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超科学との対話 2日目
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「……あれ? まだ白斑浮いてますね」
「そうなんだ。そのことも聞いてみてくれないか?」
北野の隣に台車に載せた計測機器を持つ、2名の研究員が控えた。研究員としては新人の旭は丁寧にお辞儀をするも、まだ若い2人の研究員は微笑みながら言う。
「そんなに畏まらなくてもいい。今回は君がいないと調査にならないからな」
「君がキーマンなのだから、こちらこそよろしく頼む」
その2人は柔和な笑みを浮かべて旭に手を差し出し、握手してしばらくラグラニアについて会話をしていた。
「18時10分だ」
腕時計を見ながら北野は言う。
「行こうか。超科学の世界へ」
「お帰りなさい」
昨日とは言葉が違う。エルザの機械的な言葉が響く。思っていたよりもずいぶん解析が済んでいる様だ。その言葉に今日初めてラグラニア内に入った研究員2人は、呆然と辺りを見渡していた。
「ただいま、エルザ」
家族に返事するように返した旭は、まずエルザに研究員2人の紹介を済ませ、北野の録画開始の合図の後に、LOTを開いて彼からの質問をエルザに始めた。
「エルザ、質問だ。ラグラニアのエネルギーの残りを%で教えてくれ」
「今現在98・9%の――が充填されています」
動力源の名前が分からない。だがほぼ満タンに近い。
「俺とエルザとの会話と、このラグラニアの待機分、そして4人を2時間に2回の回数でラグラニア内外に出し入れするとなると、今のエネルギーでどのくらいもつ?」
「35年と85日21時間39分になります」
35年強、余裕でもつ。
昨日からずっと白斑が出ていたのは、常に入り口が開いている状態だった。
「教授! 外の、アシンベルのサブスペースゲートが閉じても、エルザとラグラニアは稼動したままです。エネルギー充填速度と充填量、もしくはエネルギー効率が桁外れです! ざっと35年はエルザと対話出来ますよ」
「35年だと!! はは……、ははは!」
北野は録画していることも忘れ、桁外れの充電量に笑い始めていた。
「エルザ、ラグラニアに乗っていたトリオン人は、どこにいった?」
「その後の足取りは不明です」
旭は思わずこの半球形の室内を見渡した。周りを見ると、一緒に乗り込んだ研究員の2人は、早速計測機器でコクピット内の調査を始めている。だがすぐに調査が終わりそうなぐらい狭い。おそらく少人数で飛来してきたのだと考えた。
トリオン人の身長の高さは、この黒いコンソールの高さが物語っている。
理論的に破綻しているワープ航法でも使ったのだろうか。宇宙レベルが地球人よりも遥かに高いことが伺える。
「エルザ、どのようにして彼らはやってきたんだ?」
「質問が――で、全て説明すると5時間42分を超えます。よろしいですか?」
「じゃあ質問を変える。平均航行速度は?」
「ワープ0・83です」
「ワープ0・83!! ……そのスピードを出す方法は?」
「ヘルドされたジラニ36のエネルギーをラープさせ、それを動力源にしています」
ああ……、また分からない単語が果てしなく広がっていく。主語、述語などの位置は分かるのがまだ幸いだ。
ノートと筆記具が欲しいと思ったが、旭は仕方なくLOTを展開して、不明な単語を書き出した。
「旭君、せっついてすまないが、少しだけでも教えてくれないか」
そばに立つ北野が我慢できなくなったのか、旭の肩を叩いてきた。今回も言語解析は旭に任せている。今回は二人の研究員も連れてきているので、旭に掛かりっきりという訳にはいかない。
「あ、はい、すいません。えーっと、まずは……」
自分たちと同じぐらいのサイズのトリオン人が、ワープ航法に近い速度で飛来してきたとだけ伝えた。
少しずつ少しずつ言葉を解きほぐしながら、エルザとの対話を続けていく。そのためエルザとの対話は予想よりも遥かに時間がかかった。
その後分かったことといえば、ラグラニアを製作したのはトラムという名の人物で、ある重要な役職に就いているらしいこと。トラムがアルマニードというものに番号をつけたと旭は解釈した。
「エルザ、アルマニードの意味を教えて欲しい」
この「アルマニード」の意味を探り出すのに30分もの時間がかかった。
隣に立つ北野もそれが何となく伝わったらしく、しばらく耐えるように旭とエルザとの会話を録画していた。
「人工的な空間……、人工空間ですね。間違いないです!」
すでに調査を終えた研究員2人の調査資料を見ながら、北野はその言葉に頷く。
「ああ、間違いない。人工的に創られた空間だ。この調査結果からも分かる。亜空間で四苦八苦している俺たちを余所に、トリオン人とやらは科学力で小さな空間を、リトルユニバースを創り出しているのだ……」
「創られた空間……、リトルユニバース……」
「はっ、ははっ! ニュートリノを100%で返すんだ。この薄い白い壁の向こうは、本当の次元的な壁なんだ!」
ニュートリノは微粒子の1つで、その小ささは地球程度なら、やすやすと貫通する。それを100%返すなど通常の環境ではない。旭と研究員2人は、それを知ってしばらく茫然と立ちすくんでいた。ただ北野は強い探究心でさらに問う。
「旭君、1つ質問だ! この船の動力炉はどこにある」
