77 / 114
興奮
しおりを挟む
しばらく北野とエルザの通訳として、北野から投げかけられるこの船の構造的な質問を続けた。分かった事は、この船の動力炉はこことは別の空間に格納してあり、その動力炉の設置された空間には承認がないと入れないとのことだった。そういったいくつかの空間がここのメインコクピットからつながっていて、その空間にトリオン人は生活していたとエルザは語っていた。
結局その日は3時間超の応答を休みなく繰り返し、研究員だが学生の身分の旭は、法定の終業時間が近づいていた。
「もう時間だ。次の質問ぐらいでとりあえず今日の調査は終了にしよう。今日送った質問は全然消化出来ていないが、お楽しみはまだまだ、これからだからな」
腕時計を見ながら満足げに北野は言う。
「じゃあエルザ、ここの4人を計器類も一緒に船外に出してくれ。また明日」
「了解しました。ごきげんよう」
旭との会話に順応してきたのか、エルザはややくだけた口調でそう言い残し、旭たち4人を船外へと転送させた。
「いやぁ、凄い……。なんと言うか……、凄いとしか言いようがないですね」
「昨晩、教授が興奮していた意味が分かります! これは本当……」
2人の研究員が興奮冷めやらぬといった感じで他の研究員とも喋っている。
北野は笑みが滲む顔を摩りながら言ってきた。
「明日からは他の人工空間のリストアップと内部調査が可能かどうか聞いてみてくれ。それにしても、この調査の面白さに比べたらSSBEなど比ではないな!」
そう言って北野は時計を見る。
「おっと、もう22時になる。旭君には残ってエルザとのコンタクトを続けて欲しいが、超過労働が上にばれたら、あとが面倒くさくてな。それに私にも他の仕事があるので、これ以上は無理だ。研究員の1人に車を出してもらうから、それで帰りなさい」
そう旭の帰宅を促した。
「分かりました。明日は授業が終わって、すぐにでも調査開始出来ますからね!」
「うむ、定時日だからな。楽しみだ!」
現場に携わった研究員が運転する車に乗せてもらい、ラグラニアの話で盛り上がりながら旭は自宅に戻った。22時を少し回った頃だ。送ってくれた研究員に礼を言って、その車を見送り、家に入る。玄関でボディースーツから靴を切り離している頃に、ようやく疲れが襲ってきた。でも心地よい疲れだ。
思わず香苗がいる時の癖で、旭は「ただいま」と言って家に上がった。誰もいないはずだった。
「おかえりー」
リビングからエディアの声が聞こえる。
旭は慌ててリビングに向かい、エディアを見るなり言った。
「お前、こんな時間まで何しているんだよ!!」
だらしなくソファに横になってLOTで映画を見ていたエディアは、映画を途中で消した。
「それはこっちのセリフなんだけど」
唇を尖らせながら、立ち上がって近づいてくる。そして旭の胸付近に鼻を近づけ、匂いをかいだ。
「な、なんだよ」
「別にー、何でこんなに遅かったの? ジェリコから聞いたの? アキラに好意を持ってる女の子の名前」
「あっ、そうだ、お前!! 何てことしてくれてたんだ!!」
「そんなの当たり前よ、女子って弱肉強食なんだから。ところでホント、何してたのよ?」
開き直りやがった。
「許可が出たら、ちゃんと説明するから、今日は大人しく帰れ。寮まで送ってやるから」
ずっと仏頂面のエディアを宥めながら、旭はエディアを寮まで送った。ラグラニアの調査の後の高まった気持ちの後に、この気苦労の落差が余計疲れさせた。
『研究員になったから平日は遅くなる』、ぐらいは言っておいたほうが身のためかもしれない。エディアを送った帰り道に冷えた空に浮かぶ星月夜を見ながら、旭は今日の体験にそぐわない溜息をついた。
結局その日は3時間超の応答を休みなく繰り返し、研究員だが学生の身分の旭は、法定の終業時間が近づいていた。
「もう時間だ。次の質問ぐらいでとりあえず今日の調査は終了にしよう。今日送った質問は全然消化出来ていないが、お楽しみはまだまだ、これからだからな」
腕時計を見ながら満足げに北野は言う。
「じゃあエルザ、ここの4人を計器類も一緒に船外に出してくれ。また明日」
「了解しました。ごきげんよう」
旭との会話に順応してきたのか、エルザはややくだけた口調でそう言い残し、旭たち4人を船外へと転送させた。
「いやぁ、凄い……。なんと言うか……、凄いとしか言いようがないですね」
「昨晩、教授が興奮していた意味が分かります! これは本当……」
2人の研究員が興奮冷めやらぬといった感じで他の研究員とも喋っている。
北野は笑みが滲む顔を摩りながら言ってきた。
「明日からは他の人工空間のリストアップと内部調査が可能かどうか聞いてみてくれ。それにしても、この調査の面白さに比べたらSSBEなど比ではないな!」
そう言って北野は時計を見る。
「おっと、もう22時になる。旭君には残ってエルザとのコンタクトを続けて欲しいが、超過労働が上にばれたら、あとが面倒くさくてな。それに私にも他の仕事があるので、これ以上は無理だ。研究員の1人に車を出してもらうから、それで帰りなさい」
そう旭の帰宅を促した。
「分かりました。明日は授業が終わって、すぐにでも調査開始出来ますからね!」
「うむ、定時日だからな。楽しみだ!」
現場に携わった研究員が運転する車に乗せてもらい、ラグラニアの話で盛り上がりながら旭は自宅に戻った。22時を少し回った頃だ。送ってくれた研究員に礼を言って、その車を見送り、家に入る。玄関でボディースーツから靴を切り離している頃に、ようやく疲れが襲ってきた。でも心地よい疲れだ。
思わず香苗がいる時の癖で、旭は「ただいま」と言って家に上がった。誰もいないはずだった。
「おかえりー」
リビングからエディアの声が聞こえる。
旭は慌ててリビングに向かい、エディアを見るなり言った。
「お前、こんな時間まで何しているんだよ!!」
だらしなくソファに横になってLOTで映画を見ていたエディアは、映画を途中で消した。
「それはこっちのセリフなんだけど」
唇を尖らせながら、立ち上がって近づいてくる。そして旭の胸付近に鼻を近づけ、匂いをかいだ。
「な、なんだよ」
「別にー、何でこんなに遅かったの? ジェリコから聞いたの? アキラに好意を持ってる女の子の名前」
「あっ、そうだ、お前!! 何てことしてくれてたんだ!!」
「そんなの当たり前よ、女子って弱肉強食なんだから。ところでホント、何してたのよ?」
開き直りやがった。
「許可が出たら、ちゃんと説明するから、今日は大人しく帰れ。寮まで送ってやるから」
ずっと仏頂面のエディアを宥めながら、旭はエディアを寮まで送った。ラグラニアの調査の後の高まった気持ちの後に、この気苦労の落差が余計疲れさせた。
『研究員になったから平日は遅くなる』、ぐらいは言っておいたほうが身のためかもしれない。エディアを送った帰り道に冷えた空に浮かぶ星月夜を見ながら、旭は今日の体験にそぐわない溜息をついた。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる