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出国
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ステラトリスへの仕事を始めて一年。ロッド・リーンネルは今日もルーチンワークをこなしていた。集荷場にトラックを停め、書類を受付に渡し、待機所で缶コーヒーを買って定位置のソファーに座る。
他のドライバーと会話するようにもなっていた。
いつもモニターを見るのも退屈なので、独り立ちして三日後には雑誌を持って待機するようになった。
しばらくは雑誌を見て笑っていたがコーヒーのせいか、段々尿意をもよおしてきた。
待機所に併設されたトイレに行くも個室一つしかなく先客がいる。しばらく待ってはいたが、我慢できなくなったロッドはトイレを出て待機所を飛び出し、構内のトイレを探した。やっと見つけたトイレに駆け込むも男女とは書かれていないことに違和感を覚えた。
女子トイレ?
尿意は限界まで来ていたが、一旦外に出て確認するも、標識など発見できない。
まぁ、いいや。見つかったら謝ろう。
急いでトイレに駆け込み扉を閉める。
慌てていたので指を挟んで持ってきてしまった雑誌を、トイレのタンクの上に置き用をたす。
「はぁ~」
かなり際どかった。
満足して手を洗いトイレから出る時だった。小走りで駆けてきた人物と出会った。
トイレへと駆けるフーリエは、突然出てきた仮面をつけていない男と遭遇した。
「きゃっ!」
思わず驚きの声を上げた。
相手は体格もしっかりしていて、トイレで男に会うという事で、かつてのトラウマがありありと浮かびそうになったが、仮面のスリットから見た光景は信じられないものだった。
集荷場で作業していたアルバイトは、最後にトラックの観音扉を閉める。
「はい、これで今日の仕事は終了です。解散」
アルバイトの何人かは肩をグルグル回しながら疲れをとっていた。
荷物置き場に荷物を取りに戻る。そして現地解散となった。
ただそこに、荷物が一つだけ残されていた。
ロッドは空のトラックを走らせ、来た道を戻る。いつものルーチンワークだった。
いつもは音楽でもかけ、鼻歌まじりの帰り道だったが今日は違う。
国境検問所が近づくにつれ、同じく国境を越えるトラックが増えてくる。その時、クラクションを長めに三回鳴らした。他のトラックが一瞬、ロッドが走らせるトラックを見るが何も異常はなかった。
そしてロッドは空の庫内の冷房スイッチを押した。モーターが回り庫内に冷気が充満する。そして国境検問所に並んでいた三台のトラックの後方につけた。
十分……。計十五分ぐらいか。
やがて十分ほどしてロッドの順番が回ってきた。
「やあ」
もう顔見知りになった国境警備員に手を上げて書類を渡し挨拶をする。
「今日はなぜ冷房を回しているんですか?」
「ちょっと物損で返品が出てね。自腹だよ、ホントまいった」
「そうですか」
まずは助手席を調べられた。そしてトラックの隙間、下。そして観音扉を開き庫内をライトで照らす。庫内は冷房が効いていて、箱が一つ置いてある。
あれが返品か……。
運転席で焦りからか貧乏ゆすりをしていたロッドは、カーナビに映るバックモニターを見ていた。
頼む……!
しばらく警備員は硬直していたが、何事もなかったかのように観音扉を閉めた。
『OK』のサインを警備員はライトを使って出した。
ロッドは一つ短いクラクションを鳴らして、ゆっくりと検問所を後にした。
走り始めて三十秒ほどでロッドは冷房を切る。サイドミラーに映る国境検問所が遠ざかっていく。
ロッドは重たい溜息を一つ着いた。
危ない橋は渡るもんじゃないな。
他のドライバーと会話するようにもなっていた。
いつもモニターを見るのも退屈なので、独り立ちして三日後には雑誌を持って待機するようになった。
しばらくは雑誌を見て笑っていたがコーヒーのせいか、段々尿意をもよおしてきた。
待機所に併設されたトイレに行くも個室一つしかなく先客がいる。しばらく待ってはいたが、我慢できなくなったロッドはトイレを出て待機所を飛び出し、構内のトイレを探した。やっと見つけたトイレに駆け込むも男女とは書かれていないことに違和感を覚えた。
女子トイレ?
尿意は限界まで来ていたが、一旦外に出て確認するも、標識など発見できない。
まぁ、いいや。見つかったら謝ろう。
急いでトイレに駆け込み扉を閉める。
慌てていたので指を挟んで持ってきてしまった雑誌を、トイレのタンクの上に置き用をたす。
「はぁ~」
かなり際どかった。
満足して手を洗いトイレから出る時だった。小走りで駆けてきた人物と出会った。
トイレへと駆けるフーリエは、突然出てきた仮面をつけていない男と遭遇した。
「きゃっ!」
思わず驚きの声を上げた。
相手は体格もしっかりしていて、トイレで男に会うという事で、かつてのトラウマがありありと浮かびそうになったが、仮面のスリットから見た光景は信じられないものだった。
集荷場で作業していたアルバイトは、最後にトラックの観音扉を閉める。
「はい、これで今日の仕事は終了です。解散」
アルバイトの何人かは肩をグルグル回しながら疲れをとっていた。
荷物置き場に荷物を取りに戻る。そして現地解散となった。
ただそこに、荷物が一つだけ残されていた。
ロッドは空のトラックを走らせ、来た道を戻る。いつものルーチンワークだった。
いつもは音楽でもかけ、鼻歌まじりの帰り道だったが今日は違う。
国境検問所が近づくにつれ、同じく国境を越えるトラックが増えてくる。その時、クラクションを長めに三回鳴らした。他のトラックが一瞬、ロッドが走らせるトラックを見るが何も異常はなかった。
そしてロッドは空の庫内の冷房スイッチを押した。モーターが回り庫内に冷気が充満する。そして国境検問所に並んでいた三台のトラックの後方につけた。
十分……。計十五分ぐらいか。
やがて十分ほどしてロッドの順番が回ってきた。
「やあ」
もう顔見知りになった国境警備員に手を上げて書類を渡し挨拶をする。
「今日はなぜ冷房を回しているんですか?」
「ちょっと物損で返品が出てね。自腹だよ、ホントまいった」
「そうですか」
まずは助手席を調べられた。そしてトラックの隙間、下。そして観音扉を開き庫内をライトで照らす。庫内は冷房が効いていて、箱が一つ置いてある。
あれが返品か……。
運転席で焦りからか貧乏ゆすりをしていたロッドは、カーナビに映るバックモニターを見ていた。
頼む……!
しばらく警備員は硬直していたが、何事もなかったかのように観音扉を閉めた。
『OK』のサインを警備員はライトを使って出した。
ロッドは一つ短いクラクションを鳴らして、ゆっくりと検問所を後にした。
走り始めて三十秒ほどでロッドは冷房を切る。サイドミラーに映る国境検問所が遠ざかっていく。
ロッドは重たい溜息を一つ着いた。
危ない橋は渡るもんじゃないな。
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