その質問は、今日メールで送られてきた質問には入ってなかった。それどころか最初から脱線して、ただただ言葉を紐解きながら好奇心の赴くままに質問を続けている。
「そうなんだ。そのことも聞いてみてくれないか?」
北野の隣に台車に載せた計測機器を持つ、2名の研究員が控えた。研究員としては新人の旭は丁寧にお辞儀をするも、まだ若い2人の研究員は微笑みながら言う。
「そんなに畏まらなくてもいい。今回は君がいないと調査にならないからな」
「君がキーマンなのだから、こちらこそよろしく頼む」
その2人は柔和な笑みを浮かべて旭に手を差し出し、握手してしばらくラグラニアについて会話をしていた。
「18時10分だ」
腕時計を見ながら北野は言う。
「行こうか。超科学の世界へ」
「お帰りなさい」
昨日とは言葉が違う。エルザの機械的な言葉が響く。思っていたよりもずいぶん解析が済んでいる様だ。その言葉に今日初めてラグラニア内に入った研究員2人は、呆然と辺りを見渡していた。
「ただいま、エルザ」
家族に返事するように返した旭は、まずエルザに研究員2人の紹介を済ませ、北野の録画開始の合図の後に、LOTを開いて彼からの質問をエルザに始めた。
「エルザ、質問だ。ラグラニアのエネルギーの残りを%で教えてくれ」
「今現在98・9%の――が充填されています」
動力源の名前が分からない。だがほぼ満タンに近い。
「俺とエルザとの会話と、このラグラニアの待機分、そして4人を2時間に2回の回数でラグラニア内外に出し入れするとなると、今のエネルギーでどのくらいもつ?」
「35年と85日21時間39分になります」
35年強、余裕でもつ。
昨日からずっと白斑が出ていたのは、常に入り口が開いている状態だった。
「教授! 外の、アシンベルのサブスペースゲートが閉じても、エルザとラグラニアは稼動したままです。エネルギー充填速度と充填量、もしくはエネルギー効率が桁外れです! ざっと35年はエルザと対話出来ますよ」
「35年だと!! はは……、ははは!」
北野は録画していることも忘れ、桁外れの充電量に笑い始めていた。
「エルザ、ラグラニアに乗っていたトリオン人は、どこにいった?」
「その後の足取りは不明です」
旭は思わずこの半球形の室内を見渡した。周りを見ると、一緒に乗り込んだ研究員の2人は、早速計測機器でコクピット内の調査を始めている。だがすぐに調査が終わりそうなぐらい狭い。おそらく少人数で飛来してきたのだと考えた。
トリオン人の身長の高さは、この黒いコンソールの高さが物語っている。
理論的に破綻しているワープ航法でも使ったのだろうか。宇宙レベルが地球人よりも遥かに高いことが伺える。
「エルザ、どのようにして彼らはやってきたんだ?」
「質問が――で、全て説明すると5時間42分を超えます。よろしいですか?」
「じゃあ質問を変える。平均航行速度は?」
「ワープ0・83です」
「ワープ0・83!! ……そのスピードを出す方法は?」
「ヘルドされたジラニ36のエネルギーをラープさせ、それを動力源にしています」
ああ……、また分からない単語が果てしなく広がっていく。主語、述語などの位置は分かるのがまだ幸いだ。
ノートと筆記具が欲しいと思ったが、旭は仕方なくLOTを展開して、不明な単語を書き出した。
「旭君、せっついてすまないが、少しだけでも教えてくれないか」
そばに立つ北野が我慢できなくなったのか、旭の肩を叩いてきた。今回も言語解析は旭に任せている。今回は二人の研究員も連れてきているので、旭に掛かりっきりという訳にはいかない。
「あ、はい、すいません。えーっと、まずは……」
自分たちと同じぐらいのサイズのトリオン人が、ワープ航法に近い速度で飛来してきたとだけ伝えた。
少しずつ少しずつ言葉を解きほぐしながら、エルザとの対話を続けていく。そのためエルザとの対話は予想よりも遥かに時間がかかった。
その後分かったことといえば、ラグラニアを製作したのはトラムという名の人物で、ある重要な役職に就いているらしいこと。トラムがアルマニードというものに番号をつけたと旭は解釈した。
「エルザ、アルマニードの意味を教えて欲しい」
この「アルマニード」の意味を探り出すのに30分もの時間がかかった。
隣に立つ北野もそれが何となく伝わったらしく、しばらく耐えるように旭とエルザとの会話を録画していた。
「人工的な空間……、人工空間ですね。間違いないです!」
すでに調査を終えた研究員2人の調査資料を見ながら、北野はその言葉に頷く。
「ああ、間違いない。人工的に創られた空間だ。この調査結果からも分かる。亜空間で四苦八苦している俺たちを余所に、トリオン人とやらは科学力で小さな空間を、リトルユニバースを創り出しているのだ……」
「創られた空間……、リトルユニバース……」
「はっ、ははっ! ニュートリノを100%で返すんだ。この薄い白い壁の向こうは、本当の次元的な壁なんだ!」
ニュートリノは微粒子の1つで、その小ささは地球程度なら、やすやすと貫通する。それを100%返すなど通常の環境ではない。旭と研究員2人は、それを知ってしばらく茫然と立ちすくんでいた。ただ北野は強い探究心でさらに問う。
「旭君、1つ質問だ! この船の動力炉はどこにある」
その質問は、今日メールで送られてきた質問には入ってなかった。それどころか最初から脱線して、ただただ言葉を紐解きながら好奇心の赴くままに質問を続けている。
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