魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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変化

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 すると山代は「じゃあ、私はここで。この話は内緒で頼むな。それと東城君、アフリカの件、楽しみだな」と言い残して左に折れ、背中を向けたまま手を振って研究棟へと消えていった。
「エディア、その亜空間に消えていった人が気になるのか?」
「うん……、ちょっとね」
 アスファルトに落ちる、まだまだ短い自分の影を朧に見つめながら、エディアは呟く。
「母さんに聞いておこうか?」
 地面に目を落としていたエディアは、急に明るくなった顔を上げた。
「じゃあ、今日アキラの家に行ってもいい?」
「えーっ、別に来なくてもいいじゃん!?」
「なに、イヤなの? 私のこと嫌いなの?」
 急にエディアは眉根を寄せ、ボディースーツを摘んだ。
「抓るのは痛いからホントにやめろ! 今度抓ったら、もう何も話さないぞ」
「わ、分かったわよ。……でもアキラの家には行くからね!!」と、エディアは摘んだ指を解いて旭の腕に絡ませてきた。
 ここのところ、旭はずっとエディアに振り回されてばっかりだった。
 だが最近、旭は少しずつエディアに対する自分の感情が、変化してきているのを感じていた。以前の旭なら人目を気にしてエディアの腕を解いていたが、だれかに触れられているということが今は素直に心地よい。だけど……、痛いのでもうちょっと握力を緩めて欲しい、とは思った。

 結局エディアは家に押しかけ、香苗が帰ってくるまでリビングに待機していたが、隙を見ては何度も旭の部屋と廊下を隔てる扉の前で、手動で開かないか扉横のパネルを開けていじっていた。
「はいはい、そんなことしても開きませんから」
 そう言って、旭はエディアの手首を掴んでリビングに戻す。
「やってみないと分からないじゃん!」
「そのセリフ、俺の前で言う言葉か? それよりも壊しそうで怖いよ」
 玄関までエディアを引っ張ってきた。その時、玄関から電子音が聞こえ、直後にエアーコンプレッサーがプシューと小さい音を立てて扉が左右に開いた。
 仕事帰りの香苗が呆然と立っている。旭はエディアの手を引っ張っていたことに気付き、慌てて手を離した。
「お仕事お疲れ様です、お母様」
 突如変貌したエディアが挨拶する。
 香苗は、むふふ……、と含み笑みを溢し、「お邪魔だったかしら」と口の片端を軽く上げながら靴を脱いでいる。
 どうでもいいよ、と旭は小さく嘆息してリビングへエディアを引き摺った。
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