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アリスタ・ヴェルデルト
新しい能力
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アリスタは鍵開けの名手ゼルトを引き連れて、二人でマラストの地下へと潜っていった。アリスタが力づくで鍵を開けても良かったが、潜入捜査の跡を残さない為だった。
鍵を開けているゼルトを見ながら思う。
万が一爆発した時、ゼルトを助けられるだろうか。いや、何としても生き残ってもらわないと。
鍵を開けたゼルトがアリスタを見て頷く。アリスタがノブを握って扉を開ける。だが誰もいない。人の気配が感じられないのだ。
「飲みに行っているのかもしれませんね」銃を構えたゼルトが呟く。
アリスタを先頭に人の気配を感じられない地下へと降りていく。
どこかに爆発物があるかもしれない。
また木製の扉がある。足音を立てずにアリスタは扉に耳を当てる。
「人の気配がしない。ゼルト、鍵を開けてくれ」
銃をホルスターに戻し、再び鍵開けの道具を取り出して鍵穴に差し込む。手慣れたもので、二十秒もかからない。同じ動作を繰り返し、二人は地下二階まですすんだ。
「ここが最奥のようだ。慎重にいこう」
最奥の扉に耳を立て、奥の様子を覗う。一人の男の鼾(いびき)だけが聞こえる。
アリスタの頷きを確認したゼルトは、細い金具を使って鍵を開ける。
「ゼルト、私の後ろに」
頷いたゼルトはアリスタの背後に回った。
体をすぐに硬質化出来る心構えでゆっくりと扉を開けた。扉を開けた途端に爆発する可能性を考えての動きだった。扉の内側を確認する。罠は仕掛けられていないようだった。扉を全開にする。中には太った男が二人分のベッドを並べて寝ていた。ベッドの下も確認する。
「どうやら情報によると、この男がメディーサのようですね」
爆発すると彼を巻き込む。爆発物は無いと見て良いだろう。
アリスタは警戒の度合いを落とす。爆発物も置いてない殺風景な部屋だったからだ。
この男が爆発物を生成しているのだろうか。
「叩き起こして吐かせますか?」
「ああ、そうしよう。少しでもおかしな動きをすると、私は彼を攻撃する。その時は耳を塞いでくれ」
ゼルトは頷いた。そして男に近づく。
「おい、起きろ」
頬を叩くも反応が無い。ゼルトは一回アリスタの顔を見て今度はその男の顔に蹴りを入れた。
「起きろってんだ!」
その蹴りに漸く男は目を覚ました。肘をついて、半身を起こす。
「飯の時間か?」
「何、寝ぼけてやがるんだ」
飯の時間では無かった事を知った途端、その男の身体から眩い光が漏れる。目も光だし、熱気を帯び始める。
こいつは……! こいつ自体が爆発物なんだ!
一瞬で気づいたアリスタはゼルトに指示を飛ばす。
「ゼルト! 私の後ろに!!」
だが街に開けられたクレーターを思い出したアリスタは、ゼルトを庇いきれない事に気づいた。
これは拙い! ゼルトを……、ゼルトを死なせてはいけない!
アリスタは咄嗟に両手を前に出した。それは完全なる拒絶の意志だった。
高温になりつつある目の前の男に対し、ゼルトを守れない。その彼を救うために全力で否定した。
目の前の男、メディーサが強烈な光と共に地を揺るがす衝撃を放った。鮮烈な白い光に包まれる。その衝撃は夕刻の王都に眩い光の柱を出現させ、街の民はそれを見上げる。地下で爆発したため、その建屋が消滅するだけにとどまったが、ぽっかりと地面に穴が開いた。衝撃が治まった後にメディーサは以前とは全く違った筋肉質の体型になり、美しい顔をさらけ出していた。
「腹が減った……」
まだ熱気が残っている中、彼の配下であるランデル率いる十一人もの部下が穴に飛び降りていく。
「やった、まんまと罠に引っかかった!」
口角を上げるランデルはメディーサに走り寄った。まだ爆発の影響で視界は良くない。メディーサの姿が見えた。だがもう二つ、人の影がある。
アリスタが手を前に出し、直径五メートル程の淡く金色に光る盾を出現させていた。その背後にゼルトが無傷で立っている。
「この爆発の中で生きているだと!」
アリスタが全力で願った時、強固な盾を出現させていた。
「あ、相手は丸腰だ、やってしまえ!」
ランデルの掛け声の元、徒党が剣や銃を抜いて、アリスタの元に駆け寄る。
「ゼルト、逃げるんだ!」
金色の盾はまだ出ている状態だった。どう対処すれば良いか頭が回らない。ランデルの部下が銃を撃ってきた。だが、その弾丸は盾に阻まれる。
「いや、私もやれます!」
ゼルトは銃を抜き取り、金色の盾に身を隠しながら銃を放つ。だがゼルトが持っていた銃の精度はあまりよくなかった。流れ弾が二人に当たるも致命傷ではない。ゼルトの持つ銃の弾が切れる。
くそっ、せっかく生き残ったのに!
