上 下
3 / 4

第3話 課金

しおりを挟む
「それでは気を取り直して、レッツゴー!」

 翌日、僕は再び異世界へと足を踏み入れた。
 昨日のドラゴンは――どうやら居ないようだ。流石に1日も経てば飛び去るのは当たり前か。

「熱海さぁああん」

 もしかして、フラグ立てちゃった?

「う、う、う、背後にいいぃ!」

 パニック映画でもなければ、この演出はなかなか見ないぞ。
 後ろを向いたら銀竜がドンッ、ガブッなんて、たぶん僕は主人公だから無いよね?

「よう、小さな人族よ」
「やぁドラゴンさん」

 現世に帰ろうとするカスミを引き留めつつ、前職で培った営業スマイルを銀竜に向ける。

「ほぉ、我の威圧にも耐えるか」

 まぁ、もっと怖い顔の社長とか居たし。

「お主らは魔術師か?」
「いいえ、ただの旅人ですよ」
「ふむ。何処へ向かう旅なのだ?」
「まだ決まってない、よね?」

 高速で首を縦に振るカスミ君。

「そうであったか。ならば、我が竜の里へ来ないか?」
「なん、だとっ!?」
「ううむ、警戒するのは分かる。だが――」
「行きたい!!!」
「「え、マジ?」」

 そりゃ行きたいさ。だって、竜の里だよ?
 え?理由になってないって?

「それならば、我の背中に乗れ。案内してやろう」
「おおっ、まさに“銀の龍の背に乗って”だね!」
「何を言っているのですか熱海さん!?」

 というわけで、旅は道連れ世は情け。僕らは竜の里へ向けて飛び立ったのであった。

「ところでさ、この世界で当選金の使い道ってあるの?」
「ありますよ」

 空の旅も慣れればこんなものだ。最初ははしゃいでいた僕も、すっかり飽きてしまっている。

「この世界の通貨は大まかに金貨、銀貨、銅貨で区別されます。弊社の換金サービスでは、日本円の1万円は金貨10枚へ交換でき、更にステータス課金のサービスもありますよ!」

 ふむ、相場や価値の計算というより、課金アイテムと考えたほうが早いだろうな。

「ステータス課金については?」
「ご説明いたします!」

 基本ステータスとなる腕力、知力などは課金ではアップしません。その代わり、スキルや魔法、更には魔剣や聖剣などは課金アイテムから追加できるのです!

 カスミの説明は無駄に長かったが、簡単に言えばこんな感じか。

 財産は10億円ある。そして、どうやらこれは夢や仮想空間ではなく本物の世界。

 ならば――

「パック購入とかはないの?」
「もちろんありますよ。初心者スターターパックなるものが!」
「それを買おう。いくら?」
「はい! 5万円です!」

 これを安いと思ったそこのあなた、危険ですよ。

「買おう」
「まいどっ!」

【スキル『望遠眼』『炎耐性』『火炎魔法初級』『水魔法初級』を獲得】

「なんだ?!」
「ああ、これはアナウンスさんです」
「アナウンスさん?」
「はい、アナウンスさん」

 とりあえず、それらしくはなったか。

「そろそろ着くぞ」

 そんなこんなしていたら、遂に念願の竜の里へ到着した。
 何処もかしこも、見渡す限り全てがデカい。竜が住んでいるのだから当たり前と思うだろうが、人間規模では考えられないほどデカい。

「ようこそ、我が里へ」

 お出迎えは若い女性。一見しただけでは、ただの人間に見えるが、どうも尻尾が生えているようだ。

「可愛らしい尻尾ですね」
「っ?!」

「おい……」

 ドスの効いた声はもちろんこの方、銀竜さんである。

「我の娘を口説かないでくれるか?」

 いやいやいや、竜界隈の口説き文句とか知らんから。もしかして、「月が綺麗ですね」と同じような感じなのかぁ?!

「分かっているとは思うが、僕には貴方たちの伝統や文化は知らない。だが、気を悪くさせたのなら謝ります」
「ふむ、気を付けろよ」

 見逃してもらえたぁ。

「あと、先ほどの文句はオスにも有効だからな」

 とっても気を付けよう。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

処理中です...