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SSBE
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アシンベルリングから3キロ離れた核融合炉48基が点検を済ませ、試運転を開始したのはアシンベルリング本格稼動1ヶ月前だった。
SSBE開始2週間前に、定期停電の報せがアシンベルより正式に各家庭に通達された。夕方18時から20時までの間、週5回、期間は半年ほどの予定だった。丁度夕食の時間帯だったが、アシンベル研究所職員のほとんどがSSBEに関わっているので、大した問題ではなかった。それにアシンベルは科学者を中心とした居住区なので、住民は当然のようにそれに合わせる。核融合炉の負荷軽減のため、居住区の家屋に設置されている停電用の家庭蓄電器内の電気も使用され、その時間は旧時代なみの最低限の電力しか使えない。一番人手の要するメカニックの整備、点検などを日中に済ませ、アシンベルリングを再稼動させられるのが18時。そして観測結果をもとに科学者が朝まで奔走する。アシンベルにおいては、それが費用対効果が最良となるスケジュールだと山代は判断した。
アシンベルリングの中央に位置する観測棟、山代は強化ガラスの向こうの何もない空間を見つめながら言う。
「これより第1回SSBEを行います。今日は2164年1月27日、現在時刻17時55分。5分後に10分かけて回転数20万rpmまで段階的に上げ、15分後には回転数40万rpmまで上げて固定し観測します。各種計器異常なし。探査ロボットの準備は完了。なお実験終了予定は20時ちょうどを予定。……では実験開始5分前」
18時ちょうど、直径15mの円筒内に浮く直径14mのアシンベルリングは、リニアの原理で左回転に加速し始める。全周14kmのリングが1分間40万回転に達すると、その末端のスピードは光速に近くなる。この宇宙にない特殊素材が、この宇宙の限界速度近くまで回転し、膨大なエネルギーが注ぎ込まれ、それが周囲の時空を引っ張るように巻き込み、アシンベルリングの中央部の時空が負荷に耐え切れず亜空間への扉を開く。
サブスペースゲート。
グロー発光のように、外縁が仄かに発光する3cmほどの穴が、黒紫の世界を覗かせながら研究室内に顕現した。アシンベルリングを稼動させてから15分、強化ガラス越しに山代は、サブスペースゲートをまじまじと見つめている。機密情報であったが、総責任者に就任した彼は以前の開闢実験の模様を映像で見ていた。
何もない空間にポッカリと開く黒紫の穴。
理論的には開くべくして開いた穴だが、いざ目の前にすると山代は我を忘れてしまっていた。本当に、この穴を人類が開けていいものなのかどうかと。
「教授……」
隣に立つ彼の助手が、茫然と言葉を漏らす。その言葉に我を取り戻した山代は、何度も想定し反芻していた次の指示を室内の研究員に告げた。
「制御チームは現状のアシンベルリングのパラメータを報告。既定のレベルまで出力が達しているならば、探索チームは探査ロボットを投入。侵入箇所の座標を前回の資料と照合し、未知の座標ならば新たに絶対座標を打って地図作成を開始するように」
その言葉に、凝然とサブスペースゲートを見ていた研究員も俄に動き出した。
SSBE開始2週間前に、定期停電の報せがアシンベルより正式に各家庭に通達された。夕方18時から20時までの間、週5回、期間は半年ほどの予定だった。丁度夕食の時間帯だったが、アシンベル研究所職員のほとんどがSSBEに関わっているので、大した問題ではなかった。それにアシンベルは科学者を中心とした居住区なので、住民は当然のようにそれに合わせる。核融合炉の負荷軽減のため、居住区の家屋に設置されている停電用の家庭蓄電器内の電気も使用され、その時間は旧時代なみの最低限の電力しか使えない。一番人手の要するメカニックの整備、点検などを日中に済ませ、アシンベルリングを再稼動させられるのが18時。そして観測結果をもとに科学者が朝まで奔走する。アシンベルにおいては、それが費用対効果が最良となるスケジュールだと山代は判断した。
アシンベルリングの中央に位置する観測棟、山代は強化ガラスの向こうの何もない空間を見つめながら言う。
「これより第1回SSBEを行います。今日は2164年1月27日、現在時刻17時55分。5分後に10分かけて回転数20万rpmまで段階的に上げ、15分後には回転数40万rpmまで上げて固定し観測します。各種計器異常なし。探査ロボットの準備は完了。なお実験終了予定は20時ちょうどを予定。……では実験開始5分前」
18時ちょうど、直径15mの円筒内に浮く直径14mのアシンベルリングは、リニアの原理で左回転に加速し始める。全周14kmのリングが1分間40万回転に達すると、その末端のスピードは光速に近くなる。この宇宙にない特殊素材が、この宇宙の限界速度近くまで回転し、膨大なエネルギーが注ぎ込まれ、それが周囲の時空を引っ張るように巻き込み、アシンベルリングの中央部の時空が負荷に耐え切れず亜空間への扉を開く。
サブスペースゲート。
グロー発光のように、外縁が仄かに発光する3cmほどの穴が、黒紫の世界を覗かせながら研究室内に顕現した。アシンベルリングを稼動させてから15分、強化ガラス越しに山代は、サブスペースゲートをまじまじと見つめている。機密情報であったが、総責任者に就任した彼は以前の開闢実験の模様を映像で見ていた。
何もない空間にポッカリと開く黒紫の穴。
理論的には開くべくして開いた穴だが、いざ目の前にすると山代は我を忘れてしまっていた。本当に、この穴を人類が開けていいものなのかどうかと。
「教授……」
隣に立つ彼の助手が、茫然と言葉を漏らす。その言葉に我を取り戻した山代は、何度も想定し反芻していた次の指示を室内の研究員に告げた。
「制御チームは現状のアシンベルリングのパラメータを報告。既定のレベルまで出力が達しているならば、探索チームは探査ロボットを投入。侵入箇所の座標を前回の資料と照合し、未知の座標ならば新たに絶対座標を打って地図作成を開始するように」
その言葉に、凝然とサブスペースゲートを見ていた研究員も俄に動き出した。
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