もう駄目かと思われた時、突然ランデルの徒党が仲間割れを始めた。銃で味方を撃ち、剣で切りつける。
なんだ、何が起こっている……。
瞠目するアリスタ達の前にアバスタスが現れた。
「もう大丈夫ですよ。貴方を傷つけたりさせません」
アバスタスの土煙に隠した黒い霧で連中を支配下に置いていた。
アリスタは漸く余裕が出来、金色の盾は消滅した。
何だったんだ今の盾は……。
メディーサも黒い霧を吸い込み、身動きが取れない状態でいる。突如として空いた穴に街の民が覗き込んでいる。そこに巨人化したランザが飛び降りてきた。メディーサの細く括(くび)れた胴を片手で掴む。
「衆目があります。私たちの顔が知られたら不利になる。退きましょう!」
アリスタはゼルトを抱え、その場から逃げ出した。
鍵を開けているゼルトを見ながら思う。
万が一爆発した時、ゼルトを助けられるだろうか。いや、何としても生き残ってもらわないと。
鍵を開けたゼルトがアリスタを見て頷く。アリスタがノブを握って扉を開ける。だが誰もいない。人の気配が感じられないのだ。
「飲みに行っているのかもしれませんね」銃を構えたゼルトが呟く。
アリスタを先頭に人の気配を感じられない地下へと降りていく。
どこかに爆発物があるかもしれない。
また木製の扉がある。足音を立てずにアリスタは扉に耳を当てる。
「人の気配がしない。ゼルト、鍵を開けてくれ」
銃をホルスターに戻し、再び鍵開けの道具を取り出して鍵穴に差し込む。手慣れたもので、二十秒もかからない。同じ動作を繰り返し、二人は地下二階まですすんだ。
「ここが最奥のようだ。慎重にいこう」
最奥の扉に耳を立て、奥の様子を覗う。一人の男の鼾(いびき)だけが聞こえる。
アリスタの頷きを確認したゼルトは、細い金具を使って鍵を開ける。
「ゼルト、私の後ろに」
頷いたゼルトはアリスタの背後に回った。
体をすぐに硬質化出来る心構えでゆっくりと扉を開けた。扉を開けた途端に爆発する可能性を考えての動きだった。扉の内側を確認する。罠は仕掛けられていないようだった。扉を全開にする。中には太った男が二人分のベッドを並べて寝ていた。ベッドの下も確認する。
「どうやら情報によると、この男がメディーサのようですね」
爆発すると彼を巻き込む。爆発物は無いと見て良いだろう。
アリスタは警戒の度合いを落とす。爆発物も置いてない殺風景な部屋だったからだ。
この男が爆発物を生成しているのだろうか。
「叩き起こして吐かせますか?」
「ああ、そうしよう。少しでもおかしな動きをすると、私は彼を攻撃する。その時は耳を塞いでくれ」
ゼルトは頷いた。そして男に近づく。
「おい、起きろ」
頬を叩くも反応が無い。ゼルトは一回アリスタの顔を見て今度はその男の顔に蹴りを入れた。
「起きろってんだ!」
その蹴りに漸く男は目を覚ました。肘をついて、半身を起こす。
「飯の時間か?」
「何、寝ぼけてやがるんだ」
飯の時間では無かった事を知った途端、その男の身体から眩い光が漏れる。目も光だし、熱気を帯び始める。
こいつは……! こいつ自体が爆発物なんだ!
一瞬で気づいたアリスタはゼルトに指示を飛ばす。
「ゼルト! 私の後ろに!!」
だが街に開けられたクレーターを思い出したアリスタは、ゼルトを庇いきれない事に気づいた。
これは拙い! ゼルトを……、ゼルトを死なせてはいけない!
アリスタは咄嗟に両手を前に出した。それは完全なる拒絶の意志だった。
高温になりつつある目の前の男に対し、ゼルトを守れない。その彼を救うために全力で否定した。
目の前の男、メディーサが強烈な光と共に地を揺るがす衝撃を放った。鮮烈な白い光に包まれる。その衝撃は夕刻の王都に眩い光の柱を出現させ、街の民はそれを見上げる。地下で爆発したため、その建屋が消滅するだけにとどまったが、ぽっかりと地面に穴が開いた。衝撃が治まった後にメディーサは以前とは全く違った筋肉質の体型になり、美しい顔をさらけ出していた。
「腹が減った……」
まだ熱気が残っている中、彼の配下であるランデル率いる十一人もの部下が穴に飛び降りていく。
「やった、まんまと罠に引っかかった!」
口角を上げるランデルはメディーサに走り寄った。まだ爆発の影響で視界は良くない。メディーサの姿が見えた。だがもう二つ、人の影がある。
アリスタが手を前に出し、直径五メートル程の淡く金色に光る盾を出現させていた。その背後にゼルトが無傷で立っている。
「この爆発の中で生きているだと!」
アリスタが全力で願った時、強固な盾を出現させていた。
「あ、相手は丸腰だ、やってしまえ!」
ランデルの掛け声の元、徒党が剣や銃を抜いて、アリスタの元に駆け寄る。
「ゼルト、逃げるんだ!」
金色の盾はまだ出ている状態だった。どう対処すれば良いか頭が回らない。ランデルの部下が銃を撃ってきた。だが、その弾丸は盾に阻まれる。
「いや、私もやれます!」
ゼルトは銃を抜き取り、金色の盾に身を隠しながら銃を放つ。だがゼルトが持っていた銃の精度はあまりよくなかった。流れ弾が二人に当たるも致命傷ではない。ゼルトの持つ銃の弾が切れる。
くそっ、せっかく生き残ったのに!
もう駄目かと思われた時、突然ランデルの徒党が仲間割れを始めた。銃で味方を撃ち、剣で切りつける。
なんだ、何が起こっている……。
瞠目するアリスタ達の前にアバスタスが現れた。
「もう大丈夫ですよ。貴方を傷つけたりさせません」
アバスタスの土煙に隠した黒い霧で連中を支配下に置いていた。
アリスタは漸く余裕が出来、金色の盾は消滅した。
何だったんだ今の盾は……。
メディーサも黒い霧を吸い込み、身動きが取れない状態でいる。突如として空いた穴に街の民が覗き込んでいる。そこに巨人化したランザが飛び降りてきた。メディーサの細く括(くび)れた胴を片手で掴む。
「衆目があります。私たちの顔が知られたら不利になる。退きましょう!」
アリスタはゼルトを抱え、その場から逃げ出した。
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