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アマニと謎の声
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「生徒に危険なことをさせるわけにはいかんが、どうかね」
北野は笑いながら旭を促す。
「はい。……私が触ってみます」
「まあ、計測値は全て異常なかったから、あの白斑はおそらく君の言っていた映像の照準調整ダイヤルみたいなものだろう」
旭はアマニの前に立った。そして一旦、北野の顔を見て頷き、彼も頷き返す。そしてアマニに浮かんだ白斑に右手の人差し指をあてた。すると足から頭に突き抜ける軽い衝撃が走り、背後で北野の「あっ!」と言う喫驚の声に振り向いた瞬間、旭の目の前が真っ白になった。
眩い光に顔を顰めて、出していた人差し指を引っ込めた。サーチライトを向けられたと思い、「なにを……」と出かかった。だが耳に入った機械的な声に旭の思考は停止した。
「――」
その言葉はLOTを介しても翻訳出来ていない。旭はとっさに「アリス、言語解析モード」と声に出した。『解析を開始します』とLOTから発せられる。ようやく眼が慣れてきた頃、背後に、「うっ!」と聞きなれた声が聞こえてきた。北野が同じく光を厭う表情で傍に現れる。今、自分が立っている場所は直径10mほどの半球形の空間だった。その空間は皓皓と光る白い壁に囲まれ、その中央には胸の高さほどの漆黒の柱が白い床に突き刺さるように立っている。肩幅ほどの幅と奥行で、上部は斜めに切り取られていた。丁度大人が操作するに都合のいい高さだ。その素材はアマニの外観と同じく、艶やかに光沢を跳ね返している。
「大丈夫か……、旭君……」
呻きながら目を瞬かせる北野は、旭の肩に手を置いた。
「ええ、大丈夫です」
「そうか、良かった。君に何かあったら香苗さんから殺されるだけじゃ済まないからな」
自分の心配をしてたのか。
「それにしても、ここは……」
「――」
再び同じ機械的な声が響いた。
ようやく目が慣れてきたといった感じの北野だったが、未だ表情は戸惑いのままだった。
「ここは……、どこなのか分かるかね」
「分かりません。どこかに飛ばされたか、幻でも見ているのか、さっぱりです。ただ……」
中央の黒い筐体らしき物体を見ると、文字が浮かんで点滅していた。北野と旭は近づいてそこに目を落とした。
「何て書いてあるんだ?」
北野はLOTを通してその文字を読もうとした。だが、彼は首を傾げて呟く。
「LOTが翻訳出来ないってことは、……どういうことだ?」
「教授、LOTが反応出来ないってことは……、信じがたいですが……」
北野は旭の顔を怪訝な表情で見る。その内その真意を知ると、呼吸が荒くなってきた。
「はっ……、はっ……、ちょっと、ちょっと待ってくれ……」
北野は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。ようやく理性を取り戻した途端、アマニとこの空間がどうしてもつながらなくて相当混乱しているようだった。北野の様子は、ここがどこだかも、なぜここにいるのかも分からないといった感じだった。しゃがみ込んだままの北野は、バシバシと自分の頬を両手で叩き出した。
「夢じゃない。何なんだこの、常軌を逸した現状は……、これはまるで……、亜空間と似ている。そう亜空間!」
北野は笑いながら旭を促す。
「はい。……私が触ってみます」
「まあ、計測値は全て異常なかったから、あの白斑はおそらく君の言っていた映像の照準調整ダイヤルみたいなものだろう」
旭はアマニの前に立った。そして一旦、北野の顔を見て頷き、彼も頷き返す。そしてアマニに浮かんだ白斑に右手の人差し指をあてた。すると足から頭に突き抜ける軽い衝撃が走り、背後で北野の「あっ!」と言う喫驚の声に振り向いた瞬間、旭の目の前が真っ白になった。
眩い光に顔を顰めて、出していた人差し指を引っ込めた。サーチライトを向けられたと思い、「なにを……」と出かかった。だが耳に入った機械的な声に旭の思考は停止した。
「――」
その言葉はLOTを介しても翻訳出来ていない。旭はとっさに「アリス、言語解析モード」と声に出した。『解析を開始します』とLOTから発せられる。ようやく眼が慣れてきた頃、背後に、「うっ!」と聞きなれた声が聞こえてきた。北野が同じく光を厭う表情で傍に現れる。今、自分が立っている場所は直径10mほどの半球形の空間だった。その空間は皓皓と光る白い壁に囲まれ、その中央には胸の高さほどの漆黒の柱が白い床に突き刺さるように立っている。肩幅ほどの幅と奥行で、上部は斜めに切り取られていた。丁度大人が操作するに都合のいい高さだ。その素材はアマニの外観と同じく、艶やかに光沢を跳ね返している。
「大丈夫か……、旭君……」
呻きながら目を瞬かせる北野は、旭の肩に手を置いた。
「ええ、大丈夫です」
「そうか、良かった。君に何かあったら香苗さんから殺されるだけじゃ済まないからな」
自分の心配をしてたのか。
「それにしても、ここは……」
「――」
再び同じ機械的な声が響いた。
ようやく目が慣れてきたといった感じの北野だったが、未だ表情は戸惑いのままだった。
「ここは……、どこなのか分かるかね」
「分かりません。どこかに飛ばされたか、幻でも見ているのか、さっぱりです。ただ……」
中央の黒い筐体らしき物体を見ると、文字が浮かんで点滅していた。北野と旭は近づいてそこに目を落とした。
「何て書いてあるんだ?」
北野はLOTを通してその文字を読もうとした。だが、彼は首を傾げて呟く。
「LOTが翻訳出来ないってことは、……どういうことだ?」
「教授、LOTが反応出来ないってことは……、信じがたいですが……」
北野は旭の顔を怪訝な表情で見る。その内その真意を知ると、呼吸が荒くなってきた。
「はっ……、はっ……、ちょっと、ちょっと待ってくれ……」
北野は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。ようやく理性を取り戻した途端、アマニとこの空間がどうしてもつながらなくて相当混乱しているようだった。北野の様子は、ここがどこだかも、なぜここにいるのかも分からないといった感じだった。しゃがみ込んだままの北野は、バシバシと自分の頬を両手で叩き出した。
「夢じゃない。何なんだこの、常軌を逸した現状は……、これはまるで……、亜空間と似ている。そう亜空間!」
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