンからすれば、まだまだ赤子も同然です」

 なるほど、分からん。

 しばらくこんな調子で里を案内してもらった僕とカスミは、今日もこの里で一泊することとなった。

「なぁ、現世への帰還ってさ……」
「やっと帰る気になりましたか!」
「いや、なってないけど。利用制限とか無いよね?」
「前回言った、1日2回までということ意外は制約はありませんよ」

 本当に長い旅をしている感覚だな。それでも、異世界を旅しているという不可思議体験はそうできるものではないし、たっぷりと堪能させてもらおう。

 翌朝、昨日よりも早い時間にシルバが訪れた。血相を変え、今にも倒れそうに息を荒げながら。

「お逃げ下さい!!」
「どうしたの? そんなに慌てて」

 まだ眠たい目を擦り、宿屋から出ると、昨晩の朗らかな雰囲気とは一変した景色が広がっていた。

「人族のハンターが銀竜討伐に来たのです」
「えっ! 銀竜さんは無事なの?!」
「今もハンターたちと交戦中です。もうじきここは火の海になるでしょう。恐らく父も……だから急いで!」

 良いのか、これで。短い時間だったけど、散々お世話になった里のドラゴンたちを置いて逃げ出すなんて。

 この世界で初めて会ったのが銀竜でなかったら、こんな感情にはならなかっただろう。ドラゴンを庇って人間と戦おうなんで、そんなことできるわけもないよな。

 普通なら。

「カスミ、課金しよう」
「正気ですか?」
「ああ、至って平常運転さ」

 カスミはひとつ大きくため息を吐いてから、課金リストを見せてくれた。

「ガチャじゃなくて良かったよ」
「ガチャ、ですか。参考にします」

 リストで使えそうなのは、やはり武器か。スターターパックでは出なかったしな。それにしても、金額がなかなかのものだ。

「じゃあ、氷の魔剣上級と、スキル火炎耐性上級を貰おうか」
「合計80万円になります」

 うわぁ、重いな。
 金額もそうだが、魔剣の重みが凄い。僕に扱えるのか不安になってきたが、ここまできたらやるしかない。
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