48 / 114
消された人間
しおりを挟む
「亜空間に飛び込んだのは、ある教授なんだけど。他言出来ないの……、ごめんね」と苦い顔をした香苗は、当時のことを思い出していたようだった。
「いえ、大丈夫です。山代教授に聞いたんですが、その教授の情報って抹消されているんですか?」
「あら、山代君から聞いたの? ……そうなの、アシンベル退出時にLOTを検索されて、消されちゃったの。居残り組は分からないけど、多分アシンベルのデータベースからは綺麗に無くなっているわよ。政府も極秘でやっていたから、開闢実験に携わっていた議員の何人かが事故が起きてすぐに一気に火消しにかかったみたい。国のデータベースにも残ってないんじゃないかしら」
次期SSBEの総責任者山代教授を、山代君呼ばわりか。母さんの役職を聞かないほうがいいかもしれない、と旭は思った。
「当時の総責任者の名前も……、秘密ですよね」
エディアの問いに、香苗が申し訳なさそうにコクンと頷く。
「最後に、もう1つお聞きしたいのですが、その教授に子供がいたとか聞いてますか?」
しばらく答えていいものかどうか悩んでいる素振りだったが、香苗はエディアの目を見て頷いた。
「旭と同じぐらいの小さいお子さんがいたとは聞いていたけど……」
「その子は男の子ですか? それとも女の子ですか!? 国籍は分かりますか!?」
テーブルに両手をついて身を乗り出しながらエディアが聞いてくる。
「エディアちゃん、ごめん。そこまで分からないわ」
身を乗り出した自分に気付き、エディアはサッと居住まいを正した。
「申し訳ありません、……ありがとうございました。色々と答えにくい質問に答えていただき」
2人の話を傍らで聞いていた旭は、エディアは自分の肉親を探すためアシンベル付設アカデミーに入学したのだろう、と思惟した。エディアは以前、旭の家の近くにあるアカデミーの寮に1人で住んでいると言っていた。親がアシンベル関係者の場合、親と一緒に住むことが出来るが、そのほかの生徒には寮が宛がわれる。
最近は旭と一緒にいるせいか、エディアは同じクラスの女の子と上手くいっていないように彼は感じている。
「ううん、いいのよ。私の娘になるかもしれないのだから」
「え? 母さん……、エディアを養子縁組にでもする気?」
香苗は目を輝かせながら呟く。
「何言っているの、旭の嫁さん候補じゃない」
「ちょっと待て!」
「えっ、お、お母様! じゃあ、これからお母様のこと、お、お母さん……って御呼びしてもいいですか!?」
「いいわよ、何ならここに引っ越してきなさい! アシンベルには申請しておくから」
「待てよ! 勝手に話を進めるな!」
エディアは顔を赤らめ、再び身を乗り出してくる。
「ええっ! お母様、いや、お母さん、そんな……。急に1つ屋根の下だなんて」
「それはダメ!」
「旭、別にいいじゃない。未来のお嫁さんなんだから」
「嫁じゃない! それにダメなものはダメ!! エディアが同居するなら、俺は別の寮に引越すから!!」
侃々諤々の討論の末、エディアの同居は阻止したものの、彼女の好きなときに遊びに来ていいという話に決着した。
「いえ、大丈夫です。山代教授に聞いたんですが、その教授の情報って抹消されているんですか?」
「あら、山代君から聞いたの? ……そうなの、アシンベル退出時にLOTを検索されて、消されちゃったの。居残り組は分からないけど、多分アシンベルのデータベースからは綺麗に無くなっているわよ。政府も極秘でやっていたから、開闢実験に携わっていた議員の何人かが事故が起きてすぐに一気に火消しにかかったみたい。国のデータベースにも残ってないんじゃないかしら」
次期SSBEの総責任者山代教授を、山代君呼ばわりか。母さんの役職を聞かないほうがいいかもしれない、と旭は思った。
「当時の総責任者の名前も……、秘密ですよね」
エディアの問いに、香苗が申し訳なさそうにコクンと頷く。
「最後に、もう1つお聞きしたいのですが、その教授に子供がいたとか聞いてますか?」
しばらく答えていいものかどうか悩んでいる素振りだったが、香苗はエディアの目を見て頷いた。
「旭と同じぐらいの小さいお子さんがいたとは聞いていたけど……」
「その子は男の子ですか? それとも女の子ですか!? 国籍は分かりますか!?」
テーブルに両手をついて身を乗り出しながらエディアが聞いてくる。
「エディアちゃん、ごめん。そこまで分からないわ」
身を乗り出した自分に気付き、エディアはサッと居住まいを正した。
「申し訳ありません、……ありがとうございました。色々と答えにくい質問に答えていただき」
2人の話を傍らで聞いていた旭は、エディアは自分の肉親を探すためアシンベル付設アカデミーに入学したのだろう、と思惟した。エディアは以前、旭の家の近くにあるアカデミーの寮に1人で住んでいると言っていた。親がアシンベル関係者の場合、親と一緒に住むことが出来るが、そのほかの生徒には寮が宛がわれる。
最近は旭と一緒にいるせいか、エディアは同じクラスの女の子と上手くいっていないように彼は感じている。
「ううん、いいのよ。私の娘になるかもしれないのだから」
「え? 母さん……、エディアを養子縁組にでもする気?」
香苗は目を輝かせながら呟く。
「何言っているの、旭の嫁さん候補じゃない」
「ちょっと待て!」
「えっ、お、お母様! じゃあ、これからお母様のこと、お、お母さん……って御呼びしてもいいですか!?」
「いいわよ、何ならここに引っ越してきなさい! アシンベルには申請しておくから」
「待てよ! 勝手に話を進めるな!」
エディアは顔を赤らめ、再び身を乗り出してくる。
「ええっ! お母様、いや、お母さん、そんな……。急に1つ屋根の下だなんて」
「それはダメ!」
「旭、別にいいじゃない。未来のお嫁さんなんだから」
「嫁じゃない! それにダメなものはダメ!! エディアが同居するなら、俺は別の寮に引越すから!!」
侃々諤々の討論の末、エディアの同居は阻止したものの、彼女の好きなときに遊びに来ていいという話に決着した。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる