23 / 34
ドグとロッド
しおりを挟む
「レタスが三十ケース、キャベツが五十ケース、……」
周囲が闇に包まれる中、集荷場のライトの下でリストを読み上げるドグ・トライアの横、ロッド・リーンネルはトラックに輸入品の荷物を積み込んでいた。これからこの荷物は陸続きのステラトリスへと送られる。三時間ほどかけてダブルチェックをしながら荷物は積み終わった。扉を閉め、金属製のバンドでシールをして、それも二人で確認する。
ドグはもうそろそろ引退で、今後は二十代半ばのロッドがそれを引き継ぐため、今は配送助手として働いている。だから今後はロッド一人でこの作業をやることになる。
「よし、時間もあるし一服するか」
「ええ、わかりました」
手の甲で金色の前髪がかかる額の汗を拭い、ロッドは胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。
「ドグさんはもう何年、ステラトリスに輸送しているんでしたっけ?」
「もう三十年になる。あそこは変わったところで、あまり皆がやりたがらない。私にとっては楽な仕事だけどな」
半白で短い髪のドグは、無精ひげを擦る。機嫌がいい時の癖だった。
「へぇ、楽なんですか?」
「普通は送り先で荷物を降ろすところまでやるけど、あそこは職員がやってくれる。だからインボイス等の書類を渡すだけでいい」
「へぇー、変わった国ですね」
「なんでかは俺は分からん」
ステラトリスが建国された経緯などドグにはどうでも良かった。ただ衣住食を家族に提供する分の稼ぎがあれば、それで良かったのだ。
「よし、一時に出発しようか」
「はい」
車通りの全くない国道二十八号線を北上して、二人と生鮮食品を乗せた大型トラックはステラトリスの国境へと辿り着く。ステラトリスに出入りする車は、ほとんどが日用雑貨や医療品、雑貨等の輸送。他は、ほとんど空輸で行われている。異文化の侵入を極端に怖がっているような警戒網だった。
午前四時、国境検問所に並んでいた十五台のトラックの最後尾にドグはトラックをつけた。
「まあ、この量だと三十分ってとこだろ」
「そんなに早いんですか?」
「ほとんど見たことのある車ばかりだからな。ドライバーの顔さえ知っていれば、簡単な検査で終わる。密入国するような人間なんて聞いたことが無い」
「そんな国なんですか……」
周囲が闇に包まれる中、集荷場のライトの下でリストを読み上げるドグ・トライアの横、ロッド・リーンネルはトラックに輸入品の荷物を積み込んでいた。これからこの荷物は陸続きのステラトリスへと送られる。三時間ほどかけてダブルチェックをしながら荷物は積み終わった。扉を閉め、金属製のバンドでシールをして、それも二人で確認する。
ドグはもうそろそろ引退で、今後は二十代半ばのロッドがそれを引き継ぐため、今は配送助手として働いている。だから今後はロッド一人でこの作業をやることになる。
「よし、時間もあるし一服するか」
「ええ、わかりました」
手の甲で金色の前髪がかかる額の汗を拭い、ロッドは胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。
「ドグさんはもう何年、ステラトリスに輸送しているんでしたっけ?」
「もう三十年になる。あそこは変わったところで、あまり皆がやりたがらない。私にとっては楽な仕事だけどな」
半白で短い髪のドグは、無精ひげを擦る。機嫌がいい時の癖だった。
「へぇ、楽なんですか?」
「普通は送り先で荷物を降ろすところまでやるけど、あそこは職員がやってくれる。だからインボイス等の書類を渡すだけでいい」
「へぇー、変わった国ですね」
「なんでかは俺は分からん」
ステラトリスが建国された経緯などドグにはどうでも良かった。ただ衣住食を家族に提供する分の稼ぎがあれば、それで良かったのだ。
「よし、一時に出発しようか」
「はい」
車通りの全くない国道二十八号線を北上して、二人と生鮮食品を乗せた大型トラックはステラトリスの国境へと辿り着く。ステラトリスに出入りする車は、ほとんどが日用雑貨や医療品、雑貨等の輸送。他は、ほとんど空輸で行われている。異文化の侵入を極端に怖がっているような警戒網だった。
午前四時、国境検問所に並んでいた十五台のトラックの最後尾にドグはトラックをつけた。
「まあ、この量だと三十分ってとこだろ」
「そんなに早いんですか?」
「ほとんど見たことのある車ばかりだからな。ドライバーの顔さえ知っていれば、簡単な検査で終わる。密入国するような人間なんて聞いたことが無い」
「そんな国なんですか……」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
回胴式優義記
煙爺
大衆娯楽
パチスロに助けられ 裏切られ 翻弄されて
夢だった店のオープンを2週間後に控えて居た男
神崎 中 は不思議な現象に遭遇する それは…
パチスロを通じて人と出会い 別れ 生きていく 元おっさんの生き様を是非ご覧下さい
要注意
このお話はパチスロ4号機の知識が無いとあまり楽しめない内容となっております ご注意下さい
推奨年齢30歳以上
※こちらの小説は小説家になろう様でも投稿しています
※フィクションです
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる